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クラブW杯準決勝鹿島が南米チャンピオン撃破 (連載第380回)

平成28年12月15日

※舞台になった吹田スタジアムの全景
※舞台になった吹田スタジアムの全景

サッカーは筋書きのないドラマ

 余韻は翌日も続いている。昨晩のドラマには台本は存在しなかった。私達が言いたいことはFIFAで初めてビデオ判定が採用されたこと。そしてそれがきっかけになって格下チームが格上チームを完璧に打ち負かしたことだった。

 最初は何が起こっているか分からなかった。たぶんスタジアムで観戦中のサポーターも同様だろう。テレビで主審がクローズアップされると彼はしきりにピンマイクで誰かと会話している。それは例のプレーが終わって長い時が経過している。主審は明らかに半信半疑でタッチの中央に向かって歩み寄りテレビモニターを確認した。そして何度かうなずくとゴール前のペナルティマークを差してPKを宣言したのだ。

 それは2プレー前の鹿島FKの際Aナシオナルのベリオが鹿島の西の脚をひっかけて倒していた。それがPKの反則と判断されたのであった。歴史的な判定がこの日下された。その舞台が吹田スタジアムであった。今後何年もの間、吹田スタジアムで語られる歴史の一コマとなったのだ。これでサッカーは大きく変わるかもしれない。GLT(ゴールラインテクノロジー)とVAR(ビデオアシスタントレフェリー)の二つの技術によって多くのチームは今後救われるだろう。それに反して見つからない反則で勝ち星を拾って来たチームは衰退していくことだろう。フェアプレーが得意な日本には追い風間違いなしである。

 そしてその後の鹿島の戦い方も素晴らしい一言に尽きる。後半、時間切れを焦って来たAナシオナルのお株を奪ったような遠藤の得点。こぼれ球をバックヒールで無人のゴールに流し込んだ。これがへたくそと南米から呼ばれた日本人が起こしたトリッキーなゴールなのだ。そしてタイムアップ直前起用された鈴木の初タッチがゴールして3-0と南米の雄を打ちのめしたのである。

真のヒーローはGK曽ケ端

 私は真のヒーローはGK曽ケ端だと思っている。ゲームの大半を守備にがまんした鹿島であったが彼はシュートを24本も防いでいた。彼は確実に取れる球だけ両手でキャッチし、それ以外はパンチングを駆使して守備をし、慌てた姿を一度も見せなかった。史上初のビデオ判定で一点を勝ち越しても曽ケ端のファインセーブがなかったら前半の内に逆転されていたのである。一旦逆転されたら南米チームの得意技である時間稼ぎで敗退は九分九厘の確立である。GKとセンターバックの昌司の献身的な守備意識が鹿島に勝利を導いた。

 敗戦の敵将は完敗に過信したことを認め、初のビデオ判定の犠牲になったと語っている。今夜の準決勝のもう一試合、ヨーロッパチャンピオンのレアルマドリードと北中米の雄クラブアメリカが対戦する。このゲームもビデオ判定の対象試合だ。何が起こるか分からない。いずれにしても決勝戦が楽しみだ。Jチームの歴史が塗り替えられた。