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(6)膝のじん帯損傷

2010年01月05日

スポーツによる膝のじん帯損傷― 前十字(ぜんじゅうじ)じん帯について

 今回はスポーツで見られる、膝のじん帯損傷のうち、特に手術になるケースが多い前十字じん帯損傷についてお話しします。膝のおもなじん帯は図1のように、膝の外側と内側の側副じん帯、関節の中にある前十字じん帯と後十字じん帯の4本が主要なじん帯です。じん帯とは線維性の強じんな帯で関節がぶれたり、脱臼しないように関節を安定化させるためにあります。そのため、じん帯が傷ついて伸びたり、切れたりすると関節は不安定となり、運動時に関節が抜けそうな感じ、ぐらつくような感じを覚え思いっきりプレーできなくなります。内側側副じん帯などは手術をせずに治る場合が多いですが、今回お話しする前十字じん帯は切れると自然に治ることはありません。

図1 膝のおもな4つのじん帯
図1 膝のおもな4つのじん帯

図2 右膝が内側に入った状態
図2 右膝が内側に入った状態

 前十字じん帯はスポーツで傷め易いじん帯の一つです。スポーツ選手でも知っている人は多く「ゼンジュウジをやった」などと言っています。図2のように膝が内側に入った状態で着地したり、急な方向転換したり、また相手と接触したりして受傷します。このじん帯は切れてしまうと自然に修復されることはなく、切れたからといって縫い合わせることも無理で、手術で新しくじん帯を作ることによって治します。切れていても多くのひとは日常生活を支障無くおくることができます。しかし運動時に膝のぐらつき感、膝くずれなどがでるため(図3)、レベルに関係なくスポーツを続けたい人には手術を勧めています。また膝のぐらつきが長く続くと半月板(はんげつばん)、軟骨(なんこつ)など膝のじん帯以外の部位も傷んでくるため、スポーツをしない人でも年齢を考慮して手術をする場合があります。

図3 前十字じん帯が切れると膝くずれがおこる
図3 前十字じん帯が切れると膝くずれがおこる

 手術は、最近では関節鏡(関節の中を見る内視鏡のこと)を使った手術が大半です。関節鏡なので手術のキズは以前より小さくて済みます。からだの他の部分の腱(けん)を採取してきて新しいじん帯として利用します。正常と出来るだけ同じ位置に新しいじん帯を再建します(図4)。術後のリハビリも重要です。スポーツ復帰を目指して慎重にリハビリを進めていきます(図5)。

図4 関節鏡で見た前十字じん帯
図4 関節鏡で見た前十字じん帯

図5 じん帯再建後のリハビリテーション
図5 じん帯再建後のリハビリテーション
術後のリハビリは非常に大切で、専門的な知識と手技が必要になります。

 スポーツで膝を傷めた場合、今回紹介したじん帯損傷以外にも、打撲、骨折、半月板損傷、軟骨損傷やそれらがあわさっている場合などもあります。いずれもアイシング、圧迫固定などの応急処置をしたあとは整形外科で正確な診断をつけることが重要です。最近ではMRIという画像検査が非常に有用であり、レントゲンでうつらない半月板やじん帯もわかります(図6)。痛みがなかなか引かないひとも早めに整形外科、できたらスポーツ整形外科を受診して正確な診断をつけてもらってください。それが復帰への第一歩です。

図6 膝のMRI画像
図6 膝のMRI画像
矢印のミミズのような黒い帯が切れてたるんでいる前十字じん帯。