■京都・滋賀の防災特集 紙面連載

天井川改修の現状

 2012年8月、豪雨によって決壊した宇治市五ケ庄の天井川・弥陀次郎(みだじろう)川。一般的な河川の氾濫とは異なる天井川特有の被害と危険性を浮き彫りにした。安全対策の課題や市民の備えは。天井川は、滋賀県が全国で最も多く(81本)、京都府が続く。危険が指摘される中、天井川改修の現状を探る。

水位急上昇 危険読めず 多量の土砂 上から一気

 「洪水以前に堤防から漏水を確認したことはない」「決壊箇所付近での越水は見ていない」「大きな音が鳴った後、水と土砂が流れ込んできた」

 多くは住宅や道路よりも高い位置にある天井川。府の技術検討会で示された住民への聞き取り結果は、普段から住民の目に水が流れる様子が見えない一方、急激な流水量の変化が起こりやすい天井川特有の怖さを示す。宇治市五ケ庄の弥陀次郎川の場合は、どのような被害をもたらしたのか。

 府山城北土木事務所によると、一般的な河川の氾濫では水が下から次第にあふれるのに対し、弥陀次郎川で起きた災害では、多量の土砂が上部から一気に落ちてきた。住民は避難の判断が難しく、民家が密集していたことも重なり、被害が拡大したという。

 当時の空撮写真からは、市全域で浸水被害が出ているが、弥陀次郎川の周辺は土色の水につかっているのが分かる。同市危機管理課によると、五ケ庄地域の住宅被害の内訳は全壊7、半壊77、床上浸水145、床下浸水292戸。現地連絡所に寄せられた市民の声の大半が室内に流入した土砂の撤去を求め、「壁や床下、家具まで替えないといけない」と嘆く内容が目立った、という。

 府は住民避難対策として、府ホームページの「河川防災情報」コーナーで天井川の水位を10分単位で中継している。

 ただ、今年7月の台風11号では、システム上のトラブルで京都市などの一般河川の水位情報が表示されないケースもあった。天井川は小さな河川が多いため、過去のデータが少なく、水位が急激に上昇する傾向にあり、他の河川のような「氾濫危険水位」「避難判断水位」を設定できないという。

 府砂防課は「市民1人1人の備える意識が大切。普通の雨でも河川防災情報を見て、水位の上がり方に注意してほしい」と呼びかけている。

川底掘り下げ ハードル高く

 宇治市五ケ庄の弥陀次郎川は堤防が崩れ、濁流が川底より低い住宅街に流れ込んだ。

 弥陀次郎川は、幅が最大でも3・6メートルの小規模な河川。12年の決壊後、府が設けた学識者による「天井川に関する技術検討会」は、上流から流れた大量の石や木で河床コンクリートが損傷、被害が順次拡大して水が堤防を浸食した可能性が高いとした。

 府は、同様の形態の天井川について、川底を掘り下げて通常の河川にする改修事業を進めている。弥陀次郎川は、堤防が崩れた箇所を含む天井川部分約510メートルの工事を5月に完了、天井川状態が解消した。通路整備など本年度中の事業完了を目指す。防賀川(京田辺市)でも天井川区間約3キロのうち約2・5キロの工事を終え、河川課は「数年中に達成したい」とする。

 ただ抜本的な対策へのハードルは高い。

 弥陀次郎川も周辺の都市化で周辺に住宅が密集したため、1990年に始めた改修事業完了まで20年以上かかった。二つの川を含めた府内の天井川(23本)の半数は、鉄道や道路が川の下を走るほか、作業スペースの確保など工事に制約が多く、一般河川化を容易に進められない。

 そのため、府は天井川の危険度を判定し、優先順位を付けて補強や堆積土砂撤去など緊急対応を急ぎ、本年度内に終える見込み。

 これまで、水位計やカメラ、雨量計を新たに設置し、天井川を常時監視する体制を構築した。さらに情報を自治体に提供する「水防警報河川」に、天井川17河川を追加した。

【2015年08月25日(火)付京都新聞朝刊より】