西小倉地域による小中一貫校新設要望の対象になっている西小倉中(宇治市伊勢田町)

西小倉地域による小中一貫校新設要望の対象になっている西小倉中(宇治市伊勢田町)

宇治市における小中一貫教育・一貫校の主な歩み

宇治市における小中一貫教育・一貫校の主な歩み

 京都府宇治市西小倉地域の自治連合会と各種団体、小中学校のPTA・育友会の役員らでつくる検討委員会が12月上旬に、同地域の西小倉、南小倉、北小倉の3小学校と西小倉の1中学校を統合して小中一貫校を新設する要望書を市と市教育委員会に提出した。2011年に続いて2回目で、児童・生徒数の減少見込みに危機感を持つ市教委の再打診に応じた形だが、具体化に向けては乗り越えるべき課題が多い。

 「小中一貫校の敷地や運動場を広く取ってほしい。保護者から『小学生と中学生が同じ場所で運動や遊びをするのは危ない』と不安が出た」。検討委の山口陽二委員長(71)は9日、要望書を市役所で山本正市長と岸本文子教育長に提出し、こう注文した。
 12年に市内初の小中一貫校として開校した宇治黄檗学園(宇治小、黄檗中)は、運動場とは別に近隣で、多目的グラウンドの用地取得を目指したが、地権者との協議が調わずに断念している。
 西小倉地域の小中一貫校新設は、市教委の諮問機関「学校規模適正化検討懇話会」が04年度に提言して以来、長年の経緯がある。同地域が小中一貫校新設を市へ要望したのは11年6月が最初だが、当時の久保田勇市長は「莫大(ばくだい)な予算がかかり、慎重に検討したい」と回答した。市側は10年に同地域に一貫校の検討を打診したが、11年3月の東日本大震災を受け、「市内小中学校の校舎耐震化を優先した」(教育総務課)という。
 市は今回、北小倉小が5年後の24年に全学年1クラスずつの小規模校になるとの推計を踏まえ、小中一貫校新設について昨年に同地域へ再打診。計16人で構成する検討委は昨秋から計6回、議論を重ねた。「クラス替えがないのはよくない」「運動会が寂しい」と、統合やむなしとの声が大勢だったが、「少人数の方が先生によく見てもらえる」と慎重意見もあったという。
 市教委は「中1ギャップ」解消や9年間を通した指導による学力向上を目的に、12年度から小中一貫教育を全市展開する。多くは「施設分離型の小中連携」の形態だ。一歩進めた「施設一体型の小中一貫校」は宇治黄檗学園だけだが、市内の全小中学校で行った本年度のアンケートで、「中学校での学習や生活に不安・悩みがある」と答えた小学6年生は「一体型」の宇治小(宇治黄檗学園)は25・6%と、「分離型」の他校の半数未満だった。
 一方、保護者の回答は「系統的・継続的学習指導を行えている」が55%と、過去3年間は横ばいだ。実際、本年度も市内の小学6年と中学3年の学力・学習状況調査結果は全国の平均正答数を下回った。西小倉地域の住民からも「小中一貫校で問題がすべて解決するわけではないのでは」との声が上がる。
 教育効果への評価が定まっていない中でも、同地域が小中一貫校の新設要望をまとめたのは、各小中学校とも建設から41~50年と老朽化しており、子どもが通う学校環境の改善を求めるからだ。市教委も20年度末までに学校施設長寿命化計画をまとめる必要があり、ある幹部は「西小倉地域の小中学校が今のまま存続するか、統合するかは計画に影響する」と語る。
 しかし、現在の各小中学校は地域の災害時避難所に位置付けられており、小中一貫校の新設場所以外の学校跡地活用の行方を心配する住民の声もある。また小中一貫校への統合は、各校単位で形成されていた体育振興会やPTA、サークルの活動といったまちづくりの枠組みも変えかねない。
 山本正市長は要望書を受け取った際、「小中一貫校を新設する場合は、保護者や地元などの協力が不可欠だ」と述べた。市は今後、新設の是非を判断していくことになるが、幅広い層の住民や保護者らと十分に協議を重ねる視点が不可欠だ。