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京都から「霧」消の危機 湿度低下原因、農産物の味にも影響

丹波高原を覆った雲海(2014年10月8日午前6時半ごろ、京都府京丹波町下山・丹波広域基幹林道)
丹波高原を覆った雲海(2014年10月8日午前6時半ごろ、京都府京丹波町下山・丹波広域基幹林道)

 〈村雨(むらさめ)の露もまだひぬまきの葉に 霧たちのぼる秋の夕ぐれ〉。古くは百人一首に詠まれたように、秋が深まると京都盆地はよく霧に包まれていた。しかし、都市化と温暖化は京都の秋の風物詩を霧消させてしまうかもしれない。

 霧は空気中の水蒸気が冷えて凝結し、小さな水滴となって漂う現象だ。気象庁は「水平方向に見通せる距離が1キロ未満の状態」と定義している。

 京都地方気象台によると、寒暖の差が激しく、近くに川があるほど霧は発生しやすい。京都盆地は宇治川、桂川、木津川の三つの川が流れ、底冷えする気候で霧の多発する地形という。実は戦前、京都で霧日数が年100日を超える年はざらだった。1934年には125日と、1年の3分の1にも達した。

 風情がある京都の霧を、俳人は句にしてきた。

 足もとや霧晴れて京の町見ゆる(正岡子規)

 鳥啼(な)くや狭霧(さぎり)うするゝ金閣寺(日野草城)

 冬霧の京都の町や樂(らく)近し(初代中村吉右衛門)

 だが現在、京都市内で霧を見かけることはほとんどない。京都の霧は34年以降、10年間当たり10・8日の割合で減少。21世紀に入ってからは、わずか2日しか観測していない。同気象台は「都市化で空気の湿度が下がってきていることが影響している」と分析する。

 関西現代俳句協会の俳人鈴鹿呂仁さん(66)=中京区=に霧の減少を伝えると、「そう言えば、近年、京都市内で霧を詠んだ句は見かけません。季節感は大切だが、自然には逆らえないので仕方のないことです」と返ってきた。

 「丹波霧」で知られる亀岡盆地でも、霧の発生は激減している。

 京都府農林水産技術センター農林センター(亀岡市)によると、1950~59年の年間霧日数が平均61・9日だったのに対し、昨年は22日。この20年間では33%減った。

 霧の減少は日照量の増加や交通事故の減少につながり、日常生活には朗報だ。一方で丹波特産のクリや黒大豆、小豆の生育には好ましくない。

 同センター作物部長の蘆田哲也さん(51)は「夜に冷え込むことでクリなどに甘みとうまみが蓄積され、霧の水分が葉に供給されることで品質が良くなる」とした上で、「地域特産物は昔の気候に応じており、気象の変化で作りにくくなるかもしれない」と話す。

 対策に乗り出した農家もある。京都府丹波くり研究会会長の山内善継さん(74)=京丹波町市場=は、父親から「霧が濃い年ほどおいしくなる」と聞いて育った。霧が年々薄まっていることにも気づいていたといい、先日、風味アップを見込んで大型冷蔵庫を購入した。収穫後、低温で2、3週間置いておくと、甘みが増すという。

 「よりおいしくなるためなら人為的でもいい。丹波のイメージ通りの味覚を消費者に届けたい」と山内さん。丹波ブランドの維持、発展を目指して模索は続く。

【 2016年09月05日 17時00分 】

ニュース写真

  • 丹波高原を覆った雲海(2014年10月8日午前6時半ごろ、京都府京丹波町下山・丹波広域基幹林道)
  • 順調に育つクリを眺める山内さん。霧の減少を受けて模索が続く(京都府京丹波町市場)
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