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社説:受動喫煙防止 もう先送りは許されぬ

 受動喫煙防止を巡り「決められない政治」が続いている。

 対策強化に向けて政府が打ち出した屋内原則禁煙に自民党の一部議員が反対し、再三、折衝を重ねたものの妥協点を見いだせない。健康増進法改正案は国会に提出できず宙に浮いたままだ。国民の健康に関わる重大事にもかかわらず、対策強化に後ろ向きな自民党は時代の流れを見誤っていると言うしかない。

 政府は先ごろ、予防と検診の強化を柱とした第3期がん対策推進基本計画を閣議決定した。ただ焦点の一つだった受動喫煙にさらされる人の割合をゼロにする目標設定は断念した。並行して議論してきた受動喫煙対策を強化する法改正案の調整が難航しているためだ。

 第2期がん計画では受動喫煙を「2022年度までに行政機関と医療機関は0%、家庭は3%、飲食店は15%に減らす」目標を掲げてきた。厚生労働省の専門家会合は第3期計画に「家庭や飲食店でも受動喫煙ゼロ」を明記するよう求めている。

 副流煙を吸い込む受動喫煙は、煙の量は少なくても毒性物質の濃度が高い。肺がんや心筋梗塞などのリスクを高め、受動喫煙が原因で亡くなる人は国内で年間に推計1万5千人と交通事故死の約4倍に相当する。重く受け止めねばならない。

 政府は「望まない受動喫煙をなくす実効性のある健康増進法改正案を、可能な限り早期に国会に提出したい」(加藤勝信厚労相)との意向だが、これでは本気度に疑問符が付く。

 そもそも受動喫煙の対策強化は、国際的な潮流と言える。英国など50カ国近くが法律で公共の場所全てを屋内禁煙にしている。日本の対策は国際的に「最低レベル」に甘んじてきた。子どもを含めたばこを吸わない人の健康をどうやって守るか、日本人の良識が問われている。

 20年には東京五輪・パラリンピックが開かれる。「たばこのない五輪」は、今や世界の常識だ。国際基準にのっとった屋内完全禁煙を実現することは開催国の責務であるのに、無煙五輪に赤信号がともり始めた。

 法案化で焦点となっているのは、喫煙を例外的に認める飲食店の線引きだろう。厚労省は激変緩和措置が終了後、喫煙を認める例外を約30平方メートル以下の小規模なバーなどに限定したい考えだ。これに対し、自民党は受動喫煙対策の必要性を認めつつも、店頭に「喫煙」「分煙」と表示した上で、さらに例外を広げるよう求めている。

 規制は明快であるべきで、いったん例外を認めると、際限なく広がりかねない。後退に後退を重ねては国民の健康を守る効果は期待できない。

 喫煙権や営業権を軽視するわけではない。健康を損なう恐れがある以上、いや応なく他人のたばこの煙にさらされない権利は、より尊重されるべきであろう。

 五輪開催地の東京都は独自に公共施設や飲食店の屋内を原則禁煙とする条例制定を目指している。しかし競技会場は都内だけではなく、全国一律の対策が望ましい。特別国会は会期が限られるとはいえ、これ以上法案提出の先送りは許されない。

【 2017年11月05日 12時07分 】

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