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アギーレJapan初陣 (連載第276回)

平成26年9月6日

マレー半島沖の航海から

※マレー半島沖の航海から

初陣は0-2の敗戦

 昨晩の札幌ドームでのウルグアイ戦は0-2の敗戦に終わった。特別勝てるゲームでないことは初めから分かっていたので残念な思いはない。その理由は、初めて取り組むチームで数日の合同練習では成し遂げることは無いのが普通である。

 札幌ドームは2002年の日韓大会の時に2度訪問した。ご承知のとおりクローズの天然芝アリーナで野球場などと併用だ。芝の育成のために世界初の試みでホバリングシステムを採用している。つまりピッチが上昇して屋外へ移動させ太陽光を直に充てて育成している。北国ならではのシステムである。サッカーの時は野球のセンター部分が折りたたまれて両サイドに収納されている。

 だから観客席からピッチまでが狭く、観客席が高く上から見下ろすように全体が見渡せる。ゴール裏ではまさに眼下に見下ろすことが出来、臨場感は低勾配の横浜国際競技場の何倍も感じられる。観客席は42,000人で422億円を費やして建設された。確か数少ない経営良好のスタジアムのひとつになっている。

 ところでスタメンを見た人の多くはその起用方法に疑問を持ったことだろう。当初よりアギーレ監督は4-3-3システムをうたっていたので5人DF陣のリストから一人は守備的ボランチの下に位置するアンカーの役目だと理解できた。今回は森重がその役割を担う。FWの皆川を始めセンターバックの坂井、左ハーフの田中順也などの新人をスタメンから起用した。ザックJapanの時には無い起用だった。

 誰もが何をやる気かと思った。そして、誰もが横一線のスタートラインに着けると知らしめた。このことがアギーレの考えた戦略だった。

 テニスの全米オープンで準々決勝を4時間以上の死闘で勝ち抜いた錦織選手。往年の名手の神和住さんの言葉が印象的だ。要約すると、ここ一番の試合では、経験者やランク者よりも若手で勢いがある選手が勝利する。まさにこのゲームも新人の勢いを知るべしだと思っていた。

4-3-3システムの功罪

 私は4-3-3システムが好きである。それは、なつかしい高校生時代に監督から何度も教えられたシステムであることと、京都の社会人チームで指揮をとっていた2シーズンに採用していたシステムであるからだ。教える方も教えられる方も分かりやすいシステムであると思う。しかしながら功罪ははっきりとしている。まず第一にアギーレの言うコンパクトに前線と守備を20-30メートル内で収めないと選手間の距離が適切に保つことができない。そして、システムの自動的な連動による変化も出来ないということだ。つまり狭い範囲でボールや人が動くことは4-3-3が4-2-2-2になったり5-2-2-1になったりすることが容易くなることだろう。

 その反面、場伸びすると相手に間に入られてパスコースを寸断させられたり、前線にロングパスばかり送ることしか出来なくなってしまう。DFからのパスカットで一気にピンチにもなる。ようするに4-3-3システムは全員の意思疎通を欠かすことが出来ない熟練のシステムである。

円熟期のチームと産声の挙げたヒヨコチーム

 まさにウルグアイはW杯メンバーで揃えた円熟チームだった。スアレスやフォルランがいない構成であってもカバーニやロドリゲスを中心に世界のプレーを見せてくれた。攻守の切り替えが早かった。相手のミスを常に狙うオオカミの一団だった。日本はサイドバックの攻撃参加も少なく、最後列からのサイドへのパスもすぐにバックパスで取られないようにするパス回しでしか出来ない状態が続いた。これも4-3-3の悪い場面であった。本来なら直ぐにSBの横にMFがサポートに来るはずが中盤のコマ不足でワンサイドを掛けて威圧する相手守備を縦に抜けることは不可能になっていった。

 単純ミスで二点取られた。DFのミスにオオカミ集団は食らいつく。試合中SBの吉田が相手の坂井に何度もダメだしをしていた。彼の期待する位置への上がりがなかったようだ。吉田にとっては自分が動くと横に開く今野の姿があったことだろう。しかし今回からは坂井だった。これはしばらくゲームをこなす事で理解し合える。このような場面は他でも多々あったことだろう。新生ゆえの通り道だ。

 希望を感じたプレーもあった。先発の皆川、途中出場の武藤、柏からポルトガル移籍した田中、わずか数分の出場の森岡などに光ったプレーがあった。

 次戦はベネズエラだ。監督は勝ちに行くだろう。一試合でこのチームの良し悪しは理解した。ベネズエラはウルグアイよりも弱い。若手の起用も絵が書ける。まだ使っていない戦士たちもいる。二戦目で何か見つけたいのが本音で、できればその延長戦上で勝利したい。そうアギーレは思っていることだろう。