京都大好きトーク!

第五十三回 京都に育まれた奥深い文化芸術。文化に親しみ、交流を深める好機が次々と!
門川大作京都市長 × 上村淳之さん(日本画家、京都市学校歴史博物館館長) × やなぎみわさん(美術作家、演出家)
門川大作京都市長さん・上村淳之さん・やなぎみわさん 対談写真
門川大作京都市長さん・上村淳之さん・やなぎみわさん 対談写真
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門川大作京都市長さん・上村淳之さん・やなぎみわさん 対談写真
京都市学校歴史博物館(京都市下京区)での座談会に出席した皆さん

<プロフィール>
上村淳之(うえむら あつし)/1933年京都市生まれ。上村松篁の子として生まれ、日本画家となる。祖母は上村松園。京都市立美術大(現・京都市立芸術大)専攻科修了。京都市立芸術大名誉教授。94年松伯美術館の館長に就任。日本芸術院会員。京都府文化功労賞受賞。2013年文化功労者。
やなぎみわ/1967年神戸市生まれ。京都市立芸術大大学院美術研究科修了。美術作家であり野外劇主宰。東九条に開場したシアターE9副館長。93年京都で初個展。国内外で活躍し、2009年ヴェネチア・ビエンナーレ日本館代表。京都市芸術新人賞をはじめ数々の賞を受賞。

お二人の歩みと京都芸大
上村淳之さん門川市長 本日は日本画家で京都市学校歴史博物館館長の上村淳之さん、そして美術作家で最近は演劇も手掛けられるやなぎみわさんをお迎えしました。ともに京都市立芸術大(京都芸大)のご出身。上村さんは長く教べんも執られましたが、祖母、父に続き日本画を志されたのは自然にですか?
上村さん それぞれが違った個性、違った考えを持っていないと、血のつながりがあっても作家にはなれません。私の場合は苦労した父と同じ轍を踏むのではと母が危惧し、猛反対されたんですが「いいや、それでも描きたい」と絵を志したんです。大学では、国画創作協会で活躍された榊原紫峰、小野竹喬といった先生方の最後の生徒でした。また、教員になっても学生は私と違う感覚・目を持っているので、「こんな考え方や視点があるのか」と発見の連続。学生にはそんな意識はなかったでしょうが、学生から多くのことを勉強させてもらいました。だから大学に行くのが楽しくて。私にとって京都芸大はずっと「教わるところ」でしたね。
門川 その感覚が、先生が絵に対する旺盛な意欲を保っておられる秘訣(ひけつ)ですね。
上村 絵というのは50歳や60歳で分かるものではなく、仕事を重ねて重ねてようやく少しずつ分かってくる世界だと思っています。
門川 神戸出身のやなぎさんは、大学では伝統工芸の染織を専攻されていたんですね。
やなぎさん 父が日本画好きで上村先生の大ファンでもあり、年に何度かは京都市美術館に日本画を見に行くのが一家の行事でした。私が入学した頃の芸大は「型を壊す」を第一の目的にしていた時代。予備校でデッサンと色彩構成の勉強をし過ぎて固まってしまった型を壊すんです。入学後すぐやらされたのは、なんと乗用車の解体! わらじ編みや、地面を使うアースワークなどもやりました。専攻の染織では伝統工芸の型を学び、一方で型を壊すことを学ぶ。その並走がとても面白かったですね。
上村 日本画専攻で最初に教えることは「余白」です。絵に余白が存在するのは東洋画だけ。西洋画には一切なく、全く立場が違います。西洋のものが身の回りにあふれている今は、日本人もだんだん余白を理解できなくなっている。余白はいわば何もないところにある存在。全ての日本画は夢想の世界の具現化だと割り切ったら、理解しやすいのかもしれません。また、「あのウグイスは良いなあ」と思ったら、それを描かれた先生の仕事をじーっと見る。それが実際に生きているウグイス以上のことを教えてくれるんです。それは先生のパーソナリティーが教えてくれるわけで、それが絵の勉強というものだと思います。
門川 絵とは物がそのまま描かれたものでなく、作家を通してその思いが再構成されたものなんですね。

ミュージアムと国際博物館会議(ICOM)京都大会
やなぎみわさんやなぎ それを千年後にも残すのが美術館・博物館の大切な使命ですね。一方で展覧会で市民や観光客など多くの人が親しめるようにすることも大事です。所蔵が「静」だとすれば、展示は「動」。この二つの役割を果たさないといけないので、大変だと思います。
門川 その美術館・博物館同士が国際的な交流を深める会議が、ここ京都で9月に行われます。約140の国・地域から約3500人が参加する国際博物館会議(ICOM)京都大会です。日本では初開催で、美術館はもちろん動物園、水族館、歴史や伝統文化、鉄道、食、先端科学などの幅広い分野の博物館の専門家が一堂に会します。
やなぎ 本当にあらゆる分野なんですよね。すごいことですね。
門川 もう一つわれわれが取り組んできたのが、この機会に市民の皆さんに美術館・博物館をより身近に感じていただくこと。昨年にはみやこめっせ(京都市勧業館)で幼児を対象にした「ミュージアムキッズ!全国フェア2018」を開きました。来館者が増えているここ学校歴史博物館をはじめ、多彩な学びの場に親しむ機会を増やしたいですね。

