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大阪ダービー (連載第248回)

2014年4月14日

セレッソのツートップ 柿谷とフォルラン
※セレッソのツートップ 柿谷とフォルラン

志摩半島東南端の大王埼灯台は戦前からの灯台で昭和のレトロな土産店がひっそりと営業している。
※志摩半島東南端の大王埼灯台は戦前からの灯台で昭和のレトロな土産店がひっそりと営業している。

大阪ダービーマッチの前に大王埼灯台を紹介

 伊勢志摩への旅の途中に大王崎灯台を訪れた。ここは昭和二年より営業していて太平洋戦争を初め伊勢湾台風も体験している歴史に残る灯台である。観光客に灯台は解放していて山道の両際にわずかに残る土産物店は昭和レトロの匂いが漂う。ここだけは時が止まったようだ。しかしながら何か懐かしい。修学旅行の時の思い出が錯綜する。

 灯台からは磯で素潜りしている海女さんの姿を見ることが出来た。土産店の店先ではハマグリやサザエを炭焼きして販売している。ふもとの小さな漁港には一般向けの魚屋が干物を軒先で売っている。客引きの大きな声が飛び交うことは決してない。春休みだと言うのに客足はわずかでその中に外人家族の一行を見て取れた。ここは昭和半ばだ。

二年ぶりの大阪ダービーは2-2のドロー

 まずゲームを見るための私の三原則からチェックしよう。第一にスタジアムの状況だ。4万3千人近い大観衆で埋め尽くされている。大阪を二分するサポーターでスタンドが響き渡る。ここは長居でセレッソのホームである。ガンバのホーム万博でなくて長居ゆえの収容人員である。ピッチの緑も映えていて大一番の舞台としてはベストコンディションだろう。

 第二は審判団のチェックだ。これまた最高のレフェリーを揃えた。W杯南ア大会でたびたび笛を吹いた現在日本ではナンバーワンの西村氏を主審にしたメンバーだ。白熱したゲームをコントロールできる数少ない人物だろう。W杯南ア大会ではフランス対ウルグアイ戦の笛を吹いた。また準決勝のウルグアイ対オランダ戦では第四の審判として出場している。よってフォルランとは顔見知りというわけだ。

 第三はチームについてチェックしよう。ホームのセレッソは言うまでもなくベストメンバーを揃えている。柿谷、フォルランのツートップ(実際は柿谷のワントップにやや下目にフォルラン)。先日日本代表合宿に招集された南野19歳、今度のW杯では最有力者になるだろうボランチの山口蛍、最近ポジティブなプレーが印象の移籍組の長谷川、そして生きの良い杉本らである。

 一方ガンバは、唯一の生きの良いFW宇佐美をケガで欠場している。彼の離脱後は一気に下降しているのが現状でもある。私は、遠藤を上げ気味なポジションで使うと想像していた。実際前半は遠藤は攻撃的MFの位置でプレーしている。また新加入のリンスの動きが重要なポイントでもある。以上がゲームを見るための私の三原則だ。試合結果はフォルランの二得点とガンバ阿部の二得点でドローに終わった。

セレッソでフォルランがしたこと

 このゲームでフォルランが活躍した。彼の一点目はゴール前での柿谷と山口とのパス交換からチャンスが生まれた。フォルランにパスが渡った時トラップミスからボールが少し前屈み状態になる。彼は来日してからトラップミスが見だっている。しかし、次の瞬間トウキック(つま先で蹴る)でシュートを打ってニアサイドにゴールインさせている。シュートの方法というよりは、彼のポジションが良い。この時はゴール前に顔を出していた。またある時はボールのある反対側、つまりフォアの位置にいることもある。

 二点目は左サイドでフォルランが中央へ早いパスを出すとガンバDFがハンドの反則を犯してしまう。ゴール左15度で近くもなく遠くもないFKを得る。誰が見てもフォルランが蹴るだろう。この場面は開幕戦から何度も見ているが残念ながらことごとく外している。大抵は大きくバーを越えるか、相手壁に弾かれている。この日は緩いスピードで壁の右を抜けてゴールネットを揺らす。彼はこの程度での感覚でFKを蹴るコツを掴む一撃となった。今までは力が入りすぎたようだ。

 その後も彼は三点目を狙っていた。しかし、常にガンバの遠藤を気にしている。遠藤のマークを怠りはしない。マークの受け渡しの指示もしている。W杯ブラジル大会でベスト16で戦うかもしれない日本代表の要の遠藤に対して十分な注意を払っていたのである。

プレー以外にフォルランがしたこと

 ようやく彼はJリーグでのプレーの仕方やコツを体得してきた。チームもまとまってきている。これからはゴールの量産につながっていくだろう。しかし、彼がチームにしたことは他にあって、それこそが重要なことなのである。彼のシュートレンジは広いと言われている。実際左右、距離共に目に見えたらシュートを打とうしている。ボールを受けたらチームメイトを探すことでなく、ゴールを見る。つまりシュートを打つことが最大の仕事であってそのために忠実に動き回っている。

 そして日本では、こんなところでシュートを打っても入らない。シュートよりもパスを先行させるべきであるという無言の風潮が残っている。彼はその雰囲気をかき消すように誰の遠慮なくシュートを遠目より打つ。入らなくても問題でない。シュートを打つ行為が彼の仕事であるからだ。その彼の行動がセレッソの若手に浸透しているのである。

 柿谷、杉本、南野、山口らは当たり前のようにどこからでもシュートを打つ。それに文句や疑念を挟む余地は見当たらない。その状況をフォルランはチームに与えているのである。結果はガンバの伏兵阿部のすばらしい二点でドローに終わった。大変疲れたゲームだった。選手にも審判にもそして観客にも。

 その他のゲームは広島が勝った。首位だ。徳島は未だ勝ち点がない。仙台がようやく勝った。J2京都は山形に2-2のドロー、岐阜は横浜に1-0で勝った。岐阜の先発GKは川口でDFは三都主だ。監督のラモスの鼻息が聞こえてくる。