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29歳で自死、日本社会への問い 元京大院生の遺稿集

出版記念会で飾られた山根さんの遺影(京都市上京区)
出版記念会で飾られた山根さんの遺影(京都市上京区)

 2012年に29歳で自死した京都大大学院生、山根実紀さんの遺稿集が出版された。「活動家であり、研究者」を自称した山根さん。京都の夜間中学で学ぶ在日朝鮮人の高齢女性に話を聞き、朝鮮学校の無償化除外に反対するなど、行動的な姿は多くの仲間の心に刻まれた。生の声を出発点にした大学院時代以降の論考やエッセーが日本社会の在り方を問いかける。

 京都市内であった出版記念会に山根さんと交友があったたくさんの人々が訪れた。龍谷大大学院時代に指導教官を務めた田中宏・一橋大名誉教授は「彼女が残した原稿の数々は日本にインパクトある内容だと思う」とあいさつした。

 神戸市で生まれた山根さんは龍谷大法学部に進学。世界の貧困や環境問題を考えるサークルを設立し、代表になった。大学院時代に夜間中学の洛友中(京都市下京区)を学習補助のボランティアとして訪れ、生徒たちの聞き取りを始めた。

 2006年には朝鮮総連への強制捜査などに対する抗議デモに参加し、朝鮮学校と交流する学生ネットワーク「FACE project」を立ち上げた。京大の大学院に移り、教育学研究科で学んだが、心身の不調で事実上の休学状態になり、学業の再開を目指していたという。

 京都の大学時代に出会った大野裕紀子さん(35)は、東京の映像制作会社に勤める傍ら山根さんの足跡をたどる映像作品をつくっている。「彼女の死を聞いて、すべてに全力で取り組む彼女にも弱い部分があったと知った。なんで気づいてあげられなかったのか」と自問自答を繰り返す。

 遺稿集「オモニがうたう竹田の子守唄」は、山根さんを知る研究者らが編さんした。収録された論文からは、夜間中学で出会った在日朝鮮人女性に寄り添いながらも、そうした日本語教育の場に潜む支配性を見いだし、現在が植民地時代と地続きであることへの疑問が提起されている。編集委員会は「この本で日本の排外主義を見直すきっかけにしたい」としている。

 インパクト出版会。3240円。

【 2018年02月05日 17時00分 】

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