京都新聞社TOP

二つの代表戦 (連載第303回)

平成27年04月01日

※アジアのスパイス市場 暑い地域には欠かすことの出来ないのがスパイスだ。
※アジアのスパイス市場 暑い地域には欠かすことの出来ないのがスパイスだ。

日本代表対ウズベキスタン代表戦の疑問

 初めに今回のゲーム、JALがメインスポンサーになったチャレンジカップでゲームは調布の味スタでの開催だった。日本航空は一時の経営危機を脱してようやく軌道を取り戻してきたようであるが、長年続いているキリンのメインスポンサーの肩代わりをするまでに復活したとは思われない。今回の突然のスポンサーに驚きを隠せないでいる。また、会場は味の素スタジアムで開催されているが、国立競技場改修中の影響なのだろうか判らない。以前味スタでは数回観戦した経験はある。東京ベルディや東京FCのホームで駅から歩いて行ける距離で立派なスタジアムであった。私は今回、イベント性の観点からこの二つの疑問を持ってしまった。JALと味スタ。

 ゲームは5-1で日本代表が大勝した。久しぶりの大勝に喜んでばかりいられない。まず先発が先日のチュニジア戦から全員代わった。むしろ以前のアギーレジャパンに近いメンバーだった。今回の二試合ですべての選手を試すと言っていたことを思い出す。そして、リスクのあることを敢えてトライして勝利を目指すとハリルホジッチ監督は言っていた。

 私は今感じている。ハリルホジッチ監督はこの二試合で大きな賭けに出た。数試合を見て直観で選手を選考し若いフレッシュなチームとかつての古参のチームを作った。つまり代表を二チーム招集した。最初のチュニジア戦は若いチーム、二試合目は古手のチームで試した。若いチームには長谷部を入れて調整し、古手には青山を入れて新鮮味も加味した。

  大きな勝負は初戦に若手中心で行ったことだ。短期間で彼はチームを教育した。それは彼が外国人だったから選手は彼の言う事を実行した。特に若い選手は顕著だった。自分を代表に引っ張ってくれた恩人の言う事は絶対だ。川又や永井が良い例だ。彼は、早いサッカーを合言葉にした。奪ったボールは早く縦に出すこと、ルックアップは遠くを見る事、密集をショートパスで抜け出すのでなく大きい縦パスで抜け出すことなどを徹底させた。ボールを奪うためには球際の鋭さも強調した。フレンドシップゲームとは言わずに国と国との戦いだと説いた。

 これに奮起しない選手はいなかった。そしてゲームの後半で次々と新しい選手を起用した。香川、岡崎、本田などの古手の選手たちが若手に触発されて輝きを取り戻した。特に香川は中心的な働きを担う10番を復活させた。宇佐美と言う天才にチャンスを与えてその卓越した力を引き出した。

ハリルホジッチ監督が成功したのは

 彼が成功したのは二つの働きが大きい。一つは、中途半端な戦術ではなく徹底して行ったことだ。ゲーム中でも大きなジェスチャーを織り交ぜて大声で指示をだす。そこには通訳は存在しない。選手にはその怒りのジェスチャーで彼の意図するところが分かってしまう。要するにゲーム中に理路整然と話ても選手には伝わらない。良いプレーか悪いプレーかを知らしめるだけでいいのだ。

 二つ目は演出家であることだろう。彼は選手を鼓舞するためにいろんな手を使って調子に乗せた。解説者のセルジオ越後さんがトルシェ以来の演出家と評した。選手起用も慣れないポジションにしたことやゲーム中にブロックを下げて相手を誘ったことなど、彼は演出家のようにチームを操った。試合後の選手の輪の中でも彼は何かを仕掛けていた。選手の笑があった。黙って輪の外から腕ぐむ監督タイプではなかった。

 今回の二戦で彼は賭けに勝利したのである。しかし、良く考えてみるとフレンドシップゆえに選手6人の交代枠がある。だからいろんなことが試された。選手交代枠が三人で代表枠が23人のような公式戦ではどんな作戦を組むのだろうか。

 柴崎のシュートを岡崎がDFをブロックし、見届けて初ゴールを彼に献上した。こんな場面を私は初めて見た。宇佐美のあざやかなゴールもあったし、川又の執念のゴールもあった。しかし、過度の期待はご法度だろう。これは親善試合であるし引いて守備を厚くするチームには通じない。戦略的なチームは前半守備を厚くして0点に抑えようとする。後半カウンターで得点する方法だろう。今後ますます選手の競争を激化させて化学反応を楽しむことになろう。

もうひとつの代表戦

 心配の種はオリンピックアジア予選の渦中にあるU22の代表である。昨晩のマレーシア戦を1-0で勝って三戦全勝で一次予選をクリアした。しかし、中一日のスケジュールと荒れたピッチに最後まで苦しんだ。マカオ、ベトナム、マレーシアという弱いチームでさえ厳しい戦いだった。最終予選は年明けカタールで開催される。今回の一次予選では中東勢は入らない地域だったが最終予選では中東勢と韓国、豪州が加わってくる。

 最大の問題は三チームしかオリンピック行けないのである。その上完全アウエーの中東で中東の笛に悩まされるタフなゲームになることは間違いない。そう考えた時に今回のゲームからU22代表の弱さばかりが眼についた次第だ。

 最後に冒頭のスパイスは東南アジアのインド人街を訪ねた時の写真だ。独特の臭いが漂う暑くて喧騒な町で生き抜くためには強烈なスパイスの効いた料理を食べる必要がある。日本食のようなあっさり系では体力が持たない。若い世代にこれらのスパイスを食した生活を慣れさせる日常生活の改善も必要かもしれない。