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欧州移籍の真実(連載167号)

2012年09月24日

※今回はテーマとは違う画像です。世界で美しい建築物は何千とあるけれど、私が思う世界一美しい建築物は、なんと言ってもインドのタージマハールだ。
※今回はテーマとは違う画像です。世界で美しい建築物は何千とあるけれど、
私が思う世界一美しい建築物は、なんと言ってもインドのタージマハールだ。

移籍金ゼロの驚き

 ここ最近は、欧州特にドイツブンデスリーガへ移籍するJリーガーが驚くほど多い。覚えているだけで、以下のとおりだ。

 ヴォルブスブルグの長谷部、ケルンの槙野、フライブルグの矢野、シャルケの内田、ドルトムントの香川、シュツットガルトの岡崎、レバークーゼンの細貝、ホッヘンハイムの宇佐美、ニュールンベルグの清武、フランクフルトの乾、シュツットガルトの酒井などだ。そして、彼らは皆なトップクラスの実力の選手で、要するに日本代表クラスということだ。

 それならば、ドイツからのオファーは当たり前かもしれないが、実のところはほとんどが移籍金ゼロという真実を知った。そこには、日本のサッカービジネスの未熟さを確信することになる。日本のクラブは、彼らを育成し、試合で使い一流になるまで投資した。にもかかわらず、移籍金が入らない状況下でドイツへ見送っている。

 ここには、幾つかの現実が重なって現在の状況に至っている。しばらくはこの状態が続くと思う。勉強してみた。第一に、Jクラブと日本の選手の契約更新は契約期限切れ直前に行われる。そのタイミングで海外移籍話がくれば迷ってしまう。期限切れの選手には移籍金は発生しない。選手の自由で移籍可能だし、ドイツから呼ばれたら契約金が低くても欧州へチャレンジしてみたくなるものだ。

 第二に、Jクラブは、育てた選手を欧州へ武者修行に送り出す気概を持っている。第三に、日本人はみんなプロ意識が強く、律儀で実直でチームに異を唱えない。そして、そんなことを把握しているドイツ人の代理人が存在し橋渡し役をしているのだ。

レンタル移籍

 レバークーゼンの細貝や英国プレミアリーグ アーセナルの宮市は、移籍したチームでプレーしていない。(最近細貝はレバークーゼンでデビューした) 移籍金なしで安く買った将来性ある選手であるけれど、自分の所属チームで出番がない選手は、他チームへレンタルで期限付き移籍している。チームもまた、レンタル移籍で儲けているし、選手も武者修行の新天地でスキルアップが可能だ。もし、そこで認められたら所属チームに帰れるし、日本代表にも呼んでもらえる。

 一番割に合わないのは、Jクラブだ。宇佐美の抜けたガンバ、乾と香川の抜けたセレッソ、岡崎の抜けたエスパルスや内田の抜けたアントラーズの成績はどうだろうか、それも球団に入るべき移籍金はないし、海を渡って活躍する彼らが帰国する時には、旬は過ぎているかもしれない。ではどうしたら良いのだろうか、最近勉強した内容はこれだ。

再契約の意思確認を早くする

 契約期限切れのシーズン終了直前ではなしに、少なくても一年前の前シーズンに契約更新の話をする。そこで本人の意思を確認する。もしも、移籍話があっても、その時点では移籍金が発生するし、契約更新を確認すれば、当面移籍話は発生しないだろう。

 最近のニュースでイタリアセリエAインテルの長友に球団は早々と契約更新の話をした。年俸も大幅にアップされるということだ。ドルトムントの香川は、多額の移籍金でプレミアのマンチェスターUへステップアップできた。選手にとっては、良い移籍であってほしいし、Jクラブもひとり損のないように勉強してほしい。選手も球団も成熟した関係になってほしい。

EUにおける法律

 欧州全体のルールとして1995年に以下の内容の判決が下った。

①欧州サッカー選手は自分の契約の終了後、欧州内の別のクラブへ自由に契約することができる。
②国籍を理由として選手を差別したり、外国人枠を設定することはできない。

これが現在の欧州内の基本姿勢である。

 UEFAでは、外国人枠の規制について、地元でトレーニングを受けた選手は8人までなら問題ない。地元でトレーニングとは、15歳から21歳まで3シーズンをフルで所属しているチームの選手を言う。(同じサッカー協会内のチームでよい) 宮市は、あと一年FA内でプレーすれば良いわけだ。

最後に

 長友や香川はビッククラブで花を咲かせ日本人選手のグレードアップに貢献してくれた。これからも彼らを模範にした移籍話は増えるだろう。しかし、何が何でも欧州行きではないだろうと思う。万一、欧州でダメなら早く日本に帰ってくる選択肢を大きく持つことだろう。Jリーグよりレベルの低いリーグもたくさん存在するのも事実である。

 もっと、パイプを太く持って情報交換の場を広げてもらいたい。帰国組みの座談会をやっても良い。生の声を聞きたいし、彼らを暖かく迎える土壌も必要だと思う。

※冒頭のタージマハールは、世界最大の大理石建築で、16世紀にムガール帝国のシャー王が若くしてこの世を去った最愛のお妃を偲んで22年の歳月と膨大な国費を費やして造った廟である。シンメトリーの建物の外の尖塔は39メートルあって、塔が倒壊しても中央の廟に崩れ落ちない。ドームは65メートル。ドームの中央にお妃(タージマハール)の棺が安置してあって、壁には無数の宝石が装飾されている。