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オリンピック感動ものでした (連載第368回)

平成28年8月21日

※リオオリンピックも閉幕へ コルコバートのキリスト像 ポルトガル独立100周年を記念して建立されたリオのシンボル。
※リオオリンピックも閉幕へ コルコバートのキリスト像
ポルトガル独立100周年を記念して建立されたリオのシンボル。

感動ものバドミントン決勝に400mリレー決勝

 テレビ画面の前でボルトの走りを尻目にケンブリッジに大声援を送った日本人は多かったことだろう。自分もまた「走れ~~、走れーー」「ガンバレニッポン」と夢中で第四走者に向かってゲキを飛ばしていた。その上、「勝てる勝てる金メダルだーー」なんてとんでもない事まで言っていたと思う。事実第四走者にバトンを引き渡された時ケンブリッジもボルトも同列になっていた。 何度もビデオを再生してみているが、決して飽きない。 それほど彼らは感動を与えてくれた。余韻は当分続くことであろう。

 バドミントンの女子ダブルスの決勝も同様だった。 はっきり言って、諦めていた日本人も多かったことだろう。あの逆転劇は筋書きのないドラマだ。真剣勝負でしか起きない想定外のドラマである。

 一点追加するたびにドラマの筋書きは変わっていく。 最後にどうなるか脚本家でも予想することは出来なかった。 解説者の元日本代表の選手が言っていたことが気になった。 彼女たちの勝因は大舞台で100%の力を出せるのではなく120%の力が出せる事だ。 実際そのとおり、100%の力だとフィジカルに勝る相手には勝てないだろう。 日本人はそのゲームで自分の力を高めていき120%まで高められなければ結局は敗退してしまうのである。だからかつてない力が必要なのである。 練習や国内の選手権では出来なかった技を本番でやれるかどうかだ。 そう考えるとサッカーは100%どころか60%程度でゲームに臨んでいた。 勝てるはずはない。もう一度頭を冷やして出直すべきだろう。

 有名な女子レスリングの母親が死んでも勝てと言ったと聞いた。 これは比喩かもしれないが、サッカー日本代表にキックオフ前のロッカールームで「死んでも勝ってこい・・・」なんて言えるだろうか? この時監督にも死にもの狂いの根性が必要だろう。それがないと言えない文言だ。 負けても大勢の出迎えが待っている成田空港に笑顔で帰国できる。 そんなことでは優勝の二文字を口に出すこと出来ない。 退路を断って旅立った人が勝ち進むことのを許されるのである。

競歩銅メダル危うしも陸連の対応で奪還

 三位でゴールインしたが四位のカナダの選手に接触したとして失格となった。かつてなら訳の分からないまま、正式な抗議も出来ずに時間だけが経過し銅メダルは失っていただろう。しかし、今回陸連はその抗議を覆す異議を申し立てて勝ち取った。 そして四位の選手から謝罪の意味を込めた挨拶もあった。

 私は過去のコラムでも書いた覚えがある。 サッカーでも抗議は必要だ。そしてそれにはルールがあることを知っておく必要がある。 抗議はルールに沿って素早くする必要がある。

 そのためには何といっても英語力が問われる。また事前の準備も必要である。 選手はゲームに夢中に専念すればよい。これらは事務方の責任で準備することだろう。 大抵の抗議は監督が声を上げることと、抗議文を英語で書いて所定の事務局に提出し受理させることである。そして間を開けずに問い詰めることだ。抗議文の返答の期日も確認すべきだ。 事務局の対応によったら提訴することも辞さないと言うべきだろう。 これを実現するためには事前に日本サイドのパソコンの中に抗議文のひな型を用意しておくことだろう。 あて先も事前に書き込んだ方が良い。細かい話になってしまった。 そうしたら問題が起こったらすぐに具体的反論も書き込んで文書を印字する。 白紙の日本協会のレターヘッドも用意しておき、あとはその場で代表者がサインをするだけだ。 以上の様な用意と優秀な通訳を同行させることある。 でないと時間だけが無駄に過ぎて抗議をするための許された時間が無くなってしまう。

 今回の陸連の対応は素早かった。実際に抗議文まで提出したかどうかは定かではない。 競技にはプレーのためのルールがある。そしてプレー後には事務対応のルールがあることをもっと勉強しておくべきだろう。 専門の国際スポーツ弁護士が必要になる時代がやって来る。

マラカナンの決勝戦 ブラジル悲願の金

 ブラジル対ドイツ因縁の決勝だった。 キャプテンでOA選出のネイマールのプレーが注目された。 このゲーム、私の想定以上にフェアプレーで終始している。そして前回コラムで言った通りFKとPKが勝敗を決めた。それもプレッシャーで押しつぶされそうになっただろうネイマールが決めた。 9万人の大観衆が歓喜したマラカナンの決戦はブラジルがドイツにリベンジして終わった。

 1-1の延長からPK戦に移る。息をのむPK戦は4人全員が決める。ドイツの五人目をOA枠で出場のブラジルGKウェベルトンがセーブする。そして最後に控えていたネイマールにサッカーの神様はチャンスを残してくれた。 大観衆の声援の中、ネイマールはきっちりとGKの反対側にゴールを決めた。 入り乱れて歓喜に酔いしれるマラカナンスタジアム。 マラカナンの悲劇はこれで粉飾された。 ウイニングボールをユニホームの腹の中に隠して妊婦の様なGKウェベルトンの姿が滑稽だった。

 振り返るとドイツの力ある攻撃は素晴らしかった。 ブラジルのわずかな隙間を通すパスワークも見事だった。 ボール一つ分の隙間にパスを通すネイマールの動きも冴えわたった。 この天才が躍動した大会となった。 再三にわたって決定的なスルーパスを送り続け、ゴール前に飛び込み、自陣ゴール前まで全速で戻る。時には執拗なラフプレーに遭遇し全国民の希望の星となって活躍したのである。MVPはネイマールだ。

 日本のサッカーが到達することが出来ない未知なる領域にブラジルサッカーは存在した。 三位決定戦はナイジェリアが取った。初戦当日ギリギリになって来伯した彼らの存在を忘れてはいなかったか?もう一度初戦の日本対ナイジェリア戦を見てみることが必要になった。 そこには間違いを犯してしまった日本代表の真の反省点が見えてくるだろう。

 そしてもう一つ忘れてはならない決勝戦があった。 水球男子の決勝はセルビア対クロアチアだった。 両国の憎しみの歴史はまだ新しい。友人同士、隣村同士がある日、殺戮の相手へと変化した。サッカーでも同様に隣国の対戦は世界から注目されている。 結果は前回優勝のクロアチアを11-7で競り勝ったセルビアが金メダルを勝ち取った。 セルビアにとっても悲願の金メダルだ。

 テレビでは先日の男子リレー400mとサッカー決勝の表彰式が始まっていた。 世界からマークすべきチームとして世界から称賛の嵐が吹き荒れる日本リレーチーム、 金メダルを胸に抱え、その輝きに不思議と天に向かって両手を突き出すネイマール。

 アスリートの神様はここリオのコルコバードの丘の上に確かに存在したのだ。