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「回天」出撃時の声、耳離れず 京都の元潜水艦乗組員

潜水艦「伊58」から出撃した回天搭乗員の冥福を祈る中村松弥さん。「この人たちのおかげで私は今生きていられる」(京都市伏見区)
潜水艦「伊58」から出撃した回天搭乗員の冥福を祈る中村松弥さん。「この人たちのおかげで私は今生きていられる」(京都市伏見区)

 戦時中の日本海軍で人間魚雷「回天」搭乗員の最後の言葉に耳を澄ましていた潜水艦乗組員(90)が、京都市伏見区にいる。特攻で命を落とした戦友への慰霊で、基地があった山口県の離島を毎年訪れており、26日で52回目を迎えた。

 東山区出身の中村松弥さん。海軍に志願し、1944年9月、甲板上に最大6基の回天を搭載した潜水艦「伊58」に配属された。司令塔と回天を結ぶ有線を通じ、橋本以行(もちつら)艦長の指示を回天搭乗員に伝えるのが役割だった。回天は4回出撃、9人が戦死した。

 敵艦を見つけると、「よーし、発進準備」と伝令。敵艦までの距離を知らせ、「最後に言うことはないか」と必ず尋ねた。

 「5人と話したが、海軍兵学校出の中尉は『天皇陛下、万歳』と言い、残り4人は『ありがとうございました』『お世話になりました』と答えた」と証言する。

 「撃てー」の命令とともに回天は潜水艦を離れた。「有線がプツっと切れる音を70年以上たった今でも思い出す」

 当時は、「潜水艦が明日やられてもおかしくない状況でみんなが一つの棺おけに入ってるようなもん。自分の仕事に専念し、何とも思わんかった」という。しかし、敗戦後に家業の八百屋を継いで生活が落ち着くと、搭乗員たちの言葉が浮かび、頭から離れなくなった。「命拾いした自分の使命」。1965年から大津島を訪れ、戦友の冥福を祈っている。

 当初は一人だったが、2002年以降は艦長の長男で梅宮大社(右京区)宮司の橋本以裕(もちひろ)さん(76)らと、海面に向けて静かに手を合わせる。

 「どう受け止められるか分からず、遺族には最後の言葉を伝えられていない。戦友会は十年以上前に解散し、みんな死んでいく。自分が見聞きした先人の犠牲と苦労を、戦争を知らない世代に語り残さなあかん」。「伊58」から出撃した9人の名前を記した色紙に視線を向け、そう語った。

 <回天>

 約1・5トンの爆薬を積んだ九三式魚雷に乗り込んだ搭乗員が水中を潜航し、敵艦に体当たりする特攻兵器。潜水艦が敵艦近くまで運んだ。海軍は1944年8月、正式兵器に採用。翌月、山口県・大津島に基地開設。戦死した搭乗員や整備員計145人の平均年齢は21・1歳。

【 2016年03月26日 14時50分 】

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