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あんなきれいなゴールは二度とない(連載第136号)

2011年02月01日

 アジアカップ決勝の日本―オーストラリア戦に酔いしれた日本国民も多かったろう。私もしびれた一人だった。この大会は最初から随分としびれぱっなしだ。冒頭の言葉は、あのボレーシュートを決めた李選手の言葉だとされている。ほんとうに綺麗なゴールだった。普通、ボレーシュートの練習は代表合宿ではしない。若いときに遊び半分でボレーやオーバーヘッドキックの練習はする。しかし、実践ではめったに出来る場面に遭遇しないし、シュートの確率もかなり低くなってしまう。もし練習で実施したら20本に一回あるかないのゴールだろう。

 ボレーキックの基本は、立ち足がゴール方面に向いていて、体を斜めに傾き蹴り足をバランスよく振りぬくことだ。ただし、ボールの高さによって微妙に体の傾きを調整する必要がある。今回の長友のクロスは実に絶妙の高さに来た。この場面を振り返ってみよう。確か延長後半の4分前後だった。攻撃に出た遠藤のボールは左のハーフサイドの長友に出す。私は長友の縦への突破を叫んだが、長友はボールを切り返して中へ向きを変えた。しかし、中は窮屈だったために今度は後ろの遠藤に戻す。遠藤は体制を立て直すために最後列の今野まで戻すことになった。 ここで本来。今野は反対の右へサイドチェンジして展開を図る必要がある。そしてまた、右サイドの内田も大きく両手を広げてアピールしている。しかしながら今野は、またもや向きを変えて同サイドの遠藤にパスをすることになった。そして遠藤は早めに長友へパスをする。今度こそ長友は縦へと勝負をし、相手DFを振り切るや否やセンタリングをあげることになる。このボールが絶妙な高さになって、フリーの李に向かっていった。そして、体を半身に傾斜して左足をムチのようにしならせてインステップのボレーシュートが炸裂することになる。

 偶然と必然が重なって生んだ今年度一番美しいゴールを生む結果となった。美しいから何度見ても飽きない。文句の無いゴールだった。その証拠にシュート後の李は、グランドに両足で立っていた。(普通体勢が傾くシュートの後はピッチに倒れている) されに、フラミンゴのような細いしなやかな立ち足が印象的だった。

 ゲームは1-0で日本の勝利だった。試合開始からのレフェリーの采配も見事だった。これまでのゲームで見られた不要な笛はなく、ラフプレーのない、ロスタイムの少ない美しいゲームだった。ザッケローニ監督の采配が評価されている。タイムアップ後に監督に抱きつく選手の多さがこのチームの評価を物語っていた。

 私なら、今野に代えて岩政を、藤本に代えて興梠を出したかもしれない。しかしながら実際は、今野を左サイドバックにして左サイドの長友を上げている。そして、あの場面につながった。今野の意見があったらしいが、これら一連の起用はチームとしての熟成度を示している。今回のアジアカップの最終ゲームのフィナーレにふさわしいゴールで終わった。これからも言い継がれていくビューティフルゴールとして。

 最後に日本代表は先のアジア大会で男女とも頂点に立った。若い21歳以下の代表でも一際輝いた。そしてフル代表でも頂点に登る。二年後のコンフェデ大会の出場権を獲得した。意味ある優勝だった。3年後のブラジル大会で遠藤はプレーできるだろうか、松井や長谷部も円熟期を迎える。長友、李、香川、岡崎の成長株に、21歳以下の若い選手が絡んで日本代表の走るパスサッカーが進化していく、前途悠々の日本サッカーだ。私はひとときの余韻に浸っていたい。