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風船爆弾仕様書、ひそかに残す 京都、「実態浮かぶ一級資料」

第1工場となった京都市美術館の配置図。大ホール(中央右側)が作業場になったことが分かる=東京都江戸東京博物館提供
第1工場となった京都市美術館の配置図。大ホール(中央右側)が作業場になったことが分かる=東京都江戸東京博物館提供

 戦争中に旧日本軍が開発した「風船爆弾」の製造では、京都市美術館(左京区)などが工場に使われた。秘密兵器のため資料は終戦時に廃棄されたが、京都工場の責任者が作業計画や気球部の仕様などを克明に記した文書をひそかに残していたことが分かった。女学生を大量動員し、わずか5カ月の間に市美術館だけで869球も造っていた。文書を所蔵する東京都江戸東京博物館は「計画段階から最終実績を記録した文書まであり、京都での製造と学徒勤労動員の実態が浮かび上がる一級資料」としている。

 総数108点。同爆弾の製造を請け負った民間会社の社員だった東京都の男性が持っており、死亡後に遺族が同博物館に寄贈した。

 資料によると、大礼記念京都美術館(現市美術館)と市公会堂(現市美術館別館)が第1工場、東山区の祇園甲部歌舞練場が第2工場、中京区御池通寺町東入ルにあった京都美術会館(現京都美術倶楽部)が第3工場となった。男性は第1と第3の工場長を務めた。

 1945年2月時点で第1工場に京都高等手芸女学校(現京都橘高)の2年生137人、第3工場に1年生154人を動員。1個の気球に必要な和紙は約3千~4千枚とされ、女学生らが和紙をこんにゃくのりで何層にも貼り合わせたりする作業を続けた。

 作業時間を12時間に延長し、1日の製作を6球から8球に引き上げる作業計画書には、ただし書きで「食堂、休憩室に充当する部屋がない。一室をあてると作業効率が半減する。病人の静養室にする部屋もない」と訴えている。軍事が最優先される中、現場責任者の苦悩がうかがえる。

 第1工場では1日平均6球を製造。44年10月から45年3月の製造打ち切りまでに計869球(うち48球は破裂)が完成した。大阪陸軍兵器補給廠(しょう)に納入され、さらに打ち上げ場所の一つの千葉県に送られた。

 江戸東京博物館学芸員の松井かおる主任は「風船爆弾の材料や関係文書は終戦時に徹底的に処分するよう陸軍が指示しており、資料は断片的にしか残っていない。男性が持っていた文書には気球部製造の仕様書、規格類のほとんどがそろっており、これまで例をみない一括文書」と評価する。

【 2016年10月29日 12時00分 】

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