裁判所で「人種差別」と認定された在特会側のデモ。襲撃事件後、京都朝鮮第一初級学校の周辺で2回にわたって行われた(2010年3月28日、京都市南区)

裁判所で「人種差別」と認定された在特会側のデモ。襲撃事件後、京都朝鮮第一初級学校の周辺で2回にわたって行われた(2010年3月28日、京都市南区)

今はホテルが立つ京都朝鮮第一初級学校の跡地。事件当時の教務主任は、今も別の朝鮮学校で教壇に立つ。「場所は変わっても、質の高い教育を目指していく」と覚悟を語った(京都市南区)

今はホテルが立つ京都朝鮮第一初級学校の跡地。事件当時の教務主任は、今も別の朝鮮学校で教壇に立つ。「場所は変わっても、質の高い教育を目指していく」と覚悟を語った(京都市南区)

 「正義のためにやっている」。今年9月、ヘイトスピーチ(憎悪表現)をした過去について、「在日特権を許さない市民の会(在特会)」元メンバーの被告の男(51)=京都市右京区=は、京都地裁であった公判で声を強めた。

 10年前の京都朝鮮第一初級学校(南区)の襲撃事件で、差別を扇動する罵詈(ばり)雑言を浴びせたうちの一人。威力業務妨害罪などで有罪となった後に服役し、高額の賠償命令も受けていた。

 今回の裁判では、2017年に同校の跡地そばで「この学校は日本人を拉致している」「学校関係者かな、と思ったら110番して」などと拡声器で言い放ったとして、名誉毀損(きそん)罪に問われていた。

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 朝鮮学校襲撃事件を起こした在特会は、事件の動画をインターネットで公開。社会に衝撃を与えるとともに、会員数を激増させた。12年ごろには1万2千人超に達したとされる。当時、襲撃に加わったメンバーたちは今、何を思うのか。

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 被告と一緒に襲撃事件を起こしたうちの一人で元在特会員の男性(40)=京都市=が取材に応じた。男性は、襲撃事件の1年ほど前に外国人在留許可問題を巡る在特会の活動をネット上の動画で知った。「すげー」と思い、「日韓断交」などを掲げるデモに加わった。「死ね」「殺せ」と叫ぶことに抵抗はなかった。一連の行動に参加した感想は「『やったった』やね」。

 なぜ、在日コリアンを嫌うのか。「レイシスト(人種差別主義者)」だと自称する男性に尋ねると、自宅近くの在日コリアン集住地域でトラブルを避けるよう親から厳命されて育った記憶を話した。それ以上のエピソードは質問を重ねても語られず、「その人種が嫌いなのは、ニンジン嫌いと一緒」と事も無げに言った。同校の児童に対する今の思いを聞くと「(学校側の)大人を相手にしていた」。事件については「謝罪はしない。自分たちの主張に感化された人がいる以上、裏切れない」と強弁した。

■「タブーにびびる世間変えた」自負

 公判の傍聴席には、大阪府門真市の飲食店経営者の男性(55)の姿があった。09年の朝鮮学校襲撃事件などで有罪となり、服役した。今は、在特会の元会長が代表となった政治団体の選挙活動などに前述の被告と共に関わりつつ、3軒の飲食店を営む。

 「10年前と考えは何一つ変わっていない。在日は最も身近に日本人へ不利益を与えている。だから、ひとくくりにして出て行けと言う」。大阪にある繁華街のビルの一室に構えた店で、飲食店経営者は取材に応じた。

 水商売の世界で働いて30年余り。一時は10軒以上を経営し、中国に進出した。現地で反日デモに直面して06年に帰国後、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)などに直接街宣を仕掛ける在特会を知った。「『これや!』と。従来の右翼と違い、普通の市民が自らを危険にさらして行動する姿に美徳を感じた」

 逮捕や服役は気にせず、培った人脈と才覚でどう転んでも食べていく自信はあるという。「仕事と政治的主張は別物」と強調し、「在日コリアンの女性も雇い、自分は慕われている」と話した。

 飲食店経営者は、時に笑顔を交えて家族の話題も披露した。90代の母と2人で暮らし、自身に3人目の孫が生まれたばかりだという。記者には「いい質問しますね~」とくだけた物言い。2時間余りの取材で会話が途切れることはなく、ネオン街の話術が垣間見えた。ただ、あの日、朝鮮学校にいた児童への謝罪はなかった。

 この10年、「嫌韓」の主張がメディアや政治家の間で台頭し、強硬な右派論者も次々と登場した。16年、東京都知事選に出馬した在特会の元会長は11万超の票を集めた。飲食店経営者は、「事件の頃、僕ら以外にそんなことを言う人間はいなかった。世間は『タブー』にびびっていた。世論を変えるきっかけをつくった」

 冒頭の裁判。地裁は11月末、被告の男に罰金刑を宣告したが、拡声器での訴えに公益性を認めた。閉廷後、被告は「差別目的は否定された。保守世論を下支えするため、これからは選挙や」と勢いづいた。

【朝鮮学校襲撃事件】2009年12月4日、京都朝鮮第一初級学校に在特会メンバーら11人が押しかけ、約50分間にわたってヘイトスピーチを行った。うち4人は威力業務妨害罪などで有罪が確定。後日、同校周辺であった2度のデモ行進でも差別発言が乱発された。民事裁判で在特会側は、同校による隣接公園の「不法占拠」への「意見表明」と主張したが、京都地裁判決は「表面的な装い」と退け、人種差別と結論付けた。大阪高裁も地裁の判断を支持し、高額の賠償命令などに加え、民族教育の重要性を積極的に評価した判決が最高裁で確定した。

〈連載「ヘイト追跡 朝鮮学校襲撃事件10年」 全4回の2〉

※おことわり 連載記事には、在日コリアンを対象にした民族差別に該当する文言が複数登場します。京都新聞社は、差別の実態を共有するため文言をそのまま報道します。あらゆる憎悪犯罪や憎悪表現を許さない社会をつくる一助とする目的です。