京都大好きトーク!

第四十八回 京都国際映画祭2018が開幕!京都から映画の魅力を世界に発信!
門川大作京都市長 × 中島貞夫さん(映画監督、京都国際映画祭名誉実行委員長) × 中村伊知哉さん(京都国際映画祭実行委員長)
門川大作京都市長さん・中島貞夫さん・中村伊知哉さん 対談写真
門川大作京都市長さん・中島貞夫さん・中村伊知哉さん 対談写真
門川大作京都市長さん・中島貞夫さん・中村伊知哉さん 対談写真
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門川大作京都市長さん・中島貞夫さん・中村伊知哉さん 対談写真
よしもと園花月(京都市東山区)での座談会に出席した皆さん

<プロフィール>
中島貞夫(なかじま さだお)/1934年千葉県生まれ。東京大文学部卒業。東映入社後、京都撮影所に配属。64年「くノ一忍法」で監督デビュー。京都市民映画祭新人監督賞を受賞。その後60作品以上を手掛ける。代表作に「893愚連隊」「序の舞」「極道の妻たち」シリーズなど。87年から2008年まで大阪芸術大映像学科で後進の指導に当たり、11年からは立命館大映像学部客員教授を務める。京都市文化功労者。京都府文化功労賞、牧野省三賞など受賞多数。今回の映画祭では20年ぶりとなる劇映画「多十郎殉愛記」をワールドプレミア上映する。
中村伊知哉(なかむら いちや)/1961年京都府生まれ。京都大経済学部卒業。ロックバンド「少年ナイフ」のディレクターを経て旧郵政省に入省。通信・放送融合政策、インターネット政策などを担当後退官。98年MITメディアラボ客員教授、2002年スタンフォード日本センター研究所長。現在、慶応義塾大大学院メディアデザイン研究科教授、吉本興業社外取締役。内閣府クールジャパン戦略会議委員、一般社団法人デジタルサイネージコンソーシアム理事長も務める。著書に「コンテンツと国家戦略 ソフトパワーと日本再興」など。

京都は「東洋のハリウッド」
中島貞夫さん門川市長 いよいよ来週から京都国際映画祭が始まります。 本日のゲストは映画監督で映画祭名誉実行委員長の中島貞夫さん、そして実行委員長の中村伊知哉さんです。中島監督には前身の京都映画祭からずっと中心となってご尽力いただいています。
中島さん 京都の映画祭としてはもともと京都市民映画祭があり、それが廃止になった後、約20年の時を経て京都映画祭として復活。しかしそれもやめようとなった時、吉本興業が参画して始まったのがこの京都国際映画祭です。
門川 5回目となる今回は、監督にとって「極道の妻たち 決着」以来約20年ぶりの長編劇映画「多十郎殉愛(じゅんあい)記」がワールドプレミア上映されますね。
中島 僕が映画界に入った昭和30年代半ばは映画全盛期。ところが昭和39年の東京五輪の頃には観客動員数が半分以下になっていました。時代劇を中心にした映画が、テレビに取って代わられたんですね。しかし京都には映画に一生をささげたたくさんの人がいた。その伝統的な映画をもう一度!というのが今回の動機の一つです。おこがましいけど、京都の映画界再興の出発点にと。
中村さん 「多十郎殉愛記」は幕末の京都が舞台で、京都弁が満載。チャンバラに次ぐチャンバラで、狭い路地や竹林を駆け抜けるスピード感あふれる純愛もので、まさに「京都の映画」。かつ国際的な普遍性もあるから、早く世界の皆さんに見てもらいたいですね。
門川 わくわくしますね。そして映画祭のキャッチフレーズは「映画もアートもその他もぜんぶ」。
中村 実行委員長を引き受ける際、考えたんです。京都は映画のふるさとでありながら漫画、アニメ、ゲームの拠点であり、大学も企業も集積している。歴史も文化もポップカルチャーも全て持つこの京都の力を世界に発信しよう、しかもそのまち全部を使ってみんなで楽しむものにしようと。
中島 明治初期、フランスで発明された映画の原型「動く映像」の日本初上映は京都。それは琵琶湖疏水を使って電気を起こしていたから可能だったんですね。当時の京都には新しいものを取り込むエネルギーがあった。そして亡き津川雅彦さんのおじいさん・マキノ省三さんが映画製作を本格的にスタートします。刀や茶碗などの小道具の会社も京都で創業して今年でなんと100年。やはり映画のベースは京都にあると思いますね。
門川 京都がなぜ「東洋のハリウッド」といわれるようになったかといえば、工芸、能・狂言、京舞、音楽、服飾文化、自然、社寺などと、映画を作る全てがあったから。そして今でも時代劇の現場には、それこそ世界遺産のような技術を持つ方がおられる。この継承もとても重要です。
中島 チャンバラの刀は世界的にも特殊で、武器に精神性が入っている。だから単なるアクションじゃない。ところが戦後アメリカ映画が入ると単純な勧善懲悪になってしまった。本来は命を懸けたドラマ性が宿る、高度なパフォーマンス。このまま退化させてはいけないんです。
門川 今作にはそのチャンバラ哲学も込められた。
中島 2年前「時代劇は死なず ちゃんばら美学考」というドキュメンタリー映画を作ったんですよ。自分の考えが共感を得られるものかどうか、いろんな人の意見を聞きました。京都の映画の伝統を何とか残そうと。
門川 監督の情熱には本当に感服です。

