木下ヘッドコーチ(右)とチームのことを話し合う山口さん=宇治市広野町・立命館宇治高

木下ヘッドコーチ(右)とチームのことを話し合う山口さん=宇治市広野町・立命館宇治高

 アメリカンフットボールの全国高校選手権決勝(クリスマスボウル)に2年連続で出場する立命館宇治(宇治市広野町)を、自身も決勝の舞台に立ったコーチが支えている。初優勝に向け、後輩たちに「一緒につくり上げた攻撃で、しっかり点を取ってほしい」と願う。

 攻撃部門を統括する立命館大職員の山口慶人さん(28)=大阪府枚方市。攻撃の司令塔となるクオーターバック(QB)として2009年に同高初の決勝進出を果たしたが、敗れた。立命館大では4年時にレギュラーをつかんだが、利き腕の右肩を負傷してリーグ最終戦の関西学院大戦に出場できず、優勝を逃した。

 卒業後に大学職員となり、17年度から立命館宇治で指導に携わる。選手としての悔いはなく、「チームを勝たせるために役割を果たすのは選手もコーチも同じ。自分が教えたプレーを選手がきちんと実行できると、自分も一緒に成長していると思える」という。

 09年のクリスマスボウルでは、「コーチとしっかり意思疎通できている」と自信を持っていた。だが、試合中に受けたコーチの指示にかすかな違和感を覚えた。「自分の中では我慢する場面と思っていた所で、挑戦的なパスを投げる指示があった。『点を取り切れ』という意図だったと思うが…」。迷いの中で放ったパスを相手にインターセプトされ、敗れた。その経験から、選手とのコミュニケーションを徹底し、「試合中でも、指示に疑問があれば必ず言うように」と説く。

 昨冬の決勝は終盤に逆転負けを喫した。「相手に主導権を奪われると引き戻せない心の弱さがあった」と意識改革にも心を砕いた。11月に始まった選手権の関西地区大会で、成長が見えたという。

 地区準決勝の啓明学院(兵庫)戦で6点を追う第4クオーターに逆転勝ちし、「メンタル面での大きな転機になった。今は、フィールドに出ていない選手からも『今は我慢や』『まだいける』といった声が飛ぶようになった」。同決勝の関西学院(同)戦でも一時は逆転されたが、再逆転を果たし、1点差で勝利をつかんだ。

 関西学院戦では、「基礎を徹底しつつ、トリッキーなプレーにも対応できるように」と磨いた戦術も花開いた。1、2本目のタッチダウンを相手の意表を突くパスで奪うと、逆転されて迎えた終盤に王道のランで再逆転。意表を突くプレーで加点した。

 普段は草津市の同大学びわこ・くさつキャンパスで働き、主に週末しか指導できない山口さん。「平日の練習を見られない分、選手が主体的にプレーの意図を考えてほしいと思っている。僕がいない時間に、選手や他のコーチがしっかり練習、指導してくれた結果」と感謝する。

 チームを率いる木下裕介ヘッドコーチ(34)=宇治市莵道=も「(山口さんが)コーチに就任してから、攻撃が変わった。一つ一つのプレーが正解か間違いか、明確に答えを出してくれるので、選手も自信を持ってプレーできている」と厚い信頼を寄せる。

 山口さんが指導に携わって3年目の今年、1年時から見続けてきた選手が最終学年を迎えた。22日、横浜スタジアムでの決勝で、昨冬敗れた因縁の佼成学園(東京)とぶつかる。「選手にとって3年間の集大成。最大限の信頼を持って、プレー指示を出したい」と意気込む。