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コンフェデ杯決勝 世界が熱望したカード(連載第201号)

2013年7月1日

※元ブラジル代表のロベルト・カルロスとジュニーニョと共に
※元ブラジル代表のロベルト・カルロスとジュニーニョと共に

準決勝の2試合はすばらしかった・・

 予想通り同じ大陸通しの対戦だった。ブラジルとウルグアイの対戦は、1950年のW杯ブラジル大会マラカナンの悲劇を思い起こす人も多く、万一ブラジルがこの一戦に屈したときは、マスコミ各紙はマラカナンの悲劇の再来と謳ったことだろう。しかし、実際は2-1でブラジルが勝利した。(マラカナンの悲劇は私のコラム第158回を参照)

 ブラジルの南、アルゼンチンとの境に位置する人口360万人のウルグアイは、もともとブラジルの一部であったが1825年にブラジルから独立している。南米の雄ブラジルとアルゼンチンに挟まれながらサッカーに関しては強豪国で一昨年FIFAランク2位(1位スペイン) まで上昇した。過去W杯11回出場し、2回優勝。コパアメリカ大会では11回も優勝している。よくパラグアイと混同するが、はっきり言ってウルグアイの方が強い。この8月に日本代表との親善試合も組まれているので楽しみだ。しかし、会場は関西ではなく仙台のようだ。

 私は、新生ブラジルと古豪ウルグアイの対戦と読んでもっとも楽しみにしていたゲームだった。このレベルでは、システムや組織の優越で判断するのは無意味だ。きれいなパスワークや個人技での抜き技が頻繁に出ることはない。では、何が試合の命運を分けると言うのか。それは球際の鋭さ、相手との接触の強さ、そして幸運さで決まる。しいて言えば、ウルグアイのエース・ファルランが年を取って、ブラジルのエース・ネイマールが若いという違いだろう。世代交代はどの社会でも必要だ。ゲームは疲労が蓄積される2週間目に入っている。ブラジルはホームであり若いチームだった。

 しかしながら、ウルグアイのFW3人、スアレス、カバーニ、フォルランはすごかった。3人でチャンスを何度も作り出す。日本でいうと岡崎、本田、香川でブラジルを攻め倒すわけだ。その駆け引きはテレビ画面からも伝わる。しかし、後半はブラジルが押し気味だった。

 もう一つはイタリア対スペイン戦だ。しびれたゲームだった。0-0のドロー。イタリアのGKブッフォンが美しいゲームと評したとおり、このゲームもまた緊迫していた。最近のイタリアとスペインの戦いでは、スペインの圧倒さが際立っていた。それに対してイタリアの攻撃がどのように機能するのか楽しみだった。実際、そのとおり前半イタリアの攻撃は勝っていた。いつものスペインのパスサッカーは怖さを感じさせないものだった。お互いチャンスはあった互角の戦いだった。しかし両者とも疲労困憊だった。延長の後半スペインが押し気味だったが、両者ともゴールなしのドローでタイムアップ。

 PK戦に移るが、ともに6人ずつ決めて6-6のイーブンだ。見ている方も疲労困憊である。一度も両キーパーがボールに触れることもなく続いている。ご承知のとおり7人目のイタリア選手がゴールを外す。

 ブッフォンが言ったとおり美しいゲームだった。戦術やシステムや過去の結果なんかは関係のない世界で決まっていく。球際の鋭さと相手よりも勝る勇気と体力の差で決まっていく。世界最高峰の戦いは日本代表が一番苦手とする個の力の差で決まっていく。生まれて2歳ぐらいから始まるストリートサッカーの体験が彼らを強くして行く。ベコベコのボールとデコボコな砂利道、ボディバランスとボールコントロールだけが唯一生きる残る道だ。

 日本のサッカーも原点に戻る必要性を感じている。サッカーでは、ストリートサッカー。野球ではキャッチボールである。かつての昭和の原野の一光景である。

三位決定戦 イタリア対ウルグアイ

 決勝戦の前にリオから遠く離れたサルバドールで三位決定戦が開催された。結果2-2のドロー。イタリアは準決勝に続いて延長後のPK戦だった。スコアが示す通りこの一戦もまたしびれたゲームだった。ただ、ウルグアイのエース・ファルランがPKを失敗している。イタリアの守護神ブッフォンがPK戦で3度も止めるという快挙もあった。流れはこの二点でイタリアに勝利が傾いた。サッカーはどんなチームにもチャンスが訪れてくる時間帯があって、その時に得点するかどうかでゲームを支配できるか決まる。疲労とケガ人続出のイタリアに流れが傾いた。PK戦を勝利したイタリアが三位を獲得したのだ。イタリアは強い。どんな大会でも上位に顔を出してくる。かつてはドイツだった。来年のW杯には、この地での経験が生かされるだろう。

