顧客への背信ともいえる問題の根深さが浮き彫りになった。

 かんぽ生命保険の不正販売を巡り、外部有識者による特別調査委員会が調査報告書を公表した。

 2018年度までの5年間で顧客に不利益を与えた可能性のある約18万3千件の調査で、法令や社内規則に違反した疑いが1万2千件超に上った。

 9月末の中間報告から2倍にも膨らんだ。調査は継続中で、さらに拡大する可能性がある。

 うみを出し切り、失墜した信用の回復へ踏み出すには、経営体制をはじめ抜本的な組織立て直しが欠かせない。

 法令・規則違反の疑いのある契約を結んだ顧客の7割以上は60歳以上だった。保険の乗り換えを勧め、新旧の契約を併存させ保険料を二重払いさせた事案が多かった。「解約できない」といった虚偽の説明もあったとされる。

 報告書は、背景に過大な営業目標を挙げ、ノルマ達成のため不正募集を「黙認、正当化する風潮」を指摘した。目標に届かない担当者を責める「どう喝指導」も横行し、不適切な勧誘方法が模倣されて広がったという。

 高齢者に狙いを定め、販売を担う郵便局への長年の信頼につけこんだ形で、組織的な不正が強く疑われる実態が浮かんでいる。

 特別委は、企業統治の不全を指弾している。以前から数多く顧客の苦情を受けながら、問題を矮小(わいしょう)化する組織体質から歯止めも自浄も働かなかった。

 だが、日本郵政の長門正貢社長は記者会見で「反省」を口にしながら、「問題は現場で起きていて知らなかった」と繰り返した。あまりに人ごとではないか。

 金融庁や総務省の行政処分を待つ構えで、進退も明言しなかった。危機意識を欠いたまま、組織再生を担えるとは到底思えない。早期に辞任し、経営陣を刷新して責任を明確にすべきだ。

 来年1月中としてきた保険販売の再開を検討し直すのは当然である。今回は約3千万件の全契約調査のごく一部で、他にも苦情や問い合わせが40万件以上ある。

 並行して契約の是正や返金をしているが、過去にもさかのぼった実態究明と被害の救済が必要だ。

 日本郵政の筆頭株主で、不正を見逃して監督できていなかった国も責任を免れまい。全国で分け隔てないサービスを求めつつ、完全民営化に向けた収益確立を迫る構造的な問題も改めて議論すべきだろう。