Kyoto Shimbun 1997.6.17

 重油流出事故から半年
 丹後の海は、きれいになりました!

 きれいな海に戻りました。ぜひ遊びに来てください―。日本海のタンカー重油流出事故で始まった今年も、海水浴シーズンが目前。丹後の各海水浴場も来月一日、二日に海開きをする。地元住民やボランティアらの努力で、場所によって若干の差はあるものの、浜辺は事故前の状態にほぼ回復。風評被害をはねのけ多くの人に来てもらおうと懸命だ。
(宮津支局 日下田貴政)



 海開きを前に観光PR

 今月十二日、京都府丹後町の「道の駅てんきてんき丹後」で、丹後半島沿岸の久美浜、網野、丹後、伊根の四町合同観光キャンペーンの打ち合わせが行われた。合同キャンペーンは初めてで、観光協会、観光振興会の幹部五人と大阪の広告代理店担当者らが出席した。

 「今年はこちらから積極的に仕掛けて、お客さんを呼び戻したい」と、発起人の下岡正二・丹後町観光協会事務局長。重油事故で有名になった丹後を、いい意味でも知ってもらおうと、スポーツ新聞での全面広告や四町にまたがるスタンプラリーの実施など、これまでにない取り組みに向けて準備を進めている。

丹後の砂浜は見違えるほどきれいになった
(京都府網野町の琴引浜)
 各町と府の災害対策本部が先月下旬までに閉鎖され、四カ月以上に渡った事後処理に一定の区切りがつけられた。いま、関係者が心配するのは「風評被害」。宿泊施設の予約状況は例年より湿りがちだ。海水浴客が遠のくことを心配して、また、ボランティアへのお礼の意味も込めてさまざまな取り組みが計画されている。

 久美浜町では、町外から訪れた一万人近いボランティア全員にお礼の絵はがきを出すことにした。青い海のカラー写真の裏側に、「みなさんの献身的な協力に支えられて、ほぼ元通りの美しい海岸を取り戻すことができました」「きれいにしていただいた海岸へ、ぜひお越しください」と書いている。

 また、同町の小天橋観光協会は、今月下旬に京阪神で行うPR活動の際に、夏の平日に限った「一泊二食付き宿泊券」を千枚、無料配布することを決めた。加盟旅館・民宿のうち三十軒ほどが賛同したもので、山田陽一専務理事は「券をもらった人が家族や友人を誘ってきてくれたら」と波及効果に期待する。

 油の事故を機に、環境やごみ問題について、沿岸住民の意識が変わってきた。十年前に発足し、網野町の琴引浜の保全活動を行ってきた「鳴り砂を守る会」の松尾庸介会長は、「鳴き砂はこれまで町の財産だと思ってきたが、今では、日本全体のもの、私たちはそれを預かっているのだと意識するようになった」と話す。同浜に全国から集まった約一万二千人のボランティアの活動を目にして、もっと浜を大事にしなくてはという思いに駆られたという。

 「鳴き砂」は波打ち際の砂が、乾いた時に鳴りやすい。松尾会長に浜を案内してもらった日も、靴の裏で砂をなぞったり、手で砂をなでると「キュッ、キュッ」と小気味のいい音がした。事故当時は多くの油が飛び散っていた土手べりにはハマヒルガオが紫色の花を咲かせていた。

 「よくここまできれいになったと思う。小さな油の粒などで水着が絶対に汚れないとは言えないが、みんなで一生懸命に掃除したので、ぜひ遊びにきてほしい」と松尾会長。多くの関係者に共通する思いだ。

 待ち遠しい海開き。今年の夏は、きれいな海があることのありがたみや、その保存方法についても考えを巡らせたらどうだろう。


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