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党首兼任で原発ゼロ挑戦 平成の滋賀県政、嘉田由紀子知事

「卒原発」を掲げ、新党「日本未来の党」結党を表明した嘉田由紀子知事+(2012年11月27日、大津市内)
「卒原発」を掲げ、新党「日本未来の党」結党を表明した嘉田由紀子知事+(2012年11月27日、大津市内)

 <平成の滋賀県政 嘉田由紀子知事(2006~2014)>

 「琵琶湖を守りたい。その一心だった」

 衆院選公示が1週間後に迫った2012年11月27日。琵琶湖を望む大津市内のホテルで、滋賀県知事嘉田由紀子は「卒原発」を旗印とする新党「日本未来の党」の結成を表明した。

 隣接する福井県に集中する原発の事故から近畿1450万人の命の水源を守る―。一晩で書き上げた「びわ湖宣言」に思いを込め、「党首」と「知事」の二足のわらじに挑んだ。

 11年3月の東日本大震災後初の国政選挙。嘉田は福島第1原発事故によって住民の大半が避難した福島県飯舘村を第一声の地に選んだ。「人っ子一人いなくなった被災地の苦しみを全国に発信したかった」。雨の中、報道陣に向かって「原発ゼロ」を叫んだ。

 民主党政権は5カ月前、事故後停止中だった関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の再稼働に踏み切った。抜本的な安全対策やエネルギー政策の道筋を示さずにいた。

 嘉田の無謀な戦いは、「国民の生活が第一」代表小沢一郎との出会いから始まった。衆院に解散風が吹き始めた同年秋、小沢の誘いを受けて2度にわたり京都市内で会談。「新党を立ち上げてくれ」と何度も頼まれたが、嘉田は「県政を預かっている」と断った。

 首相野田佳彦は11月16日、消費税増税を巡り衆院解散を表明した。8日後、嘉田は三たび小沢と京都で会う。脱原発票の受け皿がない―。同席したNPO法人環境エネルギー政策研究所所長飯田哲也にも「原発を争点化するには今しかない」と背中を押された。

 嘉田の頭をよぎったのは、新聞で見た脱原発派の国会議員一覧。100人を超す議員が死屍(しし)累々になる―。「そう思った瞬間、スイッチが入った」。06年県知事選で立候補を決意した時と同じ感覚だった。

 だが、「政治とカネ」問題を抱えていた小沢への批判は想像以上に強かった。他党との候補者調整に費やす時間もなかった。県議会では二足のわらじに対する批判を浴びた。

 「原発政策を本当に変える気があるなら知事を辞めるべきだ」「知事でいてこそ嘉田。県民を裏切るのか」。身近な支援者の声も割れた。結果は惨敗だった。

 嘉田は「あれで原発反対派の勢力がそがれた。大きな責任を感じる」と振り返る。「卒原発」という言葉を譲り受けた元滋賀県知事武村正義からは「相談されたら止めていた」と、小沢との協力が失敗だったと指摘された。それでも「後悔は全然していない」と言い切る。

 原発政策は今も県政の重い課題として残る。福井県では5月上旬、11年秋以来となる4基目の原発が再稼働した。「ひたすら事故が起こらないことを祈るばかり」。嘉田は大津市の自宅前の琵琶湖畔で毎朝、湖の水を飲みながら思う。

 ■「民意」支えに政策転換

 2006年滋賀県知事選で初当選した嘉田由紀子氏(2期8年)は、国や地方の財政健全化が政治課題となった時代を背景に「将来世代につけを回さない」「もったいない」と訴え、県民から高い支持を得た。着工した大型公共事業の中止やダムだけに頼らない「流域治水」を推し進めるなど、前例のない政策に果敢に挑んだ。

 新幹線新駅(栗東市)と県内六つのダム建設は「必要性、緊急性が低い」として相次いで中止、凍結した。「行政の継続性」を求めるJRや国、地元住民ら多様な利害関係者への説明や交渉に追われたが、「民意」を盾に粘り強く実現にこぎつけた。新駅跡地には企業を誘致した。

 一方で、治水政策などを巡り県議会最大会派の自民党との対立は長期化した。少数与党だったため県議会は度々紛糾。ダムだけに頼らず都市計画や避難態勢の整備などで洪水から命を守る流域治水推進条例を制定したが、国や市町とのあつれきも絶えなかった。

 琵琶湖環境への思いは人一倍強かった。県琵琶湖研究所や県立琵琶湖博物館の職員として30年以上にわたり琵琶湖研究に携わり、二酸化炭素の半減を目指す低炭素社会づくり推進条例の制定や水質メカニズムの解明にも力を注いだ。

 原発政策では「被害地元」の概念を提唱し、国に事故時の放射性物質の拡散方向を予測する「SPEEDI」の公開を要求した。立地自治体以外への公開を断られると、県琵琶湖環境科学研究センターで県独自の拡散予測の実施を決断。社会的混乱をもたらすと強い反発もあったが、県民とリスクを共有する必要があると公表に踏み切った。

 湖国初の女性知事としても独自色を発揮した。育児中の母親の就労を支援する「マザーズジョブステーション」を開設するなど、仕事と子育てを両立させてきた経験を政策に生かした。

 大戸川ダム(大津市)の建設「凍結」に向けて下流府県知事と連携したり、自らの考えに賛同する地方議員を育てる政治塾を開設したりするなど、政治的な発信も活発だった。10年知事選では史上最多の42万票を獲得した。

=敬称略、3回続きの3回目。

【 2018年05月31日 19時35分 】

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