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勝ちたかったオランダ戦(連載第223回)

2013年11月17日

スイスの風景写真はどこを撮っても絵葉書のような構図だ。一週間も旅をすれば、目も慣れて飽きてくる。次に欲しいのは歴史的な建造物だ。だから旅の企画はスイスとイタリアの組み合わせたコースが良い。


※スイスの風景写真はどこを撮っても絵葉書のような構図だ。一週間も旅をすれば、目も慣れて飽きてくる。次に欲しいのは歴史的な建造物だ。だから旅の企画はスイスとイタリアの組み合わせたコースが良い。

オランダ戦に真剣勝負で

 マスコミは日本代表が勝利するためには真剣勝負で、最後は気持ちの問題だと言う。私からすればこれはキックオフ直前のロッカールームを出る時の話だろう。実際のところはしっかりとした戦術をもって事前のミーティングに対応した戦術練習が大切である。私はツイッターで今回この様につぶやいた。オランダ戦に真剣勝負で勝つためには、従来の日本代表のパスサッカーにドリブルで中へ切り込むスピードを上げる、精度の良い早いパスを送る、出し手と受け手の信頼の構築を掲げた。もちろん当たり前のことをつぶやいただけだ。

 その上にもうひとつこんな提案もした。一旦引いて守備を厚くする。これがある程度通用すれば、守備を重点にカウンター狙いで速攻を掛けるやり方だ。そのために足の速い一発屋を召集すべきだろう。なんだか、時代遅れのサッカーのようだが、勝つためになりふりかまわない作戦も必要だろう。

 これまで負けていて後半ぎりぎりに選手を代えるやり方では納得できないからだ。スリーバックを試すなら試合開始からトライしてほしい。中途半端な戦術には付いて行けない。私は、オランダ戦直前までこのように考えていた。

勝ちたかったオランダ戦

 しびれたゲームだった。後半から入った香川、遠藤が良かった。遠藤には恐れ入った。ここに来て彼のすばらしいパスワークを見せつけられた。前半二点先行された時は、もうこれで終わりだと思った。しかし大迫の得点で一点差になって前半を終了した時は、いつもと違う代表を感じる。前に向かう姿勢が違うと思った。

 さぁ、冷静になって振り返ろう。立ち上がりは日本の攻勢だった。前からのプレッシャーをかけ、ワンタッチパスを応用し、敵のボールを二人三人と囲んでいく、まるでこばんザメのように大物に食らいつく。チーム全体が高い位置にいることでボールの支配率は上がった。

 オランダが日本の戦術に慣れて来た時につまらない失点で先取点を奪われ、オランダの速いパス、その上長いパスによってまるで高校生のように翻弄された。パスの出しては中盤底のデヨングとMFのフアンデルファールトで、両サイドを最大限に広く使う早いパス展開に、こばんザメ作戦は不発の連発だった。要注意人物のロッペンに得意のコースを決められ二点目を奪われた。

 前半44分に長谷部スルーパスから大迫のダイレクトシュートが決まった。私はオランダのGK、いやDFを含めてダイレクトパスに弱いチームだと確信した。大迫のシュートはスピードがあるとは思えない。しかし、GKはスローなセービーングで左へ飛んでいた。ボールはネットを揺らす。

 ザック監督はこの日、開始からスリーバックを試すことはなかった。しかし、先発選手を大幅に変えるというチャレンジをしてきた。前半の選手と後半の選手がどちらが良いとは判断できない。ただし遠藤は良かった。後半日本は得点し、逆転も出来る勢いで攻め立てた。迫力あるパスサッカーとシュートで終わるセオリーを繰り返す。
流れるパスワークとダイレクトパスとシュート、この見事なサッカーに観客は酔いしれる。

 前半、全く歯が立たなかった相手に対して何が功を奏したのだろうか。一つは後半から入った遠藤のパスだった。オランダと同様に長いパスで左右に大きく展開した。時には、相手のいやな地域に小さなパスで突破する。遠藤のポジションニングは抜群で相手のお株を奪うような起点となった。そして、今回は慌てずに守備を高い位置に保ち前線からプレッシャーを掛け続けた。

 最大の要因は前線の選手全員が共有したダイレクトパスによる崩しだ。全員が連動することによってオランダの守備を翻弄したわけだ。しかし忘れてはならないことは、オランダが後半には前半のような大きな早いパスが出来なかったことだろう。これは、どうしてだろうか・・・。疲れか、選手交代が原因なのか良くわからない。しかし、確実にオランダは自分たちのサッカーを見失った。後半見られた数多くのGKへのバックパス。明らかに出し手が動ききれていない一番悪いサッカーをやってしまった。

 だから日本は三点目を取って勝ち切りたかった。柿谷のシュートや本田、香川のシュートが入らなかったことはもう良い。最後の精度を上げることは個々の責任だから、これから黙々と練習すれば良い。日本のパスサッカーが通用する域を確認したことが何よりも大切なのだ。次の一戦に期待しょう。

 ヨーロッパプレーオフ第一戦の速報が入った。ウクライナ2-0フランス、ギリシャ3-1ルーマニア、ポルトガル1-0スウェーデン、アイスランド0-0クロアチア。こごても何かが起こっている。

 最後に後半15分の本田のゴールを再現したい。前線からの守備、高い位置で敵のボールを奪取、ゴールを意識した共通の動き、前へのドリブルと小さなパス交換、ダイレクトパスで繋ぐ次の選手、第三の選手の意識、ダイレクトシュート、結果相手DFを翻弄したゴール。