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何はともあれ勝ち点3 (連載第371回)

平成28年9月7日

※仏教国タイの地方寺院 冠婚葬祭のすべてに仏教寺院が関わっている。かつての日本の風景かも知れない。
※仏教国タイの地方寺院 冠婚葬祭のすべてに仏教寺院が関わっている。かつての日本の風景かも知れない。

ロシアW杯最終予選タイ戦で貴重な初勝利

 昨晩の注目すべき点は完全アウエーの蒸し風呂のスタジアムで2-0で勝ちきれたことだ。何はともあれ勝ち点3が取れた。しかし、よく注意して見ることが多い一戦だった。いつものごとく試合前の三つのポイントから検証してみよう。第一は超満員のタイ人サポーターで埋め尽くされたスタジアム。そして30度越えで湿度75%以上の蒸し風呂状態の体感。デコボコのピッチと水分を含んだ重い芝。ただ小雨が降りしきっていたのが幾分か体温を下げてくれた。幸いだった。かつての日本代表は東南アジアの気候にやられた。タイ戦でもインドネシアの地で大敗を期して敗退した遠い過去もある。もちろん相手も同様だろうが、日本人とタイ人とでは肌の汗腺の仕組みが違う。

 第二は先発メンバーが変わった。ハリルホジッチ監督は明らかにUAE戦で後半のメンバーを早々と先発で起用している。最初から裏へのスピードを重視している。そしてボランチに山口蛍を起用して守備を重視した。勝たなければならないプレッシャーの現れた先発メンバーだ。

 第三はレフェリーだ。またもや中東、イランの審判団だった。この主審はアジアでも特異な笛を吹く人として知られていた。PKを良く取ることでも知られている。つまり要約すれば偏屈タイプの人であった。自分の立場から判断する。すべてを自分が仕切るタイプだった。一方の見方では必ず他方の見方もできる。この場合大抵日本と違う見方をする人だった。ではなぜ中東の審判が多いのだろうか? その答えは簡単である。優秀な人材が東南アジアにはいないからである。彼らはFIFAの大会でもジャッジを任され立派に努めているのである。職業として確立することが少ないアジアのレフェリーでは貴重な人材なのだ。

 だから日本の選手が中東の審判団に合わせる以外ないのである。変なアピールをしつこくするものではない。その事実を協会で教えることが必要であろう。選手・監督と審判委員との定期的な交流は必要だ。

タイの誤った戦術

 タイは攻撃型の布陣で攻めて来てくれた。それ故に両サイドと後方にスペースが出来た。この点が日本にプラスとなった。むしろタイが引いて守備を固める。一発狙いのカウンター攻撃に終始したら、もっと苦しいゲームになった。タイは近年サッカーブームが続いている。日本のJリーグが始まったころによく似ている。クラブチームが出来て、外国から指導者を連れて来た。日本からの選手も多い。だから近代サッカーがスタートしてパスサッカーが充実して来た。だからかつての引いて守るサッカーでは選手も観衆も満足しなくなった。

 しかし残念なことに進化の途中である。中盤で日本から激しいプレッシャーを受けるとボールをコントロールできないでいた。その上、タイのストロングポイントは左サイドが起点で日本はそこを忠実に押えることに成功した。結果圧倒的なボール支配率で日本は勝った。

ハリルホジッチ監督の限界?

 先発の二人、原口と浅野の得点で勝ったことは監督の采配だったかもしれない。しかし、そんな評価は見当たらないと思っている。今回のグループリーグで唯一格下のタイが相手である以上、どこのチームもタイから勝ち点は取るに違いない。日本も勝って当然なのだ。しかし気候と荒れたピッチに中東の笛を見た時、幾分か不安は残った。

 UAE戦で幻のゴールを演出した浅野がしっかりと役割を果たした。彼は立派だ。それに代えて完全フリーで得意の左足なのに空振りで得点を外した本田、これまたフリーでゴール前からのシュートをミートのみに託し、振り切らない香川のシュートはことごとくGKが弾き飛ばした。ゴール前では真剣勝負だ。たとえ地雷が埋められていようがゴールに虎が住んでいようが体ごとゴールインする根性が必要だ。そしてそれこそがストライカーに与えられる栄誉なのだ。ベテランの二人には欠如していた。少なくともこのゲームにおいては欠損していた。

 その理由の一つは疲労だった。明らかに本田も香川も朦朧とした姿に見えた。全身から噴き出す汗と雨のしずくでずぶ濡れの姿からは雄姿には見えなかった。疲労の積み重ねで足元が重い。そしてゴール前ではもたついてしまった。

 それでは今日の締めくくりに入ろう。これが今日の大事なテーマになる。私たちは二試合続いて、ジャッジやプレーに対して慌てふためくハリルホジッチ監督を見た。そしてテレビ画面からも本田、香川の交替の時期が差し迫っているのは感じていた。しかし監督はこの二人を長い間交替させなかった。大勢が決まった後半40分にようやく本田を下げた。交代の時期は後半20分過ぎにあった。そして若い元気な人材を投入すべきなのだ。このゲームでハリルホジッチ監督の限界を垣間見た気がした。いままで絶対的監督として見えなかった壁が見えた気がした。エースを替えられない老監督の姿があった。

 W杯本戦よりも最終予選の方が厳しい。よく言われることわざだ。まだ始まったばかり、この戦いは一年続く。

A組 シリア0-0韓国、中国0-0イラン
B組 サウジ2-1イラク、オーストラリア1-0UAE

10月のアウエーのオーストラリア戦が前半の山場になる。