日本映画の現状と映画祭の果たす役割
中村伊知哉さん中村 京都生まれの僕が初めて映画館に行ったのは4歳の時、母親に連れられて朝日会館へ。小学校時代は京一会館で「四谷怪談」などの時代劇を、中高生になるとスカラ座でデートし、大学時代は京大の西部講堂でポルノ映画の会に潜り込んでいました(笑)。映画には京都のまちが当たり前に出ていて、今振り返るとすごいことだったんだなと思います。
門川 私の子どもの頃も近所の二条城ではよく撮影をしていました。最近は時代劇は随分少なくなりましたが、日本映画の現状をどうお考えですか?
中村 日本のアニメは健闘していますが、これからの2大テーマはデジタル化と海外展開だと思います。映画からテレビを経てネットの時代が来た今、デジタルの波にどう対応するか。少子化で国内市場の成長が見込めない中、海外市場をどうつかむか。これまでの枠を超え文化産業として成長できるかどうかの転換点です。その中で歴史を守るだけでなく、変化し挑戦を続けてきたまち・京都がこの課題をどう解決するか、注目が集まりますね。
門川 京都が大事にしてきたのはまさに伝統を生かしながら、新たなものを創造するという考え方。中島監督から「吉本と一緒にするのはどうだろう?」と伺って「大賛成」と即答したのも、吉本さんのクリエイティビティがあればこそです。
中村 ものづくりと文化の両輪が、町衆の力で回ってきたまちですから、映画祭も映画という文化を中心としつつ、みんなでワイワイというやり方がマッチする。今、映画祭はアニメもファッションもスポーツもと、面白い広がりを見せています。
門川 新たに教育的な視点も。
中村 はい。「ワークショップコレクション」では、プログラミングや電子工作などを通して子どもたちの創造力や表現力を高めていきます。粘土をこねて映像にしたり、お芝居を作ったり、何でも作ってみよう!と。多くの方に参加いただき、魅力を海外にも発信してもらえたらと思います。
門川 「SDGs(持続可能な開発目標)」の催しにも感動しています。昨年岡崎で開催されたスタンプラリーは大雨にもかかわらず、たくさんの人でした。
中島 みんなに広げる活動の一つとして、京都美術工芸大とのコラボイベント「映画と工芸」も開きます。例えば時代劇の刀作りは、元をたどれば金箔(きんぱく)を張る技術。工芸と映画は無縁じゃない、むしろ映画を発展させる上で欠かせなかったと知れば、学生の意識も変わるし、アートも広がりが出てくると思うんです。
門川 観客の見方も変わりそうですね。
中島 「京都の活動屋の、世界に誇れる技術」といわれる、京都ならではの「見立て」のうまさもある。例えば「仁義なき戦い」は広島が舞台ですが、ほとんど京都で撮った。これも時代劇で鍛えた技です。
門川 まさに職人技! 京都市メディア支援センターではロケ支援なども行っていますが、さらに映画作りを支える環境づくりを進めていきたいですね。
中島 お金がないからと何でもパターン化しがちですが、昔の作品を見ればヒントはいっぱいあります。チャンバラも多くは年寄りがやっているけど、それでは若い子は見ない。今回は主演の高良健吾さんはじめ、斬られ役である約20人の吉本の若手も1カ月間猛特訓。チャンバラ全盛期の雰囲気がよみがえりました。
中村 今回はみんな若いから、スピード感がすごい。
門川 楽しみですね。監督自ら殺陣の指導もされたとか。
中島 いや、格好をしてるだけ(笑)。だけど年寄りも若い人も一緒になってやっていると、何かが出てきますよね。今回は大阪芸大で教えた人たちが時代劇を体得する良い機会にもなりました。今はそういう場が失われているので。現場が活性化すれば、新しいものは必ず生まれます。
門川 新旧がぶつかり合い生まれるエネルギー、素晴らしいですね。

京都の力で映画を元気に
門川大作京都市長門川 2021年度には文化庁が機能を強化し、京都に全面的に移転します。これを機に京都市としても、時代劇を含めた文化芸術振興策をさらに進めていきます。
中村 文化庁が京都に来るのは当然だと思いますよ。世界の文化の中心として京都の情報発信力をもっと強めないと。京都国際映画祭も役に立てたらと思います。
中島 世界に発信するとき、ベースを日本のどこに置くかによって外国の受け止め方も違ってくると思うんですよ。それが京都だと特にそう。
門川 今年LINEが研究開発拠点を京都につくったら、20~30人の募集に千人が応募し、その8割が外国人だった。パナソニックもデザイン部門を京都に集約したら、優秀なデザイナーがたくさん集まったそうです。京都の最大の特性はものづくりと精神文化。そして源氏物語以来の「ものがたりづくり」。その中で匠(たくみ)の技が伝承され、人づくり、まちづくりが千年続いてきた。その象徴が映画でもある。また、京都の74の伝統産業は危機的状況にありますが、伝統工芸の魅力も伝えるこの映画祭を通じて、普段の生活に取り入れようという動きにつながればうれしいですね。
中村 そして今回は吉本の芸人が「京都市盛り上げ隊」を結成し、一緒に盛り上げていきます。
門川 ありがたい限りです。 多くの方々の支援を得て育ってきた京都国際映画祭。みんな参加型で、さらに感動を呼ぶ場にしたいですね! どうぞよろしくお願いします。




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