京都新聞社TOP

(13)「肉ばなれ」はクセになる?

2013年10月4日

 肉ばなれとは「運動中におこる急激な筋肉の痛み」の1つです。ランニングの着地時や強いキック動作時などにおこりやすく、好発部位は太もも前面の大腿四頭筋(だいたいしとうきん)や太もも後面のハムストリングスなどで(図1)、ふくらはぎや太ももの内転筋(ないてんきん)などにも起こります。

図1 肉ばなれを起こしやすい大腿四頭筋(太もも前面)とハムストリングス(太もも後面)

 医学的には筋の過伸展損傷といって、筋肉が伸ばされて受傷するケガで、「筋肉がつる」とか直接何かが当たる「筋肉の打撲」とは違うメカニズムで発生します。とくに筋肉の遠心性収縮(えんしんせいしゅうしゅく)といって筋肉が強く収縮(力が発生)しながらも伸展を余儀なくされる状態のときに肉ばなれは発生しやすいです。また筋肉疲労にともなう筋の柔軟性の低下も大きく影響しています。

 肉ばなれを起こした時には、突然の激しい痛み、脱力感、またはプチっと音がしたなどのエピソードがあり、診断は比較的容易です(図2は肉ばなれのMRI画像)。現場での治療は他のケガと同様、RICE (rest 安静、icing冷却、compression圧迫、elevation挙上)を行います。RICE処置は損傷部の出血を抑え、その後に起こる腫れを抑えるのに有効です。

図2a 肉ばなれのMRI画像   図2b 図2aの断面

 治療期間は程度によりさまざまです。1~2週でスポーツ復帰できるものから1~3カ月かかる場合、さらには手術が必要な場合まであります。筋肉をストレッチしても痛みが生じなくなれば本格的なリハビリを始めます。リハビリは筋力訓練、ストレッチングを中心に進めていきます。回復段階にあわせたリハビリを行い、スポーツ復帰の目安は痛みの消失と筋力や敏捷性の回復具合をみて判断します。

 肉ばなれはクセになるというのを聞く時がありますが、実際のところは、十分に治っていないのに早期に復帰し再受傷するケース、治癒はしたが筋の柔軟性の改善を怠り損傷時と同じ動作を再度行ったため再受傷するケースなどがあると思います。大事なのは復帰時期を適切に判断することと、再発予防のための筋肉の柔軟性の獲得です。再発予防のためのストレッチはウオーミングアップだけでなくクーリングダウンでも行います。太ももの肉ばなれは股関節の動きが大きく関与しているので、股関節周囲の柔軟性や動きも意識することが大切です。

 肉ばなれは時間経過とともに治るケースが多く軽視されがちですが、きちんと治療しなければ再発の可能性があり選手にとっては重大なケガになりうることを理解してください。