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関西エアロスポーツクラブに新曳航機を導入

2013年02月03日

 私の「グライダー談義」、しばらく格納庫にいましたが、久しぶりで大空に帰ってきた気分で書きました。このコラム(2011年)にありますが、グライダーの愛好者でつくる関西エアロスポーツクラブの話題です。昨年12月に新しいグライダー曳航機「JA2367」を導入しました。そこで、名古屋空港から、私たちの練習場である岡山邑久滑空場への空輸の内容と、最近のアメリカ飛行機事情をお伝えしましょう。

新機体は可愛い頑張り屋

 まずは、新曳航機を紹介します。シャイベ式SF25C ドイツ製で、エンジンは100馬力。2人乗り。エンジンを止めてもグライダーとして飛ぶことができるモーターグライダー(愛着を込めて「モグラ」と言うことが多いです)という飛行機です。写真で見ると、可愛い感じがしますが、グライダーをしっかり上空まで引っ張り揚げることができます。

気象とにらめっこでフライトプラン

 曳航機の空輸は昨年12月23日でした。千葉大利根飛行場から名古屋空港まで来て、そこで私と井上機長が受け取り、岡山邑久滑空場まで約3時間の飛行でした。今回は空港を使用した場合のモーターグライダーの距離飛行方法について説明します。
 20日ごろから気象が冬型配置で北西風が強く、飛行速度が遅い(150km/h)モーターグライダーでは厳しい状況下での飛行が予想されました。いつ空輸を実行するか、連日気象図とにらめっこでした。そして当日、8時30分にJR茨木駅に集合し、大利根飛行場の中澤さんに「大阪は風が弱いので、今日空輸を実施したい」と連絡を入れました。そのまま、名神高速で名古屋空港へ移動し11時ごろ到着。
 モグラは約3時間で来ると予想しました。空港ビル事務所のパソコンで気象図を見た上で、気象台に今後の予報を聞くと、現在日本海側は約40ノット(風速20m)吹いており、徐々に太平洋側も強くなるでしょう、とのこと。まあ何とか飛べると判断し、まずNAVIGATION LOGの作成にかかりました。飛行コースを名古屋空港→大津VOR(263度)→京都→姫路→岡山VOR(264度)と決め、航空図に線を引き距離を測ります。合計で270kmです。北西風を10m/sと考え、対地速度が約100km/hとして飛行時間は2時間40分と計算し、LOGを計画しました。それを基に、フライトプラン(画を参照)を作成し中部空港事務所にFAXで送るのです(TELでも可)。
 セントレア国際空港ができるまでは、この空港は運輸省の所有の第2種空港で、直接フライトプランを受け付けてくれたのですが、現在は県営となり格下げとなっています。

長い滑走路がもったいないほど、すぐに離陸

 そうしているうちに、関東からのモグラが到着。早速燃料をマイナミ空港サービスに電話で注文し、AVGAS100を35L給油。ここまで飛んできた寺田機長と交代し、出発(13時05分)。まずグランド(地上を管理)にコンタクトしタクシーの許可を得て移動開始。さすがにエアーラインが飛んでいた空港だけあって、滑走路は3000m弱もの長さがあります。途中でタワー(管制塔)に周波数を変えて、離陸の許可を得てW2を経由して滑走路に入り、離陸。このモグラは離陸までの滑走距離が短くて、すぐに浮いたので滑走路エンドまではしばらく直線飛行。その後、左旋回し、ヘッディング263度(大津VOR方向)で上昇しながら飛ばしました。
 しばらくするとタワーから“リポート リービング コントロール ゾーン”と指示があり、空港から5マイル(9km)離れたところで報告。無線の周波数を変えてフライトサービスセンター(TOKYO INFORMATION)に合わせました。

伊吹おろしの強風に流される機体

 ここから琵琶湖までのフライトは、悪名高き“伊吹おろし”という季節風がだんだん強くなり、高度3000ft(1000m)、対気速度150km/hで飛んでいても、いつまでも左に伊勢湾が見えていて、かなり左に流されているようでした。右に10度偏流をとりコンパス指示275度で飛ぶ。正面の景色は山の稜線と雲との間がせまく、まっすぐでは雲に入りそうで左に変針。山の低いところを目指しましたが、気流が悪く、機体が揺れて頭を何度か風防にぶつける状況でした。
 このモグラは、VORとトランスポンダがついており、4桁の数字(1200)をあわせることで空港のレーダーに高度まで映る機器(モードC)が搭載されています。最悪、レーダーに引っ張ってもらえるので安心でした。かつガーミン社の車用GPSも持参しているので、常に地図上で現在位置を確認しながら飛びました。
 速度計では150km/hで飛んでいるのに、GPSでの対地速度は100km/h以下を表示していました。いかに向かい風が強いかが分かる状況です。だいたい15m/s以上吹いているようで、燃料が心配になりました。VFR(有視界飛行)では大体30分毎に東京インフォメーションに現在の場所、高度と飛行状況を連絡することになっているので30分毎に無線で“オペレーション ノーマル”との報告をしました。

