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アジアカップ決勝戦 オーストラリア対韓国 (連載第296回)

平成27年02月01日

オーストラリアと言えばウルル(エアーズロック)。世界一の一枚岩。
※オーストラリアと言えばウルル(エアーズロック)。世界一の一枚岩。

エアーズロック登山道。登山は36度の気温予想で中止情報が掲示される。暑さは大敵だ。
※エアーズロック登山道。登山は36度の気温予想で中止情報が掲示される。暑さは大敵だ。

日本サッカーが心配

 各世代で日本はアジアに勝てないのが現状である。世界にばっかり目を向けている内に足元がおぼつかないところまで来てしまった。U-16、U-19、U-21のオリンピック世代もアジアでは勝ちきれていない。そして今回のフル代表もベスト8で敗退した。日本の敗退がアジアカップ最大の番狂わせとも言われたが、良く考える必要がある。UAEの監督は「勝つためには必ずしもきれいなサッカーをする必要はない。時には気持ちで、魂でプレーすることが求められている。」と選手に伝えている。アギーレ監督は今の代表にこんな言葉を掛けることが出来ただろうか。

 アジアカップでは大半がオリンピック世代の選手たちだった。彼らはのびのびとしたサッカーを展開する。韓国は帯同した選手全員(GKは除く)を使って勝ち進んでいる。オーストラリアも中盤の選手を交代しながら勝ち進んできた。それに反して日本は選手を固定し、惨敗したブラジルW杯からの選手を中心にメンバーを構成している。きびしい日程が続く大会では全員で臨むサッカーと言いながら安定という麻薬を呑み続けてしまった。そこには大胆な改革をする気持ちや魂は感じられない。結果アジアで敗退してしまう。

 この6月にはW杯ロシア大会の予選が開始される。長い予選を勝ち抜くためには、世代交代は欠くことが出来ない要素である。次回のW杯ではアジアから出場枠はひとつ減ることになるだろう。前回ブラジル大会でアジア勢は惨憺たる結果だった。もし三枠であればオーストラリア、韓国、イラク、UAE、イラン、ウズベク、サウジ、中国などの強敵が待ち構えている。今の状態ではかなり難しいだろう。W杯の出場を逃してから事の大きさを知ることになるだろう。

 日本のサッカーは欧州の模倣から始まった。古くはクラマーさんのドイツサッカーの指導を受けて近代サッカーをスタートさせた。そして着実に成長していく。日本リーグ、Jリーグと続いて南米のサッカースタイルを模倣していく。ブラジルやアルゼンチンからの選手の個の力に酔いしれて行く。そしてW杯に出場できるチームとして成長していった。今やW杯に出場するだけでは飽き足らずにW杯で勝てるチームへと期待は膨らんだ。しかし、ここで大きな壁にぶち当たってしまった。

 W杯で勝てるチームは模倣だけでは成り立たないことだった。そこには民族の長所が持っている独自のサッカースタイルの確立が必要であった。それなのに招聘する外国人監督にすべてを委ねてしまっている。そこには日本社会に深く根差した安定という蜜がある。多くが意外性のある試みをトライしないでぬるま湯につかりながらサッカーを謳歌しようとしている。

 外国人監督はビジネスとして四年間の安定したチームづくりに専念する。そうすればチームは固定化され世代交代のできない硬直化したチームになっていく。そこからはサッカーに必要な意外性のあるプレーは生まれてこない。日本サッカーは思った以上に重傷かもしれない。(2002年W杯日韓大会の最終日に成田空港で日本サッカーの父ことクラマーさんにお会いすることができた。私の人生において輝かしい瞬間だった。)

韓国対オーストラリアの決勝

 私にとって決勝戦は日韓戦が理想だった。いつも日韓戦をもうひとつのW杯と言って賛美している。しかし現実は開催国で初優勝を狙うオーストラリア対55年ぶりの優勝を狙う韓国という対戦だった。同じA組から勝ち上がってきたチーム同士だった。やはり決勝戦は違う。両チームの勝ちにこだわったプレーが随所にみられる。ボールを支配するためのプレー、球際のプレーはどこよりも激しく厳しいものだった。準々決勝で語ったUAEの監督の言葉、魂でプレーすることの重要性がはっきりと見えた。

 ゲームは一点を先制された韓国がロスタイムにソンフンミンの劇的なゴールで延長戦とした。延長は肉体的にきつい戦いだった。オーストラリアの9番途中交代のユーリツチがゴールライン際で粘ってクロスを入れた。中央に走りこんだMFトロイジが押し込んで勝ち越した。ユーリツチは国民的スター選手ケーヒルに代わって後半途中からワントップに起用されていた。延長戦に入る給水タイムでケーヒルがユーリツチに指導している場面が映し出されていた。ここまであまり良いプレーが見られなかった彼には奮起した意地のプレーで韓国DF2人を振り切ってのショートクロスだった。

 そして精神的に決して折れていない韓国選手の猛反撃も及ばずにオーストラリアが2-1で延長を制した。自国開催での初優勝だった。予想が着かないドラマは終わった。韓国の準優勝、UAEの三位ともにあっぱれな戦いであった。ただ日本がベスト8で姿を消すことになった点が残念無念であった。

オーストラリアの立ち位置

 アジアサッカー連盟からオーストラリア追放という見出しの記事があった。現在アジアカップが開催中にも関わらず開催国追放とはいかがなものかと思うが、不思議な話として私も注視してた。以前オーストラリアはオセアニア協会に所属していた。地図的に見てもオセアニアに位置している。しかし、現在はアジア協会に所属してアジアカップやW杯アジア予選に参加しているのが事実である。私の推測であることを前置きして説明したい。

 その理由はW杯の出場がすべてである。サッカーはW杯に参加することが唯一無二の目標である。オセアニア協会にはW杯参加枠が一つもない。現在0.5枠である。その理由はサッカーが弱いからであって、サッカーの普及人口の低さにも影響している。たとえオセアニア協会内で強いオーストラリアでもW杯の参加権は獲得できない。0.5枠という事は別の大陸とのプレーオフによって参加権を獲得できるのである。オセアニアの雄オーストラリアは別の大陸のチームとプレーオフを戦って獲得する確率とアジアで獲得する確率を考えた時にアジア協会に参加する方を選んだと考えている。それに一発勝負のプレーオフよりも長い予選を勝ち進んだ方がチームはその経験値からベターであることだろう。切磋琢磨したチームの方が本大会でのチャンスは広がる。

 しかしここへ来て西アジアのチームからオーストラリア追放の動きが出てきた。それは毎回W杯の一枠を確実にものにしているオーストラリアが目障りになってきている。体格的にもサッカースタイルもアジアの枠外であることは明らかだ。オーストラリアをアジアから締め出すことで自分たちの参加枠を取り戻す動きは加速するだろう。特に次回からは確実にアジアからの参加枠は一減なのだから。

 もうひとつ西アジアに位置しているにも関わらずアジア協会から欧州協会に参加している国がある。かつてはアジア協会にいて日本とも対戦したことがある。それはイスラエルである。理由はご承知のとおりである。アジアカップの決勝戦。三週間にわたる長い大会の終盤にいろんな事が起こっている。