たくさんの特別編のせいですっかり間が空いてしまった京都と僕たちの物語。クリスマスの家にたったひとりでおいてきぼりにされた少年のようにだれかの帰りを待っている物語。

 それまで18年間住んだ石川の小さな町を離れて京都にきたのは2010年のことだった。その頃、たくさんあった洋楽雑誌は今はほとんどなくなってしまったし、街のあちこちにあった映画館は一気になくなって、そしてまたぽつりぽつりと新しく生まれてきた。

 新しい町の新鮮な風景は見慣れる前にどんどん変わってしまい、風景が長い間ほとんど変わらなかった自分が育った町から随分と都会に来たような気になった。それは、河原町のように特別に移り変わりの激しい場所だけだったりするのだけど、受験で京都に来た時にとても印象に残ったHMVとロフトが入った大きな建物が、次に訪れた時になくなっていたのには本当にびっくりした。

 この出来事のことは入学式の頃の春っぽい、くすぐったい匂いと一緒になぜかずっと忘れられないのだった。テレビの中に入り込んだような、きれいで新しい街の中で、僕はようやくなにかになれるような気がしていたのだった。