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ユーロ閉幕 EU経済弱体国どうしの決勝戦・スペインが史上初の連覇(連載第157号)

2012年07月02日

イタリア ベネチアの海上都市(世界遺産)
イタリア ベネチアの海上都市(世界遺産)

スペイン トレドの街並み(世界遺産)
スペイン トレドの街並み(世界遺産)

スペイン対イタリアの決勝戦

 一ヶ月に渡っての熱戦が終わった。予想どおりなのか想定外の結果なのか、決勝はEUの二大経済危機国イタリア対スペインとなった。EUの経済大国ドイツもフランスあっさり負けてしまった。あれほど強かったドイツもイタリアの前に対イタリア公式戦連続無勝記録を更新してしまった。EU圏内は、残念ながら結束には程遠い経済格差がある。しかしながらサッカーは経済価値観で得られない楽しみを与えてくれる。それゆえ民族のアイデンティティーを高揚し国の威信をかける戦いとなる。欧州という共通の風土ゆえに、なおさら燃え上がる。オレたちのサッカーは強い、俺たちは強い。とアピールする。

 決戦は、予想どおりスペインとイタリアとなった。結果は想定以上のスペインの大勝(4-0)となった。スペインのサッカーを単なる美しいパスサッカーと表現するだけでは収まらない状況になった。まるで生き物が本能に従って集合と離散を繰り返す、システムやポジションなんて無意味な動きをしている。守備と攻撃の切り替えが機敏だ。開始15分には、両者の立場が鮮明になった。パスサッカーで組み立てているスペインと引いて守備をとり速攻ねらいのイタリアだった。

 しかしスペインの執拗な足元へのパスサッカーがイタリアの守備を崩す。最後は、タイムアップを誰もが待ちわびた状態だ。誰のために・・・。もちろんイタリアのために・・・。4失点は悪夢だった。その前段、ケガで2人を交替する。3人目の交替枠を使い切った時点でのケガだった。弱者が一人少ない戦いだ。かつて見たことが無い展開とパスサッカーのすごさに酔いしれている。

グループリーグの最大の誤算は

 それは、オランダの敗退だろう。私はオランダが四強に残ると思っていたが最下位だった。また、開催国がグループリーグ敗退になったことも残念である。かつての強国ポーランドは今や、弱国になった。サッカー協会ラトー会長も遺憾に思っていることだろう。(W杯西ドイツ大会3位決定戦でブラジルを破り三位。唯一の得点はラトー氏)

 もうひとつの開催国ウクライナの敗退は、あの疑惑のゴールが無ければわからない。それでも国民の前に勇気を与えるサッカーだった。共催国ポーランドとウクライナ間にも経済格差が広がっている。ポーランドが遥かにリードしている。後日談では、2002年W杯日韓大会で名レフリーだったコリーナ氏(UEFA審判部長)が誤審を認めた。メディアの言う50センチではなく数センチの誤審だったという。第5の審判制度に変更はないとも言った。彼の発言は、まさにあの第18条(競技ルールブック全17条に載らないかりそめの文言) 「常識な判断」なのだ。

 ドイツも弱くなった。負けていても引っくり返すゲルマン魂は消えてしまった。かつての栄光は見られない。イタリアは、強いチームに対しては、したたかなプレーをする。逆に弱いチームに対しては同調してつまらない失点をしてしまう。この大会で堅守一本からパスサッカーで攻撃的に生まれ変わった。かつてないスタイルのストライカー・黒人のバロテッリは、プレミアを制覇したマンチェスターシティーの選手だ。

 私の一押しはイタリアのピルロだ。全てにおいて脱帽してしまった。運動量が多く、状況判断が的確で、技術も上だ。彼はいつも半身に構えてプレーをする。前にも、後にもドリブルできるし、パスがだせる。前も後も見えている。半身の精神だ。攻撃的とは言ったが4バックを引いての堅守が基本にあって伝統的なサッカーが垣間見えたプレースタイルだ。しかしそれもスペインには不完全だった。

 スペインは現在のヨーロッパサッカーの頂点を行っている。世界一美しいパスサッカーは健在だ。その中心がイニエスタであり、シャビやシルバである。シルバもまたプレミア制覇のマンチェスターシティーに所属している。ゴールまでパスサッカーを貫いてみるみる間に足元にパスを通す。その優雅さは、スバ抜けていて私たちにサッカーの面白さを見せてくれる。確かに今の流行のサッカーそのものだ。いろんな国やチームがスペインを師匠にしたパスサッカーを学んでいる。個人技のブラジルにグループ技のスペインだ。

当分はスペインの優位は続くと確信した

 世界はこれからスペイン、イタリアを核にブラジル、アルゼンチン、ウルグアイを含めた争いに続いていく。来年はブラジルでコンフェデレーションズカップ(各大陸の勝者の大会)が開催される。日本もアジアの雄として出場できる。二年後のW杯ブラジル大会に向かっての予行演習を兼ねた大会でもあってユーロの後はW杯へ向かって一直線になる。

 その前に忘れてはならないのがオリンピックだ。日本の初戦がスペインだから気が重い。