京都新聞社TOP

ハリルジャパン初陣飾る (連載第302回)

平成27年03月28日

※オーストリアのグラーツの中心街 ハリルホジッチ監督が尊敬する元日本監督オシム氏の住む町 彼らは同郷で速いスピードあるサッカーを共有する。
※オーストリアのグラーツの中心街 ハリルホジッチ監督が尊敬する元日本監督オシム氏の住む町 彼らは同郷で速いスピードあるサッカーを共有する。

ハリルジャパン初陣は皆が驚いたスタメンでスタート

 昨晩のハリルホジッチ監督の率いる日本代表はチュニジアを2-0で破って初陣を飾った。当分はそのゲームでの先発選手で話題は尽きないだろう。誰もが予想だにしなかったメンバーでの船出だった。来日して二週間、数試合のリーグ戦を観戦したハリルホジッチ監督は自分の直感を信じて選手選考を果たした。それが私達には新鮮かつチャレンジに見えた。欧州組のベテラン回帰となった前任のアギーレ監督とは違ってハリルホジッチ監督はいくつかの基準で選手を見ていた。

 それは、スピードとキレのある選手、若くて有望なフレッシュマンだった。その上、バックアップメンバーを含めると50人以上となる大所帯を代表の枠組み入れた。これは彼の改革の第一段階だった。私が常々言う日本人監督の実現では、果たしてこんなにドラステイクには出来ないだろう。日本人監督が何か新しいことをやろうとしたら、周辺の人達から横やりが入る。マスコミはその真意をしつこく追い回すだろう。

 ハリルホジッチ監督はたった三日間の合宿で何ができるか考えたのだろう。彼は選手に自分の考えを問うた。多くの時間をかけて語りかけた。彼は何時間話しても話し切れないと言っていた。グランドの練習には限りがある。休養時間中でも会話はできる。三日もあれば彼の哲学を浸透させるに十分だった。もし、これが日本人監督だったら多くは語らなかっただろう。彼が旧ユーゴの出身でフランス国籍を持つ異質の外国人だったから、何度も語り合う必要があったし、選手もその時間を大切にしたのだろう。

 日本にはあうんの呼吸と言って結論まで話さないことがある。日本の社会の和を大事にすることで余計なことも話さない。しかし外国では違う。沈黙はただの承諾であって、理解したものして扱われないのだ。

 彼は多くを選ぶことで選手の中の競争心を奮い立たせた。そして、新しい選手を使用することでがんばれば皆にチャンスがあると知らしめた。私は、常に観察していますと口で言わずに伝えたのである。それを昨晩の初陣で実行した。ますます選手はがんばろうと思ったことだろう。明確に課題を突き付ける。そして哲学通り実行する。そんなありきたりの指導が私達の社会では新鮮だった。

 GKに権田、DFのサイドに藤春、センターバックの一員に槙野、ボランチは長谷部と山口蛍、トップ下に清武、そしてスリートップには武藤、川又、永井を先発させたのである。そして、彼らは期待に応えた。

ゲームから見えた戦術

 何度もスピードのあるカウンター攻撃を指示するハリルホジッチ監督の戦術は、執拗な縦パスであった。チュニジアが守備ラインを引くまでに早い攻撃で崩すには、今までのDFラインでキープするパスサッカーではない。一時も早い縦パスを長く入れることだ。そして、それに対応できる足の速い選手が必要になってくる。一回二回の失敗は関係なく、何回も早い縦パスとクロスが要求された。前半何度となく右サイドの酒井が後ろへのパスを選択した時、ライン際大声で怒鳴っている監督の姿は怖かった。あれを見れば失敗しても前へ前へ向かっていくしかないだろう。彼は仕方ないとは言わない。もっと縦へもっと前へ、しかも早くと言っているのである。

テレビ観戦とツィッターの楽しみ方

 私はもっぱらテレビ観戦しかしていない。もう何年も代表のゲームを生観戦していない。

若い時はスタジアムでの長時間の滞在も苦にならなかった。しかし、今は季節や移動時間が気かがりであるし、現役の時と違ってチケットが取れなくなっている。そのテレビ観戦でも常にタブレット端末をいじってツィートして楽しんでいる。解説者が言わない事や次の展開の予想、監督の胸のうちなどをツィートする。そんなツィートに共感してくれる人も多く昨晩は五人の見知らぬ人がお気に入りにいれたり、リツィートしてくれた。

 この機会に昨晩の私のツィートを紹介しておこう。「しばらく忘れていたスピードのあるサッカー。おもしれーなぁ!」 「監督が代わり、スタメンが変わるとこんなに活性化するのか!」 「バックパスを叱っているハリル監督、恐い!!」 「長谷部や蛍が目立たないのは、攻撃陣が良いからか?」 「清武の倒れ方が上手い!」 「ハリルジャパンの初陣、日本に不足している厳しさが生まれる日になる」 「香川、本田の再生。これもハリルの使命」 

 これは一部である。ほぼ数分おきにツィートする。内容は簡潔で他愛のないものであるが、決して個人攻撃を名指しではしない。その理由は、それぞれの選手の体調をしらないし、グランドの状況、監督の指示を全く知らないからだ。テレビ画面からは一部しか映し出されない。スタジアムで上から観戦していると全体の動きが見えてくる。そんな時に小さな画面の失敗を非難するのはお門違いだろう。

 ツィッターという不思議な電波でボケ防止とサッカーの面白い観戦を共有させてもらっている。

後半の見どころ

 前半の速い縦パスサッカーを見ていると疲れてくる。そんな時に古手のメンバーが入った。岡崎、本田、香川であった。彼らの動きは前半のメンバーが作り出した早い前へ向かってのサッカーの継続だった。ツィッターで本田、香川の再生もハリルホジッチ監督の使命のひとつとつぶやいたが、その通り彼らが持っている強運で立て続けにゴールを奪った。

 そして、まちまちに待った宇佐美の登場となる。「宇佐美デビュー待ってたよ!!」とツィートした。宇佐美の動きは良い。初の代表デビューなのにボールタッチは柔らかいし、大変落ち着いている。観客が宇佐美のゴールを期待している時に香川から絶妙のパスが通り宇佐美の初ゴールが生まれたと思った。しかしボールは右ポストに嫌われてしまう。宇佐美の代表初ゴールは次回に持ち越しとなったが見せ場を作った彼らに対して観客からは賞賛の拍手があった。

 最後にこのツィートを紹介して第302回のコラムを終わりたい。 「2週間でスピードと冒険という言葉を使って活性化させ勝利した成果はハリルホジッチ監督そのものだろう」「満足感ある疲れを今は感じている」

 追伸 W杯ロシア大会の次にあるカタール大会は冬季開催で正式に決定した。これで日本の代替開催案も無くなった。リオオリンピックアジア予選の初陣も昨日あって初戦マカオを7-0と勝利した。代表経験の南野がどう機能するのかがポイントであったが及第点だろう。