元龍池小は京都国際マンガミュージアムとなり、国内外から利用客が訪れる(京都市中京区)

元龍池小は京都国際マンガミュージアムとなり、国内外から利用客が訪れる(京都市中京区)

 京都市の学校跡地活用は近年、ホテルを含む施設への転用が相次いだが、市は先月、複数の跡地について新ビジネスで急成長が見込める「スタートアップ企業」の拠点にする方針を発表した。市中心部の学校の多くは明治時代に番組小として住民らの寄付で創設された歴史があり、地元住民の学校に対する思い入れは強い。一方で民間活用はニーズに合わなければ進まない現実もある。
 市によると、11月末時点で使途未定の学校跡地12カ所に対して、企業などから提案があったのは258件。1カ所当たり平均21・5件で、提案制度を始めた15年度の8・4件から2倍以上に伸びた。2016年10月に市が「宿泊施設拡充・誘致方針」を掲げたこともあり、ホテルを含む提案が多かったという。
 しかし、市中心部や観光地周辺でのホテルの建設ラッシュで、市内の客室数は誘致方針を掲げた当時の約3万室から約4万6千室(今年3月時点)と1・5倍以上に増加。宿泊先不足が解消された半面、急激な地価高騰やごみのポイ捨てなどの「観光公害」が顕在化した。
 一方で市内のオフィス不足は深刻化した。オフィス仲介会社の調査では、市内の空室率は17年7月から1%台が続く。「ニーズに合うような事業所用物件は実質ゼロ状態」とある企業の幹部は嘆く。市新産業振興室は「働く場が東京や大阪に比べて少なく、若者世代が市外に流出している」と危機感を募らせる。
 ただ、スタートアップ企業の拠点整備でオフィス不足が解消されるかは不透明だ。創業支援を手がける「フューチャーベンチャーキャピタル」(中京区)の松本直人社長(39)は「スタートアップは自宅でもでき、オフィスは必要条件ではない。起業家が求めているのは資金と情報だ」と指摘する。
 さらに、跡地をスタートアップの拠点として成功させる秘けつは立地と広さだとし、「市内なら四条烏丸ぐらい便利な場所でなければ企業は集まらない。投資家や金融機関向けの資金集めのコンテストを開催するには100人以上が入れるイベントスペースも必要」と語る。
 子育て支援施設、老人ホーム、ホテル、そしてスタートアップ企業の拠点整備へ。活用の形は変わっても、地域との共生が大きな課題となる。元植柳小(下京区)ではホテルを計画する契約候補事業者が指定避難所の体育館の地下化を提案したところ、住民が「地下では災害時に周りの状況が分からない」と反対し、事業者が修正する事態となった。
 立命館大の森裕之教授(地方財政論)は「財政が厳しく収益施設を建てて税収を上げたい市と、学校跡地を地域の拠点として残してほしい住民の思いにずれがある。市は事業者選定前に、誰でも参加できるワークショップを開催するなど、町の将来像を住民と共有する必要がある」と指摘する。