大災害から命と地域をいかに守るかをテーマに、京都新聞社は22日、東北地方のブロック紙・河北新報社(仙台市)と共催し、京都市伏見区の向島ニュータウンで住民が東日本大震災の被災者らと討議する「京都むすび塾」を開きます。東日本大震災を経験した生の声に学びつつ、要援護者への連絡や誘導の在り方、平時の地域のつながりを話し合います。
 「むすび塾」は、河北新報が震災後、被災地からの防災発信を地元紙の責務ととらえて始めました。報道機関自らが地域に「狭く深く」働きかけ、より実践的な備えを考える巡回ワークショップです。地域に根ざす報道機関として思いを共有し、京都新聞と共催します。


つながり、要援護者救う

22日に京都むすび塾

京都新聞社と河北新報社(仙台市)が共催する避難ワークショップ「京都むすび塾」が22日、京都市伏見区の向島ニュータウンで開かれる。開催を前に宮城県の被災地を訪ねると、災害時における地域のつながりの重要性と難しさが見えた。

向島ニュータウン住民、提言聞きたい
津波の押し寄せた旧北上川を見つめる蟻坂さん。商業港だった石巻市では、昔から川と町の間に堤防がないのが当たり前だった(宮城県石巻市)

津波の押し寄せた旧北上川を見つめる蟻坂さん。商業港だった石巻市では、昔から川と町の間に堤防がないのが当たり前だった(宮城県石巻市)

 旧北上川沿いを歩く。地図に記された家や店は所々欠け、堤防を築く工事車両が砂煙を舞い上げる。宮城県石巻市はあの日、一瞬にして津波に飲み込まれた。

 川沿いに民家が並んだ同市八幡町では350世帯のうち8割以上が津波被害を受け、38人が亡くなった。民生委員蟻坂隆さん(64)は「今でも亡くなったみんなの顔が浮かぶ。沿岸では『空振り』の津波警報がよくあった。あの日も津波なんて来るわけねえって、逃げねがったんだべなあ…」

 市が町内会ごとにつくった「防災ネットワーク」は要援護者1人に2人の担当者を決めていた。津波発生時、町内会の要援護者17人のうち15人が担当者やたまたま通った住民、家族によって救われた。

 ただ、当初蟻坂さんは集計するのをためらった。

 助けに行けなかった人を責めることにならないか。葛藤を抱えて約2年。聞き取ると、自分が大変な状況にもかかわらず人のために駆けつけた勇気が15人もの命を救っていた。

 「防災ネットは義務のない、近所付き合いの延長にある関係。支援をお願いするのは命を危険にさらせということで、震災後は頼みづらい」と蟻坂さんは漏らす。それでも「行ける人が助けに行くしかない。援護者も自助の努力を最大限せねば、支援者なんて誰も来なくなる」。事前の決めごとだけに頼らず、声を掛け合って避難する地域に。蟻坂さんは震災後、住民のサロンや福祉避難所の設置を目指して尽力している。

 高層団地に約1万3千人が暮らす向島ニュータウン。車いす専用住宅に46世帯が入居し、中国残留孤児で永住帰国した人と2世ら、言葉の壁がある人も多い。災害時に要援護者をどう守るかが課題だ。

 向島駅前まちづくり協議会の福井義定会長(73)は「個人情報の把握に限界があり、安否確認の方法さえ徹底できない」といい、むすび塾で東北の被災者と議論を交わすことを防災意識向上のきっかけに、と期待する。

 車いす専用住宅で暮らす矢吹文敏さん(70)は「停電時の移動手段など現実的な提言を聞きたい。助けを待つだけでなく、われわれも地域と関わって何かしたい」と話している。

地域防災「狭く深く」

 東日本大震災では多くの尊い命が奪われた。東北のブロック紙である河北新報社(仙台市)は震災後、巡回ワークショップ「むすび塾」や避難訓練「カケアガレ!日本」を展開し、「いのちと地域を守る」をテーマに防災・減災キャンペーンに力を注いでいる。河北新報社防災・減災プロジェクト委員会の武田真一事務局長に思いを聞いた。
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 震災前の防災報道の反省が出発点だ。震災により発行地域で2万人近い犠牲が出た現実を直視し、半年後に被災者を対象にアンケートを実施したところ、「震災前の啓発報道が津波避難に役に立った」という回答は3割弱にとどまり、「広く浅く」対策を紹介する姿勢の転換を迫られた。

 報道機関自らが地域に「狭く深く」働きかけ、ともに考える報道が必要と考え、巡回ワークショップ「むすび塾」を始めた。月に1回、町内会や職場、学校など小集団に呼び掛け、専門家と必要な対策を探っている。これまでに地元東北をはじめ国内外で40回開催し、震災月命日の毎月11日に詳報を掲載している。

 地元紙が連携して地域防災の実践的な啓発に取り組む京都むすび塾の意義は大きい。要援護者の避難は震災被災地でも大きな課題になった。教訓を伝え、津波被災に限らず、災害犠牲をなくすためにできることをともに探りたい。

【2015年2月4日付京都新聞朝刊掲載】

東日本大震災を忘れない~被災体験を聞く会

京都新聞社と河北新報社は「いのちと地域を守る」をテーマに東日本大震災の経験を共有するため、体験に学ぶ講演会を企画しました。
障害者や医療的ケアが必要な方の避難誘導、日本語に壁がある方への情報伝達など、京都でも大きな課題となっているテーマも語っていただきます。

   
丹野祐子 さん
閖上遺族会会長 中学生の長男を亡くした思いを語り継ぐ
安部弘章 さん
入院患者ら300人が3日間孤立した南浜中央病院事務部長
佐々木アメリア さん
国際結婚したフィリピン出身女性のまとめ役/南三陸町
日時 2月21日(土) 午後5時30分~午後7時
場所 京都新聞文化ホール
京都市中京区烏丸通夷川上ル(地下鉄丸太町駅すぐ)京都新聞社7階
主催 京都新聞社、河北新報社
後援 京都府、京都市
参加費 無料
お申し込み ファックス075-252-5454 または musubi@mb.kyoto-np.co.jp
「被災体験を聞く会」参加希望と明記の上、お名前と住所をお知らせください。
お問い合わせ 075-241-5438(京都新聞報道部)