「彼女の存在が世界中の若者の怒りを表している」

 米誌タイムが毎年恒例の「今年の人」にスウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさんを選び、こう評価した。

 16歳。これまでで最年少の選出という。

 気候変動への漠然とした不安にとどまらず、直ちに行動するよう大人たちに求め1人で始めた運動が、世界各地の若者の共感を呼んだ。

 9月の国連気候行動サミットに向け、世界で数百万人が一斉抗議行動に参加したが、その中にグレタさんの呼びかけに応じた同世代が大勢いたことに目を向けたい。

 米誌タイムも触れているが、変化を求める10代の行動が、近年の潮流となっている。米国では高校生たちが銃規制を要求して全米でデモや集会を開き、参加者は数十万人に上った。

 香港デモでも大学生に交じって高校生たちが、街頭で抗議の声を上げている。スペインやフランスなどでも高校生たちがデモやストライキで、自分たちの訴えを表している。

 グレタさんを「世代の象徴」とタイムはとらえている。加えて、分断が深まる世界を変化させる希望にも見えないか。

 10代の若者たちが声を上げたのは民主主義の国々であり、独裁や強権国家では望みにくい。欧米では、民主主義の担い手を育てる教育が学校で行われていることを見落とせない。

 グレタさんが生まれ育ったスウェーデンでは、主権者教育が日本で言う小学校の段階から始まる。現実の社会や政治にアプローチし、政党の代表を招いて討論もする。自分で考え行動する市民としての資質を育てる「シチズンシップ教育」の一環で、そこでは政治参加も重視されるという。

 香港デモの高まりの背景には、批判的に分析し自分で判断することを主眼に置いた「通識教育」が、10年前から高校で必修として実施されていることが指摘されている。幅広い社会問題をテーマに、生徒が資料を集めたり討論したりすることで、政治意識が育っているという。

 日本では、若者の政治離れが言われて久しい。社会運動やデモはダサい、怖い、うっとうしいと嫌う空気が浸透している。

 1960年代後半、全共闘運動が広がりをみせた中で、高校生たちも討論やデモに大勢加わっていた。特に京都の高校は盛んだった。その後、暴力の応酬などで死者が出るなどして、政治から若者が遠ざかった経緯がある。

 それにしても、今日の10代が政治に距離を置く状況は、民主社会を継承していく意味で、このままでいいとは言えまい。

 69年に高校生の政治活動を禁止した旧文部省通達が、18歳選挙権が導入された2015年にようやく廃止された。しかし、文部科学省はこれに代わる通知で無制限に認めるものではないとしており、残念だ。

 地球温暖化の危機を訴える気候マーチに、日本の高校生たちも参加していた。まだまだ少数だが、これからの民主社会を担う力だ。10代の声が活発に出てくる土壌をつくる必要がある。