滝廉太郎作曲の「花」でうたわれたように、東京・隅田川は桜の名所として知られる。なぜ川沿いに桜が植えられたのか定説はないが、江戸時代に将軍徳川吉宗が治水のために植栽したという逸話が残る▼堤に桜があれば、多くの花見客が訪れ、堤防が踏み固められて強固になるというのが理由だ。逆にいえば、土と砂でできた堤防はそれだけもろい構造物ということを物語る▼10月の台風19号では東日本の71河川、140カ所で堤防が決壊した。濁流がすさまじい勢いで人家を襲う光景は記憶に新しい▼堤防が崩れるパターンで典型的なのが「越水」による破堤である。川からあふれた水が堤防の裏側に勢いよく流れ落ち、土台を削ってしまうのだ▼多くの専門家が、越水に耐えうるよう堤防の上面や裏側の補強を訴えている。だが国土交通省は「絶対に壊れない堤防は造れない」として、あくまでダム建設や川の拡幅などで水位を堤防より低く抑えることを優先する▼国連環境計画は先日、今世紀末の気温が産業革命前と比べて最大3・9度上がり「破壊的な影響」が生じると警告した。その一つが豪雨の増加で、国内でもすでに兆候は現れている。人間が自然をコントロールできない以上、川から水があふれることを前提とした対策は、もはや避けられない。