岡崎と京都駅周辺エリアが芸術の聖地に
門川大作京都市長門川 86年前にできた京都市美術館はさまざまなご支援をいただき来年3月、「京都市京セラ美術館」としてリニューアルオープンします。市民の皆さまのご負担を抑えるためネーミングライツ(命名権)を導入した他、作品の収集方針も新たに定めました。近代京都画壇から現代アートまで収集の幅を広げ、季節ごとの常設展を企画。新進作家を支援するためのスペースも拡充します。
やなぎ 京都画壇の膨大な作品群は貴重な財産ですね。また、新進作家の支援にも取り組まれることは非常に画期的だと思います。
門川 2021年度に文化庁が全面的に移転する京都にふさわしい美術館にすべく、ハード・ソフトの両面を強化します。さらに2023年度には、京都芸大が京都駅東の崇仁地域に移転。京都の最大の価値である文化芸術と人を育むまちづくりにいっそう力を注ぎます。
やなぎ 人や文化を育むには、本当に時間がかかりますからね。
門川 京都芸大の学生さんを見ると、受験で5教科をきちんと勉強するのはやはり重要だと感じます。やなぎさんのように専攻からいろんな分野に発展するには、幅広い基礎教養は欠かせない。乗用車の解体も非常に面白く、今挑まれていることにもつながっている気がしますね。
やなぎ そうですね。学生も一緒に取り組む野外劇では撤収時、くぎ一本落ちていないようみんなで見て回ります。自分で出したごみを自分で片づける、そういう学びも大切です。
門川 6月には京都市南区東九条に「THEATRE E9 KYOTO」(シアター・イーナイン京都)も誕生しました。
やなぎ 歴史ある小劇場が多い京都ですが、ここ数年で5カ所ほど閉鎖されています。学生さんも低料金で借りられる小さな劇場が必要だと、演出家のあごうさとしさんと私が話すうち協力者が増え、古い工場を見つけて改装し、やっと開場にこぎ着けました。こけら落とし公演では茂山あきらさんが狂言「三本柱」を上演。カフェやコワーキングスペース(共同の仕事場)も入り、アーティストばかりでなく企業の方などいろんな人が交わる場にしていきたいと思っています。京都芸大も近くに来るので若い人も多いですし。
門川 崇仁から東九条にかけたエリアや岡崎が、文化芸術の聖地になりますね。

文化芸術の都・京都の持つ力と役割
上村 その国に穏やかな時間が流れ、平和の中で自分自身を見直すチャンスがあって初めて、本当の芸術、文化は生まれると私は思います。次代を見据え「京都が中心になって日本の文化をきっちり育てましょう」という呼び掛けをしていかないと。これは行政でなく、作家の仕事です。
やなぎ 芸術がなぜ平和的かというと全ての矛盾をはらむから。善も悪も、きれいも汚いも、全て共存できるのが芸術であり、非常に複眼的で多面的です。だから芸術をもう少し身近な存在にしていきたいと思っています。人々の間には「芸術家は特別な存在」という感覚があると同時に、インターネットやSNSの普及により「全ての人がアーティスト」という感覚もあり、一口に身近にすると言っても難しい部分もある。でも、千年を超える歴史を誇る京都は本当に恵まれており、それを超えていける力を持っていると思います。
上村 私もやっぱり京都は強いと思います。土が肥えた畑のように「地力」があるから、人が京都に集まってくる。京都は排他的と言われますがそんなことはありません。例えば日本画の小野竹喬先生も他県の出身です。よそから集まってきた人たちが、京都人にうまく抱き込んでもらって、豊かに育ってきたという見方が正しいと思います。
門川 外からの力、新しい血もどんどん入れてうまく融合し、発展してきたのが京都のまちですね。
上村 それを京都の人々もきちんと知ってプライドを持ち、外国から来られた人も新しい文化もギューッと抱き込んでいったらよい。京都がそういうところであり続けてほしいと思いますね。
門川 おっしゃる通りですね。京都では留学生も年々増え、約1万人になりました。明治維新以降、文化芸術と人づくりに力を注いできた京都です。これから東京オリンピック・パラリンピック、ワールドマスターズゲームズ2021関西ジャパン、さらに大阪・関西万博も控えていますが、そこでも大事な役割を果たすのが文化芸術。最大の平和装置である文化芸術の力で全国、世界とつながります。今後とも、どうぞお力をお貸しください。そしてお二人の素晴らしい作品も楽しみにしております!


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