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(10)「マラソンの水分補給」

2011年03月08日

マラソンレースでの水分補給について -「水中毒」にも注意を-

 各地でマラソン大会花盛りの昨今です。東京マラソンにつづいて大阪、京都など大都市での大規模な市民マラソンも増えてきています。健康増進の目的でジョギングをはじめ、その延長で市民マラソンに参加するランナーが多くいます。しかし市民ランナーにとってはコンディショニングや体調管理は不慣れなため、レース中のアクシデントの発生も多くなっています。今回はマラソンレースで大切な水分補給について最近の考えかたをお話しします。

図1
京都シティハーフマラソンのゴール直後。(筆者も無事ゴールイン) 2012年からは京都マラソンがはじまる予定。

 東京マラソンのホームページではマラソン中のケガ・病気で救護を受けたランナーついてのデータが公開されています。それによると足の筋肉・関節の痛みや擦り傷などが76%と多く、低体温が14%, そして脱水が6.6%となっています1)。水分摂取の不足でおこる脱水ですが、症状としては吐き気、嘔吐、頭痛、手足のけいれんなどがおこります。水分補給はレースを無事完走するための大切なポイントになっています。

 脱水予防のためには適切な量の水分を摂る必要があります。ただ水を摂ればよいというものでもありません。水ばかりを摂っていると今度は飲みすぎによる「水中毒」になる心配があります。「水中毒」とは血液中のナトリウム濃度が下がってしまう状態(低ナトリウム血症)で、マラソンレースでは給水所での水の飲み過ぎによる場合がほとんどです。症状としてめまいや吐き気、息切れ、手足のむくみがみられ、筋肉のけいれんも起きやすくなります。重症になると、意識障害をおこし、さらに悪化すると昏睡状態になり、死亡するケースも報告されています。しかも「水中毒」の報告は近年急激に増えています2)。ひとつの理由として市民ランナーが脱水にならないようにと毎回給水所でせっせと水分を摂り、結果的に水分過多になってしまうといったことがあげられます。トップランナーには少ないようです。このように水分補給は多過ぎても、少な過ぎても問題がおこります。

 ではどのように水分補給をすればよいのでしょうか。理想的にはカラダの水分喪失量だけ水分を補給すれば良いのですが、発汗量は個人差、その日の気候など変化があり正確な量をだすのは困難です。そうした客観的な数値よりも、最近では「ノドの渇きに応じて」水分を摂る方法が勧められています。人間のからだはある程度の脱水には対応できますが、水分過剰の状態への対応能力はかなり低いようです。水分不足に関しては、体重の2%程度の脱水でも生理的機能やパフォーマンスは損なわれないと言われています。「ノドの渇きに応じて」水分を摂る方法は、過度の脱水(体重の2%を超えるような)を防ぐとともに水分の過剰摂取も防いでいることが証明されています3)4)

 そのほか食塩や適度な糖分を含んだ市販のスポーツドリンクも勧められています。大切なことは日頃のトレーニングでもノドの渇きに気を配り、適量の水分補給ができるよう感覚を身につけておくことです。具体的にはトレーニング前後の体重をチェックします。トレーニング後に体重が増えていれば水を飲みすぎたことになります。次回からは水の量を減らすようにします。水中毒と筋けいれんの関係もいわれています。レースでアクシデントに見舞われず無事完走または目標タイムを達成するためにも、水分補給を日頃のトレーニングのチェックポイントに加えていただきたいと思います。

参考資料