27年ぶりの公式戦・・ブラジルは11年前の本日、横浜でW杯優勝した記念の日

 ブラジル、スペインの戦いはなんと公式戦では27年ぶりだ。毎回当たる相手がいると思えば27年も当たらないチームもあるということだろう。しかしながら来年も含めてこの2チームの宿命みたいなものを感じている。また、11年前W杯日韓大会の決勝戦の日が今日だ。確実にこの二チームが勝ち進んでくるだろうことは素人でも予想がつく。今回のゲームはW杯ブラジル大会のプレビューでもあった。

 決戦の地はリオ・デジャネイロのマラカナン競技場。改修したてである。1950年のW杯ブラジル大会で優勝すると信じられていたブラジルがこの地でウルグアイに敗北した。結果優勝できなかった。多くの自殺者が出てマラカナンの悲劇と謳われた因縁の地である。現代っ子ネイマール率いる新生ブラジルはリベンジできるか注目の的ということであった。

圧倒的に強いブラジル3-0で王者スペインに完勝

 新生ブラジルにはマラカナンの悲劇は過去のものだった。開始早々公式戦29試合負けなしの無敵艦隊に魚雷をぶちこんだのがフレッジだった。柔軟なネイマールと対照的な彼は、ブラジルが待望してやまない剛のストライカーだ。この開始3分の怒涛のようなブラジルの攻撃でスペインはパスを組み立てるという持ち味を消されてしまう。ブラジルの執拗な守備にスペインらしさは消え失せてしまう。

 その上、セルシオ・ラモスのPKの失敗と同点機ペドロのフリーのシュートをブラジルDFダビドのスライディングでゴールから掻き出す超美技で阻まれてしまう。もしということはないが、この二点が入っていたらスペインの勝機もあったことだろう。

 ホームのブラジルが中二日のスペインを決勝の地リオのマラカナンの強固な砦に誘き寄せてコテンパンに打ちのめしたゲームということだった。かつて16世紀の大航海時代にスペインは大海原に新大陸を発見し、次々と植民地化していった。もちろん南米の地もまた彼らの属国として成り立っていく。三位決定戦開催の地サルバドールの港にアフリカからの奴隷船が到着しブラジルは黒人との混血の地として栄えていく。はからずも奴隷船の中で黒人たちが体力を鍛える武術として広まったのがカポエラの原型であり、私はブラジルサッカーの柔軟さと強固さの源と説いている。

 18世紀になってもスペイン海軍は「無敵艦隊」と呼ばれ西洋諸国から怖がられる。それを揶揄して連戦連勝のスペインサッカーをこう呼ばれている。歴史のとおり無敗記録はいつか破られる。スペインにとってはそれがコンフェデの決勝であり相手がブラジルであって良かったのではないだろうか。本番は来年のW杯本選である。スペインが本選までにやるべきことが習得できたゲームであった。

 タイムアップ後のトロフィーの授与式、一連のセレモニーも大変興味深いものだった。自分の子供を連れて表彰される選手も最近では見慣れてきた。ちなみにレフリーはオランダ人だった。洗練されたすばらしい笛を吹いた。

 キックオフの笛の直前にマラカナンの大観衆に見守られてセンターサークルでブラジル選手たちが抱き合っていた。こんな光景が日本でみられないとサッカーは強くなれないのかもしれない。開始直前に香川と本田が抱擁するのだから・・・・・・・

日本代表強化策

 これからのコラムでは日本代表の強化策を考えてみたい。コンフェデが終了して残った疲労感。そして世界との差が思いのほか遠いということ、誰もが感じていることだろう。ザック監督は何を考えているだろうか、彼の組み立てるプランは何なのか、あと一年で日本代表は恥じないゲームが出来るようになるのか、それともオシム元監督が言ったように、あまり期待しないことになるのだろうか。私なりに真剣に考えていきたい。

テーマは以下のようになってくるだろう。
・日本代表の個のレベルアップとは
・日本代表は3バックを採用すべきだろうか
・日本代表に新しい人材の発掘と登用は
・日本代表の遠藤と長谷部、本田と香川の位置づけは