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堅守速攻 (連載第271回)

2014年7月29日

アギーレ監督の母国メキシコの民族衣装

※アギーレ監督の母国メキシコの民族衣装

新監督アギーレ氏に決定

 新監督にメキシコ人のアギーレ氏が決定したと発表があった。彼の名前はワールドカップ開催中からまことしやかに挙がっていて、一度も消えることはなかった。協会関係者にとっては今大会の総括も早々と終え、早いアプローチが必要であると強調していた。唯一のコメントはザッケローニからの攻撃的サッカーの継承ということだった。

 一部のメディアはアギーレ監督の守備に重点を置く堅実的なサッカースタイルを説いた。
必ずしもザッケローニの継承ではないと言いたかった。もちろん彼にとってはW杯敗退の監督のものまねをする気はないし、私たちもそう願っているわけだ。

 早く決めないと優秀な人物は他国に取られてしまう。といわんばかりの唯一の交渉相手だった。どんなことも交渉相手に競合がないと足元を見られてしまう。高くつくことになる。アギーレ監督が良くないとは思わないし、メキシコのサッカーは日本に合っていると思っている。一度はトライしたいスタイルでもある。ただ、またも日本スタイルの確立へ向かえないことが残念である。

 その最大の原因は、日本人監督が不在であるという事だろう。日本人監督で挙げられるのは岡田氏が唯一だろう。しかし、彼は二度も経験していて新鮮味に欠如している。技術力はさておきカリスマ性に長けていない。次の四年間を託すには賞味期限切れだと感じる。

 なぜ、新しい日本人監督の名が挙がらないのだろうか。現在Jリーグ監督で成功体験した人は広島の森保監督、元ガンバの西野監督(現名古屋)ぐらい、元職で挙げると木村氏や水沼氏、都並氏あたりが挙げられる。しかし、一向にその気配はない。現役に近い選手で言うと井原氏や中田氏、忘れてはならない三浦カズ(現役続行中)氏などのレジェンドクラスが存在しているがこれまた挙がってこない。あぁそれから次期強化委員長候補と挙がった恒様こと宮本氏が最短かもしれない。もちろんS級ライセンスの保持が条件だが。

 協会も8年後W杯カタール大会を見据えて4年後から担う日本人監督の育成に本腰を上げる時に来ている。いつまでも物真似サッカーでは、将来が心配だ。もちろん日本代表OB達も名乗りを上げてトライしてほしい。日本社会に蔓延る停滞心をサッカー界からぶち壊してほしい。何の責任も背を追わないテレビ解説の仕事は新人で1回あたり20万、ベテランで100万稼げるらしい。しかし名誉と栄誉からは程遠い。若い日本人監督が続くことが本当の強化になることだろう。

堅守速攻

 今のトレンドが堅守速攻だろう。ワールドカップブラジル大会でオランダが見せたサッカーだ。これまでのスペイン流の優雅なパスサッカーではゴールをこじ開けることは叶わない。5バックで堅守し超人的なスピードでゴールを奪うオランダスタイルが世界を圧巻させた。そしてその堅守速攻にパスサッカーの支配率を高めるサッカーをプラスしたのが優勝したドイツだった。

 日本代表には超人的なスピードと体格を保持する選手はいない。俗にいうと人並みだということだ。ドイツは10年にもなる強化策を結実させることに成功した。移民選手を積極的にチームに溶け込ませた。ドイツチームはかつてのような純血ではなく混血チームとして生まれ変わった。

 日本もまた堅守速攻をトライした時期があった。オシム監督時代だった。超人的な選手がいない日本は、全員が走るサッカーを展開して素早くゴール前に向かった。しかし、このスタイルはオシムが突然倒れた時に終わりを告げた。今考えると全員が走りきるサッカーは日本人に適したスタイルになり得ただろうか。

 これからアギーレ監督が示す日本の新しいサッカースタイルは、堅守速攻を底辺にメキシコ流パスサッカーとテクニックのドリブルサッカーの組み合わせになるだろう。

 国連加盟国は193国。FIFA加盟国・地域は209協会で国連数より多い。その209の国・地域にはそれぞれの民族のDNAが流れる独自のサッカースタイルが存在する。民族ごとに生活が変わるようにサッカーの戦術や戦い方は異なる。そのDNAの勝負を決めるのが4年に一度のワールドカップだった。だから人々は悲劇と歓喜を繰り返す。今後の4年間、私たちはメキシコ人のアギーレ監督に民族の礎を託すのである。それほど重要な決定だったのである。