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決勝トーナメント始まる (連載第266回)

2014年6月30日

94ワールドカップアメリカ大会 決勝トーナメント

※94ワールドカップアメリカ大会 決勝トーナメント

決勝トーナメントが始まった

 いよいよW杯本番に突入だ。今まではプロローグにすぎない。そのプロローグで敗退したアジア勢は次回のロシア大会での出場枠を削減されるだろう。よって次回のアジア予選は熾烈を極めるかもしれないが勝ち進んでいくしかないだろう。

 決勝トーナメント初戦のブラジル対チリの一戦は消耗戦になった。ツイッターのツィート数も鰻登りの状態だ。一次リーグのツィート数が三億数を超えた。これはロンドンオリンピック記録の1.5億を超える。今回もまた自分ツイッターを読み返しながらコラムをまとめる作業になっている。このゲームの開始前の国歌斉唱から異様だった。チリもブラジルもテープから流れるメロディ以上に最後の一小節まで歌いきった。ブラジルの場合はもっと顕著で大観衆をはじめ選手、監督コーチ、エスコートキッズまでもが大声を張り合っている。 国歌とはこのように歌うものかもしれない。

 第一印象は激しいサッカーだ。いや、もはやサッカープレイではない。これは格闘技プラス鬼ごっこ。レフリーは簡単にPKを取らない。チリのタックルにネイマールは空中を舞っている。彼は受け身を習得しているに違いない。怒涛のような突進に開催国として負けることが許されないブラジル選手の心意気が見える。しかし、チリも負けてはいない。ブラジルの激しい当たりを巧みにかわしながらブラジル以上にうまいボールさばきで相手をすり抜けて行く。

 1-1のまま後半も一進一退が続く。ブラジルの攻撃を良く見ると組織的な戦術など皆無だ。 もう個の力でぐいぐい攻める。中盤で華麗なパスワークで翻弄するブラジル式ジンガサッカーは見て取れない。要するに点さえ取れば良いのである。これこそ日本が忘れたサッカーの原点だろう。攻撃的なサッカーが出来なかったというが、元来サッカーはシュートを撃つ以上攻撃的なものである。不足しているのはブラジルが行っている格闘技式サッカーである。

 きっとブラジルはPK戦にしたくなかったことだろう。誰もがPKをまともに蹴れるほどの体力を保持している風に見えない。案の定PKはお互いに外しまくる。ブラジル最後のキッカーは痛々しげなネイマールだった。彼のいつものどおりのキックがゴールネットに刺さる。なんとかベスト8に勝ち名乗りを挙げた瞬間だった。

 地の利はブラジルにあった。ベロオリゾンテのミネイロスタジアムのメインスタンドから見て右側のゴール。そのクロスバーと右ポストがそうだ。チリの二本のシュートをこのゴール枠が跳ね返した。このゴール枠が地の利そのものであった。もしもブラジルが優勝したらこのゴール枠が原点となるかもしれない。歴史遺産の発掘だ。勝利しても泣きじゃくるセレソンを初めて見た。ボロボロのトーナメント一回戦だった。

 もう一つのゲームもまた南米対決コロンビア対ウルグアイ。結果は2-0でコロンビアの圧勝だった。このゲームでニューヒーローが現れた。その名はハメロドことコロンビアのハメス・ロドリゲスだ。鮮烈なファーストシュートは今大会ベストゴールに数えられるほど玄人受けするゴールだった。それに反して前回大会最優秀選手であったウルグアイのフォルランの衰退ぶりも見て取れた。22歳のロドリゲスと34歳のフォルランの新旧交代試合でもあった。

 C大阪に在籍しているフォルランとスイスへ移籍話の出ている柿谷ともに今大会は寂しいW杯となった。

 今朝のオランダ対メキシコの一戦もしびれたゲームとなった。メキシコにも新しいヒーローがいる。世界に名の知れたGKオチョアだ。彼がカンポス以来本当のヒーローになるためにはオランダ戦を勝ち抜くことだった。しかし結果はロスタイムで逆転されて1-2で敗退してしまう。オランダの勝因は90分間タフで走り続けたスナイデルとロッペンの衰えないパワーだろう。その上彼らにはスピードがある。オランダは優勝候補筆頭にあがることになる。

 もう一つはコスタリカ対ギリシャだ。これもまた1-1でドロー。PK戦でコスタリカが初のベスト8になった。コスタリカの進撃が止まらない。日本人の誰もが大会前アメリカでの強化試合(いや親善試合と言おう)でコスタリカを打ちのめした日本代表の力を過大評価した。過去の親善試合はサッカー協会の予算の屋台骨である興行的な収入でしかない。大手広告会社がショービジネス的に演出したセレモニーと巨額のファイトマネーで招聘したチームとの親善試合だった。そのゲームに勝利したと言っても世界基準から程遠い。

 ここで是非とも女子サッカーを思い出してほしい。なでしこジャパンは毎年ポルトガルで開催されるアルガルべ杯に招待されて出場している。ここで強豪チームと真剣勝負をしてそのスピードと卓越した体力の相手チームとの経験を積む。そしてW杯やオリンピックへつなげているのである。今回のコスタリカのベスト8が例である。今のコスタリカには勝てない。

 日本は今までの数ある勘違いを真摯に受け止めて改善していくことが必要である。その第一歩に親善試合での交代枠6人制を改めて大会仕様の三人までにしてみてはどうだろうか。お金も作業もいらない提案である。

 最後にブラジルは次戦コロンビアが天王山だろう。これに勝てば優勝は見えてくる。また、コロンビアが勝てば初優勝に近づくだろう。その時の相手はオランダかアルゼンチンだろう。