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ワールドカップブラジル大会閉幕 (連載第270回)

2014年7月14日

夕日に映えるコルコバードの丘のキリスト像とワールドカップトロフィー

※夕日に映えるコルコバードの丘のキリスト像とワールドカップトロフィー

三位決定戦 ブラジル0対3オランダ

 試合後のインタビューでひとりセレソンらしいプレーをして気を吐いたオスカルは「説明できない」と涙声で言った。キャプテンのチャゴシルバも「失望した。国民に謝りたい」と淡々と語った。

 この試合、ブラジルは最初からドイツ戦の敗戦を引きずっていた。ネイマールがベンチ入りしてチームとして気持ちをひとつにして臨んだが、結果はブラジルの良いところもなくスピードのオランダに完敗だった。ここまでの戦犯というべきFWのフレッジ、フッキとSBのマルセロを下げたメンバーだったが攻撃は単発で守備は穴だらけ観衆はブーイング、惨憺たるゲーム展開に終始した。

 控えの選手のコンディションも悪く、試合中に追い越していく選手はなく、歩いてボールを眺めているMFもいた。その上、圧倒するロッベンのスピードに付いて行くことすらできないでいた。国民はこんなにもブラジルサッカーが弱くもろいものだと知った。 王国の崩壊は現在も進行形だ。

 これを立て直すことはかなり難しいことだろう。しばらくは気を静めるための時間が必要かもしれない。まずはDFのあり方からやり直しだ。個人の力では長丁場の大会を勝ち抜くことは出来ない。ブラジル式組織論を再構築する必要がある。若い指導者の出現に期待しよう。

 ブラジルのジウマ大統領は「カオスに堕ちた」とコメントそして暴動、略奪はブラジル敗戦の理由にならないと言った。しかし、あきらかにブラジルの敗戦がそのきっかけになったことは事実であろう。本当のところは、信じられない多額の投資をこのワールドカップに費やしたことだ。今後その支出に不正が発覚したらこの政権は持たない。

 二年後のリオのオリンピックへの影響も無視できないだろう。建設途中のインフラや高速道路崩落の後始末に今後赤字を垂れ流す巨大スタジアムの維持とカオスはまだまだ続く。混沌たる無秩序から抜け出す手立ては見つかっていない。

決勝戦 アルゼンチン0対1ドイツ

 延長の末、ドイツが1-0でアルゼンチンを下し24年ぶり4度目の優勝を果たした。試合は準決勝、三位決定戦のような一方的な展開と違って、緊張の中にもお互いの持ち味の出る展開となった。ドイツのパスサッカーとアルゼンチンのドリブルサッカーの一騎打ちでどちらが勝利してもおかしくないゲームだった。ドイツのポゼッションサッカーに対してアルゼンチンの守備も固く、時折逆襲からシュートまで持ち込んだ。それに対して最後にはGKノイヤーが立ちふさがった。ノイヤーは大会最優秀GKに選出されている。

 アルゼンチン勝利のシナリオはメッシ次第だった。結果的にメッシは無得点に終わるが随所に彼らしいプレーを魅せ大会MVPに輝いた。(彼自身はMVPに不本意だったと想像する)

 何度も言おう本日は決勝戦にふさわしいしびれるゲームだった。試合前の評価よりアルゼンチンの頑張りがゲームを良くしたことは事実だ。これまでの大会成績から考えるとドイツが秀でていることは確かだった。誰もがドイツの勝利を確信していた。しかしアルゼンチンの守備とドリブルサッカーの速攻がハラハラさせる時間帯を演出してくれた。

 私は試合途中、まもなく閉幕する大会への寂寥感についてツィートしたが、多くの反応を寄せていただくことになった。私と同じ思いのサッカーファンが全国に存在することを知った。試合後の表彰セレモニーにブラジルがいないことの寂しさを改めて感じた。それは表彰側のブラジル大統領が寂しく映っていたことから気が付いた。それに反してドイツのメルケル首相の誇らしげな顔が相対的だった。私は万一希望が叶う事なら今ピッチに立ってみたいと思うようになった。この一瞬の時間を共有したいと感じていた。それは2002年の日韓大会の肌で感じた経験からだろう。

 W杯は無事に終了した。大会前や途中で一部トラブルはあったが世界観から見て成功だろう。しかし、祭りの後はそう簡単には行かないだろう。ブラジル国民やサッカー界の反応は予想もつかない大きなわだかまりとなって渦巻くことだろう。W杯に抗議した一般庶民はサッカーを心から愛している。ただ富の分配の不公平感の表れだ。

 私もまたW杯が閉幕してしばらく無気力状態が続くだろう。大会総集編の写真集が発売されるころに再度振り返って見たい。お疲れ様でした。