米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設先として、名護市辺野古沿岸部で政府が土砂投入を始めて1年が経過した。

 移設に対する沖縄の民意ははっきりしている。玉城デニー知事就任後の県民投票で、埋め立てに「反対」が7割超を占め、続く衆院沖縄3区補選、参院選沖縄選挙区でも反対派が当選した。

 ところが政府は「沖縄に寄り添う」としながら、強引に既成事実化を進めている。

 民意の無視に等しい。

 海底の軟弱地盤が発覚したのを受けて県が埋め立て承認を撤回したのは昨年8月である。

 これに対し、沖縄防衛局は行政不服審査法に基づく申し立てを行い、国土交通相が撤回を取り消す裁決をして工事を強行した。

 行政不服審査法は、行政の誤った処分などから国民の権利を救済するのが目的である。

 防衛当局が不服を申し立て、同じ内閣の一員である国交相が認めるという身内同士の自作自演のようなやり方に、法の趣旨を逸脱するとの指摘が行政法の研究者からも出されている。

 県は国交相の裁決を違法として2件の訴訟を起こしたが、1件は福岡高裁那覇支部で却下され、上告した。司法が行政の行き過ぎを是正できなければ、民主主義は形骸化せざるをえない。

 「マヨネーズ並み」とされる軟弱地盤を含め、地盤改良が必要な面積は、全埋め立て海域約160ヘクタールの4割以上を占める。

 国は地盤改良のため8万本近いくいを海底に打ち込む方針だ。そのための設計変更を年明けにも申請し、玉城知事が認めなければ違法確認訴訟などで新たな法廷闘争に持ち込む構えをみせている。

 しかし最深部は90メートルに達し、完全に地盤改良するのは「技術的に不可能」とみる専門家もいる。工費の膨張だけでなく、使用開始後の地盤沈下に伴う補修費もどうななるか、国は示せていない。

 加えて国際自然保護連合(IUCN)は今月、沖縄に生息するジュゴンの絶滅危険度を最高レベルに引き上げ、辺野古の基地建設が脅威になっていると指摘した。国はサンゴも含め、自然環境への影響について再検討すべきだろう。

 政府は普天間の危険性除去を強調し、辺野古移設を「唯一の解決策」とする。だがその前に、ヘリから窓が落下するといった普天間の危険性をなくす交渉を米側と真剣に進めてきたといえるのか。

 ごり押しの移設は許されない。