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予備登録の30名 (連載第252回)

2014年5月15日

壮大な南米イグアスの滝の落ち際 水しぶきでずぶ濡れ状態で撮影した。
※壮大な南米イグアスの滝の落ち際 水しぶきでずぶ濡れ状態で撮影した。

もう一つの負けられない戦い なでしこジャパンのアジアカップ

 女子のワールドカップ予選を兼ねたアジアカップがベトナムで始まった。残念ながら国際マッチデーに指定されていない。日本はDFの熊谷、近賀、FWの大野などが参加できない。所属する海外のクラブの事情だ。なんとか初戦から二試合の限定でエースストライカー大儀見が駆け付けた。

 昨晩の開始時間は夜8時15分だけど気温29度と高湿なホーチミンシティーだった。その上ピッチは小雨の水分で重い。芝も東南アジア独特の葉が広い厚めのピッチだ。当然足元が重く体力は擦り減っていく。

 初戦のオーストラリアは前回の優勝チーム。前回0-1で負けている。体格が良くスピードとパワーで早めに仕掛けてくるチームだ。その上、細かいパスもうまい。日本のスターティングメンバーに大儀見、澤の名前がない。高瀬と吉良のツートップだ。しかし、前線で孤立するふたりにオーストラリアの速い攻撃が襲い掛かる。防戦一方の立ち上がりだ。

 これはヤバイと思った時に先取点を取られてしまった。立ち上がりは完全にオーストラリアペースだった。嫌なムードが広がり始めている。

 とうとう前半途中で佐々木監督は吉良に代えて大儀見を投入した。どうだろう大儀見の存在感は、迷いがなくて体幹がしっかりとしていて裏を突く動きにオーストラリアのDFは徐々に下がり始めている。彼女が入ったとたんに明らかに日本ペースに移行している。全くだ。感激のあまり言葉も出ない。大儀見さま様である。後は彼女を信じるしかないと思っていた。

 後半に入っても日本ペースは続くがちょっとしたミスから二点目を取られてしまう。二点のビハインドだ。これはヤバイぞ、三点目も覚悟し始めた時に川澄のサイドアタックからのクロスを相手DFがミスしてOGとなった。1-2である。これで相手は慌てはじめた。追加点のチャンスは日本にある。勝てると思った。

 後半終了前にまたもや川澄から早めのクロスが入ってきた。ゴール前に詰めていた大儀見が合わせて二点目を取る。2-2となった。ロスタイム4分で三点目を期待したが、オーストラリアも最後の力を振り絞って攻撃を仕掛けてくる。そのままタイムアップとなった。

 まさに大儀見さま様だった。信じてよかったと思うほど彼女の存在は大きい。今や世界に誇る日本のエースだ。アメリカから参戦した川澄、ミドルシュートを果敢に狙うキャンプテン宮間の存在も大きい。なんとかドローに持ち込んだなでしこジャパンの底力に敬服したい。そして大儀見に感謝したい。

 それにしてもW杯初戦のコートジボアール戦でも同じようなことが言えるのではないか。立ち上がり足が止まったイレブンに速攻で失点を食らうことは想像がつく。今回のこのゲームの恐ろしさを何とか生かしてほしいものだ。

予備登録7名の立場

 日本サッカー協会強化委員会はW杯ブラジル大会23人枠を発表した。そしてあえて翌日に7名の予備登録選手を追加発表している。ほとんどの国が同時に発表する中、日本は一日遅れの発表で一線を画した。

 FIFAは6月2日に本登録23人を登録すれば良い。それまでは30名枠の予備登録で良かった。かつて日本は明確に補欠選手を明示しないまま海外キャンプにつれて行き本登録で落選者を出した。俗に言うキングカズ、北澤事件である。国民の多くは彼に同情したし、彼のコメントが一層悲壮感を生んだ。それは、「W杯への気持ちは現地に置いてきた」だった。

 それ以後落選という不名誉な発表はなくなり、いきなり本登録23人を発表する。後は万一の時に入れ替わり要員としてスタンバイするという誠に不安定な立場が存在する。ある意味彼らは本登録選手よりかメンタルやフィジカルで気を揉むことになる。その第一に国内の指宿、アメリカのフロリダキャンプには帯同しない。私は心配するのはむしろアメリカキャンプである。ここでコスタリカ他2試合を予定していてケガの確立は高くなる。

 その上、渡航手続きを完了しておく必要もある。今回は黄熱病の予防接種が必要である。都道府県によっては直ぐに打つことができない。予防接種の効力を考えると接種期間も限られている。そして場合によればマラリアタブレットも服用することになる。マラリアの予防薬は注射でなくて錠剤を何日も服用する。服用にはルールがありアルコールと併用は厳禁だ。試合後のドーピング検査のこともあるし、医学的な説明を受ける必要がある。

 事前に相手チームのビデオを見て研究する必要もある。それも本体と離れた孤独な立場である。

 先日のソチオリンピックで活躍した葛西選手。長野オリンピック時代のテストジャンパーの物語が放映されていた。少し違うが今回も同様の葛藤が彼らに起こるのである。

 予備登録に名を連ねる7名は私が以前にリストに入れた名前とほぼ一致する。彼らはマスコミの取材に対して選ばれたことを名誉に思い、万全の準備を行うと言った。私は彼らにも光を当ててあげることが絶対に必要であると思っている。その選手は、GK林、DF駒野、水本、MF中村憲剛、細貝、FW豊田、南野の七名。

今後の予定
5月21日から25日まで鹿児島キャンプ
5月25日 壮行会(国立競技場体育館)
5月27日 キプロス戦(埼玉)
5月29日から6月6日まで アメリカフロリダ準備キャンプ
6月2日コスタリカ戦(アメリカタンパ)
6月6日ザンビア戦(同)
6月7日以降 ブラジルサンパウロ州イトウ市ベースキャンプ入り

心配な事

 次回はブラジル故の心配事を記述したいと思っている。国内では警察、空港、郵便等の従事者がストライキを予定しているし、南米各国からの窃盗団の入国もある。三会場のスタジアム建設が遅れているし、空港、地下鉄の施設建設もはかどっていない。気候、移動、治安、利便など神経質になったら負けだ。