JR秋田駅を降り、日本海方面に車で15分ほど走ると、住宅地の向こうに広大な緑地が見えてきた。

 政府が地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の配備を計画していた陸上自衛隊新屋演習場である。

 住宅密集地に隣接し、周辺には大学や小中高校、幼稚園、保育園などがある。秋田県庁や秋田市役所、公立病院もほぼ4キロ以内に収まる。

 政府はこの場所へのイージス・アショア配備計画を見直す方向で検討に入った。

 地元住民の強い反対だけでなく、秋田県や秋田市の協力も得られそうにないことが理由だ。

 「防衛施設は攻撃対象になる。なぜこんな住宅密集地の脇に置くのか、理解できない。政府の判断は遅すぎるくらいだ」。新屋地区に住んで50年以上という元教員小泉行夫さん(73)は厳しい口調で語る。

 イージス・アショアはレーダーとミサイル発射装置を組み合わせ、ミサイルを空中で打ち落とすよう設計されている。

 政府は北朝鮮のミサイルを念頭に2017年に2基の導入を決め、新屋演習場と山口県のむつみ演習場を適地としている。

 ところが今年6月、新屋演習場の適地判断はずさんな調査に基づいていたことが判明した。

 防衛省は東北の19カ所を調査し、レーダーを向ける山の角度などから「新屋が最適地」と結論付けていた。だが実際はインターネットの地図サービスを使って計算していただけだった。

 現地測量もせず、机上の計算で導いたデータには多くの誤りがあることが地元紙の秋田魁新報で伝えられると、地元の説得材料として調査を防衛省に求めていた秋田県や秋田市も反対に回る結果となった。

 新屋地区を歩くと「初めから新屋ありきで、われわれを軽んじていた」という疑念が渦巻いている。町内会の連合体も反対を決議し、今年7月の参院選では配備反対を訴える野党統一候補が当選した。

 安倍晋三政権では、菅義偉官房長官が記者会見などで「防衛は国の専権事項」と繰り返し述べている。防衛政策は地域の頭越しに決めてもいい、と考えているような言動が目立つ。

 防衛省は東北の別の場所に代替地を探す方針だが、適地が見つかる見通しは立っていない。

 地域との信頼関係構築を怠り、頭ごなしに計画を進めたツケが回ってきたといえよう。

 むつみ演習場の地元自治体も反対や懸念の意思を明確にしている。それでも防衛省は「他に適地はない」との姿勢を変えていない。

 沖縄県名護市辺野古では、県民の反対の意思がくり返し示されても、米軍新基地の建設工事を続けている。

 地域住民の反発に囲まれたままの防衛施設が業務を円滑に進められるのだろうか。

 国民との対話を避ける安倍政権の体質が、かえって重要政策の遂行を阻んでいる。

 イージス・アショア配備の必要性には疑問の声もある。一から議論し直す時ではないか。