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「美しい大和言葉で伝統美を」 冷泉貴実子さんがエッセー

「和歌が伝える 日本の美のかたち」
「和歌が伝える 日本の美のかたち」

 「冷泉家の和歌は創作、あるいは個性発揮の場ではない。使い旧(ふる)された、しかし美しい大和ことばを使って、伝統的な美の世界を構築することにある」。冷泉家時雨亭文庫常務理事の冷泉貴実子さんがエッセー集「和歌(うた)が伝える 日本の美のかたち」を刊行した。日本人の美意識に通底する和歌の美、歌ことばを紹介する。

 近代教育で、日本人の芸術への評価基準は大きく変わったという。「明治以降、芸術は人まねではなく、個性を求められてきた。しかし、それ以前は共通の『型の美』があった」。日本画には粉本があり、茶道や舞踊、謡なども、まねごとに美を認めてきた。

 和歌の世界では、ことばでイメージが共有される。例えば「月に雁(かりがね)」。満月を背にV字形に飛ぶ様子が浮かぶ。「ススキに玉の白露」といえば、秋風にススキの穂がなびき、草に宿った露が散っているさまだ。「現実に見ていなくても想像できるのは、日本人のDNAに刻み込まれているから」という。

 「花」といえば「桜」をさし、「待花(はなをまつ)」「盛花(さかりのはな)」「落花」とそれぞれの表情を詠む。雪にも雲にも霞(かすみ)にもたとえる。エッセー集では、豊かな歌のことばが詠み込まれた和歌とともに、そこに見える景色や文化を伝える。「和歌は和(やまと)文化の基本。和歌がなければ、能楽も歌舞伎も工芸も成立しない」

 一方、近現代の短歌については「似て非なるもの」と区別する。作者の人生観や生活が投影されるからだ。例えば、石川啄木の<はたらけどはたらけど猶わが生活(くらし)楽にならざりぢつと手を見る>など、作者と作品が一体となるが、和歌は「完全な仮想の世界」とする。10代で老いの歌も詠めるし、90代で恋の歌をつくることもある。作品として独立しているから共通理解できる。「夢物語を紡ぐことでしばしでも悲しみから離れることもできる。フィクションの醍醐味(だいごみ)」と、現代では使う機会の少ない歌ことばが、日常に使われることを願っている。

 書肆フローラ刊、2160円。

【 2016年12月31日 21時04分 】

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  • 「和歌が伝える 日本の美のかたち」
  • 冷泉さんは「小中学校で百人一首を覚えることは、伝統の美の世界を理解するのにとても大切」という(京都市上京区・冷泉家)
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