出版案内
福祉事業団

少女漫画の黎明期、革命に挑む 竹宮恵子さんが自伝

自伝をまとめ「若い時は分からないことばかりで、この年になって書けた部分もある。若い人に自分の経験が少しでも役に立てば」と語る竹宮さん(京都市左京区・京都精華大)
自伝をまとめ「若い時は分からないことばかりで、この年になって書けた部分もある。若い人に自分の経験が少しでも役に立てば」と語る竹宮さん(京都市左京区・京都精華大)

 「風と木の詩」「地球(テラ)へ…」などの人気作品で知られる漫画家で京都精華大学長の竹宮恵子さん(66)が自伝「少年の名はジルベール」(小学館)を著した。1970年代、少女漫画の黎明(れいめい)期に希望や葛藤の中で自由な創作を追い求めた少女たちの“冒険譚(たん)”で「自分の胸にたまったものを物語にして感動を伝えるには何が必要か。少しでも若い人への示唆になれば」と語る。

 著書では徳島県の高校時代にデビューし、大学を中退して20歳で上京して漫画家の地位を確立するまでの半生を描く。舞台の中心が「大泉サロン」だ。大御所を輩出した「トキワ荘」にならい、練馬区のアパートを借り、のちに「ポーの一族」など人気作を生み出す萩尾望都さんや、竹宮さんのプロデューサー的役割を担う増山法恵さんら同世代の仲間と共同生活を送った。サロンには編集者やファンも集い、少女漫画家たちの結節点になった。

 通底するキーワードは「革命」だ。当時は少年漫画に比べ、少女漫画は原稿料も安く、かわいい少女の主人公や健康な恋愛ストーリーなど類型的な表現が出版社からも求められた。竹宮さんたちは、少女漫画の世界を変えようと、男性中心の編集者とも向き合い、自ら欧州旅行を企画して異文化を吸収するなどして挑戦を続けた。

 「肉体をおろそかにして、精神文化だけで人間の本質は描けない」と、タブーを打ち破る自由な表現を追求した。フランスの寄宿学校を舞台に、主人公ジルベールら少年同士の愛と成長を描いた「風と木の詩」の発表が認められるまで、苦悩やスランプに陥りながらも自らの思いを物語として昇華しようと模索した過程もつづる。

 「学生運動も自分の問題として考え、若い頃から『自分で何かを変えなければ世の中は変わらない』という思いがあった。自分がうまく描けるのは『少年』で、それが認められなければ立つ瀬もなかった」。いまや少女漫画も多彩な作品が登場し「ボーイズ・ラブ(BL)」は海外でも人気だ。「窮屈な生き方を強いられている女性にとっての正解がそこにあるから。男性も女性的なことで悩む。漫画文化の中に男女の問題の交流がある」

 激動の70年代、「大泉サロン」で映画や音楽などにも造詣が深かい「戦友」たちに刺激を受け、創作の力を磨いた。「社会問題や文化も、知らないことに突き当たり、その先を知ろうとすることで、自分が今いる時空と過去や未来がつながる」。漫画家を志す若者たちには「言葉で伝えられないから漫画を描き始めるのは今も昔も同じ。自分は何を伝えたいのかを考え、それを吐き出すにもストーリーを構成する力が大切」と助言する。「私もまだまだ知らないことばかり。その先に何かあれば、つかめるまであきらめたくない。昔から『粘い』んですよ」。その「革命」に終わりはなさそうだ。

【 2016年03月07日 08時45分 】

ニュース写真

  • 自伝をまとめ「若い時は分からないことばかりで、この年になって書けた部分もある。若い人に自分の経験が少しでも役に立てば」と語る竹宮さん(京都市左京区・京都精華大)
京都新聞デジタル版のご案内

    観光・社寺のニュース

      政治・社会

      市営住宅7階の一室全焼 京都、3人を搬送

      20170124000154

       24日午後7時30分ごろ、京都市伏見区向島四ツ谷池、向島市営住宅第5街区6棟7階の山口..... [ 記事へ ]

      スポーツ

      70歳の尾崎将、ツアーに意欲
      「今年は楽しみ」

      20170124000120

       男子ゴルフの日本ツアーで最多の94勝を誇る尾崎将司が70歳の誕生日を迎えた24日、千葉..... [ 記事へ ]

      経済

      パナ、壁掛け扇風機14万台回収
      発火の恐れ、事故5件

      20170124000100

       パナソニックは24日、国内で販売した壁掛け式の扇風機に発火の恐れがあるとして、計14万..... [ 記事へ ]

      教育・大学

      特別支援学校新設、環境も改善を 滋賀の保護者ら署名提出

      20170124000142

       滋賀県内の特別支援学校に通う児童生徒の保護者や教職員らでつくる「滋賀の障害児教育をよく..... [ 記事へ ]

      環境・科学

      水俣病原因物質、防御機構を破壊
      水銀中毒の治療薬開発に期待

      20170125000008

       水俣病の原因物質であるメチル水銀を摂取すると、小脳などの脳血管に特定のタンパク質が生じ..... [ 記事へ ]

      国際

      ジュネーブ和平協議再開へ
      シリア停戦監視強化で声明

      20170125000005

       【アスタナ共同】内戦の続くシリア全土での停戦維持を図るアサド政権と反体制派の会合は24..... [ 記事へ ]