上空から京都観光、瀬戸内へ

 何とか難所を抜け、琵琶湖上空にはいりました。大津VOR(超短波全方向無線標識施設)上空で、次の岡山VORに周波数を変更(115.9)し、ヘディングを264度(偏流をとり255度)に向けました。山科区を通過し、京都市内を東から西へ五条通りの上空を飛行。京都上空のみ晴れており 久しぶりの御所、二条城、仁和寺などを観光フライト。
 亀岡上空からまたも雲が低くなり、2500ftに高度を下げて姫路に向う。残念ながら高度が低く、有馬温泉は見えたが、瀬戸大橋は見えず快適ではなかった。姫路上空も雨が降っているようで視界が悪く、瀬戸内海に方向を変えました。陸地を左に見ながら海の上を岡山方向へ2000ftで飛行。やがて見慣れた瀬戸内市の塩田をぬけて、14時5分に岡山邑久滑空場に無事着陸しました。携帯電話を使って八尾空港事務所に着陸時間を報告しフライトプランをクローズしました。
 空港ではタワーなどがプランをクローズしてくれますが、邑久などのように滑空場に着陸した場合は必ずクローズの連絡をしないと、フライトプランに記載した着陸時間を30分過ぎると「遭難」との判断が下され、捜索となるので注意が必要なのです。

最近のアメリカの飛行機事情

 さて、ここからは、岡山での話題を披露しましょう。昨年、アメリカのフロリダで飛行機の自家用操縦士になり、愛機パイパーで飛び回っている 吉永女史が岡山に遊びに来ており、グライダー飛行を楽しんでいます。私がカリフォルニアでライセンスを得た時と比べると、飛行方法がかなり変わっているようです。
 まず、興味深いのは上記の空輸方法が日本では普通で、VOR無線局を拾いながら距離飛行するのですが、アメリカではガーミンの高価なGPSの非搭載機の場合、iPADを使っているそうです。GPSレシーバーをBluetooth で繋いで使用し、ナビゲションログの作成や航空地図の表示、全米の空港情報(地図はGoogle map)が表示されます。刻々と変わる地図をみながら飛んでいるそうです。

iPADを使って目的地へ直線飛行

 無線局を結んで飛行した場合、その航跡を地図上で見ると折れ線の飛行航跡になりますが、iPADでは目的地へ直線で飛べるので燃料を節約でき、飛行時間が短縮されます。なぜアメリカでこのように安価な方法で飛べるかというと、全米の飛行場情報(AOPA)、全米の航空地図が電子データ化されているからです。カナダはできていますが、日本では電子データが無く、まだ電子データー化の計画も無いようです。
 アメリカ旅行でいろいろな国際空港で降りた場合に、iPADで空港情報を見て、そして空港付近の地図をGoogle Mapで表し、ホテルなどの情報を得ることができます。地図やカーナビも不要です。さすがアメリカで、航空機の運航に関しては、大変進んでいるようです。

写真① 新曳航機・モグラの「JA2367」の飛行
写真① 新曳航機・モグラの「JA2367」の飛行

写真② 名古屋空港でクルー交代
写真② 名古屋空港でクルー交代

写真③ モグラの操縦席の計器類
写真③ モグラの操縦席の計器類

写真④ 機上で活躍するiPAD 写真⑤ 名古屋から岡山までのフライトプラン
写真④ 機上で活躍するiPAD(左)
写真⑤ 名古屋から岡山までのフライトプラン(右)

写真⑥ 京都観光フライトで見た御室・仁和寺辺り
写真⑥ 京都観光フライトで見た御室・仁和寺辺り」

写真⑦ 同じく、御所と二条城
写真⑦ 同じく、御所と二条城

写真⑧ 吉永女史と愛機パイパーアロー
写真⑧ 吉永女史と愛機パイパーアロー

写真⑨ 大阪駅の御堂筋側の構内通路
写真⑨ 関西エアロではありませんが、今年1月、大阪駅の御堂筋側の構内通路で、
約10柱に立命館大のポスターが貼られていました。
航空部のグライダー「DISCUS」の写真も登場、注目されました