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(1)子どもの体はどう違うのか?

2009年08月26日

京都警察病院
京都警察病院

 私は現在、京都警察病院(京都市北区小山北上総町14。 地下鉄・北大路駅徒歩3分)に勤務しています。警察病院と言っても警察官だけではなく、一般の方にオープン化されていますので、現在では、北区を中心とした地域医療を行っています。整形外科は一般の退行性疾患もたくさん診ています。やはり中高年の腰痛、膝痛が多いですね。スポーツ傷害に関しては、警察官の柔道、剣道、それに、非常に激しい動きが要求される逮捕術によるケガはもちろん、子供から年配者、レクリエーションレベルから全国レベルの競技選手まで、いろいろなスポーツ外傷・障害を診ています。また、柔道や剣道の大会の医療班として、冬季国体の帯同ドクターとして病院外での活動もしています。

京都警察病院
当院の理学療法室 右は岡理学療法士
スキー選手にテーピングをしている

そうした病院での診療や、いろいろなスポーツ選手と接して感じたことがあります。根性論が幅を利かせていた日本のスポーツも、ようやく、科学的なトレーニングの重要性や、合理的な指導論に目を向ける時代になってきたということです。しかし、まだまだ思い込みや、もっといえば誤解されていることが多くあります。スポーツを体験した医師の一人として、「スポーツ傷害について正しい知識をもって、スポーツを楽しんでほしい。より高いレベルを目指す人には、思わぬ怪我で断念することなくトップになってほしい」という願いを込めて、お話をさせていただきます。

子どもの体はどう違うのか?

 この季節、早くも冬の小学生大文字駅伝に向けての練習にも熱が入り、学童野球もまだまだ大会、リーグ戦が続き、指導者の方だけでなく、保護者、家族の皆さんも熱心に応援、車出しなどされていることと思います。私もそういった経験者の一人ですが、昨今の学童スポーツを見ていると、少し過熱ぎみなところがあって「ちょっと待って」と言いたくなることがたまにありました。たとえば学童野球大会で肘にテーピングをして投げているピッチャーがいます。痛いのに投げているのかな?と気になります。試合に負けたあと延々とキャッチボールをさせるチームもありました。キャッチボールは確かに野球の基本ですが、おのずと限度があるはず?です。

小学生の肩 矢印は骨端線
小学生の肩 矢印は骨端線

 私は大文字駅伝の整形外科検診に参加したり、地域の少年野球チームのメディカルチェックなどをしたり、ここ数年学童スポーツにかかわってきました。その印象として意外とケガが多い、それが打撲や捻挫、骨折などの外傷もさることながら、使い過ぎによって起こるスポーツ障害(「使い過ぎ症候群」ともいう)が多い事に気がつきました。練習のし過ぎです。たとえば野球でいえば野球肘、大文字駅伝検診では下肢の障害であるオスグッド病、踵骨骨端症(しょうこつこったんしょう)、膝蓋腱炎(しつがいけんえん)などです。クラブを休むほどではない障害から、1-2週間運動禁止が必要な障害、はては数カ月の投球禁止でも治りにくい野球肘など障害の程度は様々です。

小学生の肘 矢印は骨端線
小学生の肘 矢印は骨端線

 子供は大人に比べて使い過ぎ症候群になりやすいです。なぜでしょうか? 内科的なことは小児科の先生にまかせますが、整形外科的には子供の骨格は成長という状態にあるため、大人とはまったく異なった存在と考えて頂くのが良いと思います。成長期には成長軟骨(骨端線=こったんせん)というのが骨の両端近くにありそこで骨が成長しています。一方、そこは力学的に脆弱であり、使いすぎによる繰り返しの牽引力により損傷を受けやすい場所でもあります。成長が止まるとその骨端線は消失し一体化した丈夫な骨になるのです。

 使い過ぎによりこういった脆弱部分である骨端線が損傷される障害のなかにリトルリーグ肩、リトルリーグ肘などがあります。こういった子供の骨格の特徴を知り、そして小中学生では個人個人の発達段階の差が大きいことも考慮したうえで、練習量や練習内容を考えなければなりません。そこが発育期のスポーツ指導の難しいところだと思っています。次回はより具体的に発育期のスポーツ障害、野球肘についてお話したいと思います。