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カヌー通勤、伝説の男は今 35年ぶり雑誌に再掲載

「瀬田川は風も穏やかで気持ちよかった」とカヌー通勤を振り返る神吉さん(大津市、琵琶湖カヌーセンター)
「瀬田川は風も穏やかで気持ちよかった」とカヌー通勤を振り返る神吉さん(大津市、琵琶湖カヌーセンター)

 スーツ姿でカヌーに乗る男。1981年にアウトドア雑誌の創刊号を飾った写真が昨年、35年ぶりに再掲載され、そのさっそうとした姿が話題を呼んでいる。対岸の職場に向かう時の写真という。大津市の瀬田川河畔でカヌー製造業を営んでいたという伝説の男は今も“カヌー出勤”を続けているのか。会いに行った。

 ポマードで整えた髪に口ひげ。まるで男性化粧品の宣伝のような写真は月刊誌「BE-PAL」(小学館)の創刊号に載った。特集企画で「スーパーな男たちの、ビッグなアウトドア・ライフ!」を紹介している。そこで、作家の椎名誠さんや北海道・富良野で暮らし始めた脚本家の倉本聡さんと並んで取り上げられたのが神吉柳太さんだった。

 ■サラリーマンを尻目に

 見開きの約3分の2を占める写真の横に「会社は向う岸。で、通勤は毎日カヌーです」の見出し。当時40歳。「早朝、川岸の道路をあくせくと駅に向かうサラリーマン諸氏を尻目に、彼は自宅からブルーのレットマン・カヌーを引っぱり出し、悠然と川面に浮かべるのだ」と紹介されている。

 JR堅田駅近くのカヌー販売店「琵琶湖カヌーセンター」で神吉さんに会った。76歳。眼光鋭い写真の印象はなく、穏やかな語り口で当時を振り返った。

 「あのスーツ姿は編集長から『その方が様になる』と言われて特別に着た」と笑って明かしながらも、雨の日以外は普段着に救命具を付けてカヌーで15分かけて対岸にある自身の工房に出勤していたと語った。「車だと遠回りだし、風の中を進むのが楽しくてねえ」

 神戸市出身の神吉さんは大学卒業後、大阪のコンピューター会社で働いた。「毎朝、満員電車に揺られていました」。やがて趣味で始めたカヌーにはまり、「好きなことをしていきたい」と脱サラ。掲載の4年前に瀬田川河畔に工房を建て、カヌー出勤を始めた。「当時はカヌーもまだ珍しく、創刊に合わせて変わった人を探していたようやね」

 ■今は車

 写真は話題を呼び、カヌー人気の火付け役に。「日本経済が上向く中で自然への憧れも増していた」。5年ほどカヌー出勤を続けたが、仕事が忙しくなり、車での出勤になった。

 今は輸入販売と体験教室を中心に手掛ける。「娯楽が多様化し、浅く広くの時代。でも、カヌーの理解は深まった」と喜ぶ。

 昨年の「BE-PAL」11月号に創刊35周年記念で創刊号のより抜き記事が付録として載り、若者からも反響があったという。「自然とふれあう喜びが広がるきっかけになれば」。物の豊かさにひた走った時代、自由な生き方を進む姿を捉えた写真の輝きは今も失われてはいない。

【 2017年12月04日 17時00分 】

ニュース写真

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