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忘れてはならない事(連載第397回) 

平成29年7月10日

ブラジルのイグアスの滝(上下二枚重ね) 高台から撮ったパノラマ写真で壮大さが解る。
ブラジルのイグアスの滝(上下二枚重ね) 高台から撮ったパノラマ写真で壮大さが解る。

忘れてはならない事

 W杯ロシア大会を一年後に控えて、日本代表が最終予選で四苦八苦している時に大事な事を忘れていた。それは南米最終予選の経緯である。思い起こしてみようか、前回のブラジル大会2014年のこと、自国開催のため予選を免除されたブラジルはドイツに7対1で敗退する。優勝候補筆頭のブラジルが屈辱的な点差で敗北したミネイロンの悲劇から三年が経過している。あの時は全世界がその悲劇を見守った。負傷欠場したネイマールの目前で次から次へと失点していく同胞の哀れな姿に、もうこの辺でレフェリーはタイムアップの笛を吹くべきだと思った。

 あの時からブラジルはどうなったのだろうか? すぐに監督交代が発表された。それは一度解任されたドゥンガだった。彼のやり方は体育会的な古いやり方だった。一言で言うと、現代にはマッチしない。彼について行く若者は極少だった。奈落のどん底に落とされた若きセレソンには心の傷を癒す優しさが必要だったと思っている。その低落ぶりはコパアメリカ大会の予選敗退と続いたのである。

チッチ監督登場

 1年後ようやくブラジル協会が動き出した。世界では無名に近いチッチの登場だった。チッチは56歳、コリンチャンスの監督をしたときにクラブW杯で優勝を勝ち取っていた。相手はチェルシーで、虎の子の一点を守り切って1-0で優勝する。決して派手な勝利ではなかった。彼は地道に選手とのコミュニケーションを取りながら時間をかけて説得していったと伝えられている。

 ブラジルサッカーの本来の姿は何だろうか? それは選手全員が攻撃も出来て防御も出来る。まるでサンバのリズムのように滑らかでスピードあふれる全員サッカーだった。今のブラジルはそのサッカーが蘇っているのである。

今春4試合を残して南米予選を突破!

 現在の南米予選の順位表を確認してみよう。
1位(本戦決定) ブラジル 10勝3分1敗(チリにアウェーで負ける)
2位 コロンビア 7勝3分4敗
3位 ウルグアイ 7勝2分5敗
4位 チリ    7勝2分5敗
5位 アルゼンチン6勝4分4敗
と続いている。南米から4.5枠。5位のチームがオセアニア代表とプレーオフをする。
 このままだとアルゼンチンがプレーオフということだ。

 ネイマールを中心にしたチームと言って過言ではない。しかしその背景にはネイマールや他の選手ともチッチ監督が進んで話し合って作ったチームなのだ。監督は選手の領域を尊重し自分の戦術を理解させる。簡単なようで実のところ一番難しいことをやってのけた初めての監督であるかもしれない。チッチが蘇らせた新生ブラジルはコンフェデレーションズカップを優勝した新生ドイツにどのようにリベンジできるのであろうか? 興味津々なロシア大会1年前なのである。