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京都の路上、今も面白発見 「新しい骨董」の3人

「京都おもしろウォッチング」の表紙に写真のみ掲載されている「角石」を発見した!
「京都おもしろウォッチング」の表紙に写真のみ掲載されている「角石」を発見した!

 1986年1月、街の探索を楽しむ「路上観察学会」が生まれ、故赤瀬川原平さんら5人が冬の京都を縦横に歩いた。あれから30年。「新しい骨董(こっとう)」と名乗るグループの個性派の男3人が京都を訪れ、路上観察学会編の「京都おもしろウォッチング」(新潮社)を片手に街を歩いた。路上観察学会の精鋭たちがこの街で“発見”した不思議なものを、果たして3人はどこまで見つけられたのか。

■探索から30年、軌跡たどる

 路上観察学会は、2014年10月に亡くなった前衛芸術家で芥川賞作家でもあった赤瀬川原平さんや建築史家の藤森照信さん、イラストレーターの南伸坊さんらによって結成された。普段は何げなく通り過ぎてしまうが、よく見るとちょっと不思議で変なもの。そんな身の回りの“?”を面白がる試みだった。

 一部が壁を突き抜けて建物にうずまる鳥居、みんなの自転車が同じ道を通るためにできた京都御苑内の「細道」…。5人は、長い時の営みが現代と同居した京都を舞台に選び、さまざまな発見をした。その成果を豊富な写真とともに紹介したのが「京都おもしろウォッチング」だ。

 それから30年が過ぎた。今、あらためてその軌跡を追ったのは「新しい骨董」という名のグループを結成したばかりの3人だ。

 独自の服を作りながら、原爆が投下されて間もない広島に立っていた書店を追跡調査する山下陽光さん(38)、日本の植民地時代の遺構として残る海外の鳥居や国内各地に残存する軍事施設を写真で撮影してきた下道基行さん(37)、アート系出版の編集や各地の芸術祭に携わるフリー編集者の影山裕樹さん(33)。今年の国際芸術祭「さいたまトリエンナーレ2016」に出展が決まっている。

 居住地も活動分野も異なる3人がグループをつくったのは、自分たちが純粋に楽しいと思えることに取り組もうとした結果だという。山下さんは「地方の町おこしを狙った芸術祭で地元の新たな魅力発掘を依頼されて、それは面白いんだけど、税金を使って地域の悪口も言いにくいし、窮屈な思いがした」と振り返る。

 「新しい骨董」。相反する言葉の組み合わせであるグループ名には、長い時間を経て価値を帯びる「骨董」的な現象や事物を、今の視点でインターネットなど新たな技術も駆使して捉え直す意味合いが込められているようだ。そして、そんな試みの先達である路上観察学会の軌跡に少しでも触れようと、3人は昨年暮れ、京都に集合した。

■大人も興奮する出合い

 3人は「京都おもしろウォッチング」の写真に捉えられた物を追い求めた。

 基本的にバラバラで街に出た。先達の軌跡をたどるだけでなく、新たな発見もありえる「旅」は30歳を過ぎた大人をも高揚させる。「まるでオリエンテーリングをしている気分」(影山さん)が男3人を師走の寒風が吹く街に駆り立てた。

 掲載されている写真のほとんどには詳しい場所は記されていない。無作為に歩くにはあまりに広い京都。そこで、3人はインターネットを活用した。事前に短文投稿サイト「ツイッター」などで検索し、路上観察学会による「発見」の近況情報を収集した。

 その結果、中には30年の月日の中で形を失ったものもあったが、今も変わらず残るものが見つかった。表紙に写真が載っているだけが手がかりの人の顔をしたような「角石」を発見した下道さん。「掲載写真を頭にたたき込んで学会の人たちが歩いたらしい道を動いていくと何かしらに出合えた」と語った。

 同書には赤瀬川さんらが歩いた道筋も特段説明はない。山下さんは、彼らがどんなルートを歩んだのかにこだわり、掲載写真に映り込んだ手がかりを基に歩いて「おおよそ分かった」と興奮ぎみに話した。

 「亡くなった赤瀬川さんがこの道をこう曲がったと思いながら同じようにその道を曲がると、まるで自分が赤瀬川さんであるかのような感覚になった。彼らが何を見たということだけでなく、見た上で何を取り上げなかったかもうかがえた」

 3人の冬の旅は、路上観察学会の面々が見た光景だけではなく、何を面白がり、何をつまらないと感じるかという、彼らの内側に近づく行程でもあった。

 <かげやま・ゆうき>1982年東京都生まれ。東京都在住。出版社勤務を経てフリーに。アート、カルチャー書の出版プロデュース・編集を行いながら、近年は全国各地の芸術祭やアートプロジェクトに編集者として関わる。著書に「大人が作る秘密基地」など。

 <やました・ひかる>1977年長崎県生まれ。長崎県大村市在住。東京で古着屋経営などを経て、今は「途中でやめる」という名前の服を発表するかたわら、戦後原爆ドームの前にできたアトム書房の調査など、インターネット上に転がるユニークな情報を探り発信する。

 <したみち・もとゆき>1978年岡山県生まれ。名古屋市在住。武蔵野美術大造形学部油絵科卒業。写真と文章を表現手段として、日本各地に残る軍事施設跡の調査・撮影や、日本の植民地時代の遺構として残る鳥居の撮影を手掛け、展覧会や著書で発表する。

【 2016年02月05日 18時51分 】

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