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甲賀の「山伏」、地域住民で守り継ぐ 滋賀、戦後に復興

息障寺初不動で結界を清浄にするため四方に弓を放つ行者(滋賀県甲賀市甲南町杉谷)
息障寺初不動で結界を清浄にするため四方に弓を放つ行者(滋賀県甲賀市甲南町杉谷)

 修験道文化が色濃く残る滋賀県甲賀市。各地の祭りで護摩をたいて法要を営む「山伏」は、地域で結成した講によって住民らが守り継いでいる。甲賀の山伏文化について、地元の人たちに聞いた。

 2月19日、甲賀市甲南町杉谷の息障寺で営まれた初不動(春の会式)。境内には僧侶のほか、黒い頭巾(ときん)をかぶり白衣の袈裟(けさ)をまとった山伏姿の行者4人がいた。地域住民ら約20人が見守るなか、斧(おの)を大地に振り落とし、弓を東西南北に放ち、剣を振りかざす。「結界を清浄にする儀式」という。護摩壇に火をともし、炎の前で一心に経を唱え、地域の無病息災を祈った。

 かつて甲賀市には、甲賀の山岳信仰の中心となる巨大寺院・飯道寺が飯道山の頂近くにあった。市史などによると、711(和銅4)年ごろ、興福寺の僧が中興。平安時代には飯道神社とともに神仏習合の大寺院として坊院が立ち並び、中世には修験道の一大聖地となった。江戸中期の「飯道山惣絵図」には20余りの坊院が描かれている。修験者(山伏)の修行場(行場)だった岩場もある。

 しかし明治政府が神仏分離令(1868年)、修験道禁止令(72年)を相次いで発布し、飯道寺は廃寺。取り壊しを免れた飯道神社本殿の周囲には坊院の石垣だけが残る。

 廃寺とともに山伏も姿を消したが、戦後、地域の文化を再興しようと、周囲の集落で行者講が相次いで復活した。その一つ、江洲飯道山行者講は1951年結成。現在約60人が名を連ねる。メンバーの山田耕造さん(81)=甲賀市水口町牛飼=によると、行者になると地域の祭りで法要を営んだり托鉢を行ったりするほか、全国的に知られた行場である大峰山(奈良県)でも定期的に修行する。「熱心な人は年に何度も通っている」と話す。

 現代の行者はみな在家で、袈裟や法具は各自でそろえる。一連の作法を覚えるのも大きな負担だ。それでも行者になるのは「地域の伝統に触れるだけでなく、宗教的な経験を味わえる魅力もあるから」と山田さん。ただ近年、会社勤めの人も増え、行者講への参加は60代以上がほとんど。若い人を勧誘しても断られることが多い。「多くの出会いがあり、プラスになるはず」。山田さんは若者に魅力を感じてもらうよう、もっと精力的に活動したいと話す。

 では、飯道寺の山伏とは何者だったのか。飯道山の山麓に家を構え、江戸時代に飯道寺が山伏に与えた補任状などが伝わる関谷和久さん(59)=甲賀市水口町三大寺=によると、同様の書状は全国から見つかっており「東北から九州まで末寺を持っていたようで、一大勢力だった」。

 織田信長が寺に宿泊した記録や、信長が寺領を保証したり、徳川家康が二百石の土地を与えると記した内容の朱印状もあり、関谷さんは「権力者に取り入る飯道寺には相当力があった。山伏の修行は僧兵の養成にもなっていたのでは」と想像を巡らす。流浪の武士をかくまい、山伏とした可能性も指摘する。

 甲賀の山伏は、京滋の寺社のお札を全国に売って回り、なりわいにした。同時に甲賀の山で採れた薬草で薬を作り売った。甲賀に現在も多い製薬会社のルーツとなる。甲賀忍者のイメージの基になったともされる。

 飯道山はハイキングコースも整備され、行場があることは市民や観光客も知ってはいるが、「それ以上にすごい歴史があると伝えたい」と関谷さんは言葉に力を込めた。

【 2017年02月26日 21時50分 】

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