京都新聞社TOP

スタジアム考(連載第317回)

平成27年7月18日

※全英オープンゴルフのセントアンドリュースゴルフコース。日本にない光景だろう。
※全英オープンゴルフのセントアンドリュースゴルフコース。日本にない光景だろう。

私のスタジアム考

 私はスタジアム建設と地域の活性化について十数年考えてきた。その最たるものが東京オリンピックのメイン会場である新国立競技場問題だろう。結論から言えば不要論者である。その起源は2002年W杯日韓大会でスタッフの一員として従事していた時、全国十会場をつぶさに見て回った結果に由来する。

 ほとんどにおいて初対面で感じたことは、コンクリートの塊の凄さだった。そして人口密集地域からはるか離れた不便この上ない土地にあった。二度目に訪問した時、アクセスの問題を真剣に考えた。それはチーム、選手をどのようにしたらベストの状態で出退場できるかということだった。私には観客のことは眼中になかった。それは私達の使命は大会を無事に終了させる事にあった。極端に言えば、競技場外で何が起こっていても選手とレフリーを無事に連れて来られたらゲームは成立するのである。この精神が私の絶対的な指針であった。

 結果W杯は運にも恵まれて無事に成功した。大会後にスタジアムを再訪した時、この巨大な建築物を目の当たりにして、その維持費の値段を目論んでだ。やはり年間一億は下らないだろう。十年で十億の計算になる。十億あれば立派な事業が出来るとも踏んでいた。そして次にプランナーとしてここで一体何が出来るのだろうかと考えを巡らす。そして行き着くところはスポーツ大会以外にないとたどり着いた。W杯よりすごいスポーツイベントをこれらの会場に誘致することは不可能である。例えそれに準ずる大会が誘致できても、その運営とセキュリティーに膨大な費用が必要になってくる。

 スタジアムは出来上がった時からが初問題のスタートなのだ。人々は出来てしまったらすぐに忘れてしまう。近くに住む人たちだって垣根の外から毎日望むことになってしまう。決して自由に出入り出来る事にならないのである。ただ単に安全上、警備上の都合で門は閉ざされてしまうのである。

 私はかつてイタリアとブラジルの有名なスダシアムを数か所ノーアポで訪問した。もちろん取材ではない。一ファンとして訪問したのである。それを拒絶する関係者は皆無だった。スタジアムにはアスリートと観客の歴史と想いが詰まっている。そのスタンドまたはピッチに立った時にひしひしと足元から感動が伝わってくるのである。

新国立競技場建設プランが白紙に

 時のトップが決断するまでは迷走をしてしまった。やはりトップが国民の前で白紙撤回を公言するまで止められないのである。一旦決めたことを撤回する勇気は膨大なものである。しかし過ちに気づいていながら、黙って見過ごす方がよっぽど悪い。これまで主幹の責任者たちの罪は大きい。そしてその人たちに進言しなかった担当者たちの無責任さは驚くばかりである。

 組織委員会は多くの人種の寄せ集めである。その中で立派な仕事をするには知識よりも信念が必要だ。多くのスタッフは派遣元を見ながら仕事をする。そして大会終了後の自分自身の処遇を気にしている。派遣先から戻ることは考えるなと言って送り出す上司はめったにいない。何でも情報はすぐに連絡するようにと言って送り出される。派遣者は組織の情報収集に奔走し上司は報告を待ちわびる。そして毎週連絡会議が派遣元で開催されるのである。

 これは図星であろう。一般企業も自治体も国の組織も大差ないと思っている。これが大会直前まで続くことになる。では誰が事業運営を行うのか? それは簡単であるコンペに勝った企業が実施するのである。組織委員会は膨大な対価の代わりに分厚いマニュアルとIDカードを手にする。そして、大会は成功したかの錯覚に陥るのである。

最後に

 リオオリンピック女子サッカーの枠は二枠だった。私は三枠だと思っていた。二枠はしんどい。アジアには、オーストラリア、中国、韓国、北朝鮮がいる。どの国も打倒なでしこジャパンを目指してやってくる。しかし会場地が大阪に決まった。これは追い風である。私にも観覧できる機会が与えられた。なでしこジャパンは半数を新人へとスイッチする必要がある。精神的に弱い選手にはその中から勝ち上がってくる必要がある。来月早々の東アジアサッカー大会は国内組で臨む。新しい選手と伸び悩む新人を再度見られる。彼女たちには最後のチャンスだろう。

 京都新スタジアムの予算154億円の予算措置が承認された。これから止めることは出来なくなった。J2の京都サンガのホームと言っても迫力のないキャチコピーとなってしまった。J3降格圏を彷徨っている。監督も交替した。サンガの監督の名前すら覚えていない。2018年の新シーズンには完成するが、その時サンガはJ1に返り咲いているだろうか?スタジアムは出来上がった時からがスタートである。スタジアムがあるから地域が活性化するとは限らない。地域が活性化する唯一の手法はチームが強くなることである。

 来る2022年カタールW杯について・・・世界一女性自身の形に似ていると言われているのがW杯スタジアムのデザイン案である。東京新国立競技場と同じ作者という。ネットで調べてみたらなるほどとうなってしまった。